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ホンダは、先進の安全運転支援機能である「Honda SENSING」の次世代技術を体験できるメディア向け体験取材会を実施した。試乗のために用意されたのは、少し市販車と形状が異なるレジェンドとアコードの実験車だ。まさに次世代のHonda SENSINGの機能を作り上げるために、日々、様々な試験が繰り返されている実車である。今回、体験したのは、「Honda SENSING 360」への搭載が予定される新たな運転支援機能だ。
Honda SENSINGとは?
まずは、簡単にHonda SENSINGの歴史について振りたい。「Honda SENSING」の市販車投入は、2014年11月に発表された「レジェンド」より始まった。ホンダのフラッグシップモデルからの投入を開始したものの、ホンダの掲げる安全理念「Safety for Everyone」のもと、翌年となる2015年には、改良型オデッセイを皮切りに、新投入のジェイドやフルモデルチェンジのステップワゴンと、積極的な搭載拡大を図っていく。現在は、国内向けホンダ車に全車標準となっている。
最新の動きでは、昨年となる2021年に、世界初の市販車への自動運転レベル3に適合した「トラフィックジャムアシスト(渋滞支援機能)」を含む高度運転支援機能付きの「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドが3月に限定販売し、話題に。さらに同年には、「Honda SENSING Elite」の実現のための研究開発の知見を活かした全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」が発表され、中国で2022年12月に発売の新型CR-Vより展開を開始している。
もちろん、「Honda SENSING」も進化を続けており、最新のトピックでは、2022年9月にマイナーチェンジを行った「N-WGN」に新機能として「急アクセル抑制機能」が採用され、その後に発売されたマイナーチェンジモデルのフィットにも取り入れられている。
日本でも、2023年中に「Honda SENSING 360」の導入が予告されており、その第一弾が新型CR-Vとなる可能性が濃厚。その上位の「Honda SENSING」で実現を目指す高度運転支援機能を体験してもらおうという趣旨なのだ。
ホンダの高度運転支援機能機能といえば、自動運転レベル3を実現した「Honda SENSING Elite」があるが、LiDAR(ライダー)に象徴される高性能なセンシング機能を、その実現を支えている。センサーの精度が高い反面、高価なシステムとなることが課題となっている。そこでドライバーの監視が必要となる自動運転レベル2のシステムで、Eliteの開発で得た技術や知見を活用し、高度な運転支援機能を目指したのが、「Honda SENSING 360」の次なるステップなのだ。
搭載が予定される3つの新機能とは?
今回、体験できた機能は、「ハンズオフ機能付高度運転支援機能」、「ドライバーの状態と前方リスクを検知と回避支援技術」、「ドライバー異常検知時対応システム」の大きく3つに分けられる。
■ハンズオフ機能付高度運転支援機能
「ハンズオフ機能付高度運転支援機能」は、いわゆる高度な自動運転レベル2の機能だ。
システムが、アクセル、ブレーキ、ステアリングを操作し、ドライバーはステアリングの手放しを可能に。同一車線内での車速と車線内維持に加え、コーナーでは曲率に応じた減速を行うことでスムーズなコーナリングも実現。
つまり、高速道路や自動車専用道路では、運転の主体はシステムが担い、ドライバーは監視のみとなるため、運転中の疲労軽減効果は大きい。
さらに高度車線変更支援機能も備えており、専用の操作スイッチによる自動車線変更も可能としているという。
■ドライバーの状態と前方リスクを検知と回避支援技術
「ドライバーの状態と前方リスクを検知と回避支援技術」は、ドライバーの注意散漫や疲れによる見落としに対応する運転支援機能だ。
ドライバーをモニタリングし、注意力の低下や漫然運転などで、前方の歩行者や自転車、路肩に停車中の車両などと衝突する可能性がある判断した場合に、警告をシステムが緩やかな減速を行い、未然に注意喚起を行いつつ、車線からはみ出さないようにステアリング支援を行う。
それでもドライバーが回避動作を行わなかった場合には、音と表示で警告を行いつつ、自動ブレーキによる強めの減速と車線内維持のステアリング操作を行う。
これらは、ホンダ独自の機能だという。その先の回避支援は、大きく二つに分かれており、ドライバーの回避動作が無かった場合、同一車線内に十分な回避スペースがあるとシステムが判断すれば、車線内で減速し続けながら、ステアリング操作による衝突回避の支援も行う。逆にドライバーが回避動作に行った場合、ステアリング操作を行うと、減速し続けながら、ステアリングアシストによって衝突回避を支援する。
■ドライバー異常時対応システム
最後の「ドライバー異常時対応システム」は、ドライバーをモニタリングし、システムからの操作要求に反応が無かった場合、同一車線での減速・停車を支援する機能。昨今の運転中の体調悪化や意識喪失による運転不能な状態が発生することを防ぐ事で、事故を抑制するのが狙い。
もしもの場合に備える機能ではあるが、緊急通報機能と組み合わせることで、事故を防ぐだけでなく、ドライバーの早急な救助にもつなげることが出来るため、高齢化する交通社会にとっては欠かせない機能といえる。
新機能は2023年から順次搭載予定
これらの開発中の新機能を実験車による体験するのが、今回の取材の目的となる。
今後、普及が図られる「Honda SENSING 360」では、自動運転開発で培った技術を活かし、検知性能の強化と対象事故シーン拡大による事故回避支援機能の進化が図られている。そこに高度な運転支援機能を積極的に取り込んでいく事で、交通事故死傷者ゼロに向けた動きを加速させたいとホンダは考えているのだ。それが、開発中の機能を含んだ「Honda SENSING 360 Next Concept」であり、2024年以降に順次、市販車への搭載を計画している。
実質的には、2023年より「Honda SENSING 360」が展開されるのだから、その対応スピードはかなり迅速だ。より良いものをいち早く、世の中にという考えなのだ。その一歩先のホンダの先進安全運転支援機能が実現する世界の体験については、次回に詳細にレポートしたい。