ルークス・スイートコンセプトのテーマは「ウェディングパーティーに行く」というからユニークだ。最近は、子ども大きくなって独立したから夫婦ふたりのクルマは軽自動車に乗り換えるダウンサイザーが増えている。そんな夫婦が、結婚する娘のためのウェディングパーティーに出かけるのにピッタリなのが、このルークス・スイートコンセプト、というわけだ。
ガルウイングドアは、開口部を大きくして乗りやすくするために採用。室内は思い切って2座として、後席は奥様のための特別スペースとしてあつらえられた。上質な本革シートはオットマン付きという豪華な仕立てで、リヤウインドウは電子シェード付きでプライバシーも確保。会場までの移動時間をラグジュアリーな雰囲気に包まれながら過ごすことができそうだ。
また、このクルマには日産がJVCケンウッド、フォーアールエナジーと共同開発中のポータブルバッテリーが搭載されている。その電力を利用して、車内の冷蔵庫でシャンパンを冷やすことも可能というからゴージャスだ。
そして、特別な日のためのサプライズとしてピアノ演奏を披露すべく、後部に牽引されたカーゴ車には、日頃弾き慣れた電子ピアノを搭載。この電子ピアノの電源も、ポータブルバッテリーを利用する。
ルークス・スイートコンセプトの見どころは、こうした派手な演出だけにとどまらない。実は、「技術の日産」らしい秘密が隠されているのである。
それが、後席の頭上付近にあしらわれた不思議な模様だ。これは「音響メタマテリアル」という遮音材。一般的なPPを素材と、格子構造とフィルムを組み合わせたシンプルな遮音材なのだが、音が伝わる際の空気の振動状態を制御し、音の透過を抑制することで、車内に入ってくる自動車特有の騒音を広い周波数帯(500-1200Hz)で効果的に遮ることができるという。
そのメリットはなんといっても軽いこと。現在使われているゴムを主とした遮音材と比べると、その重量は4分の1。静粛性能と軽量化の両立が重要視されるEV(電気自動車)では、こうしたアイテムが特に活躍することが予想される。
音響メタマテリアルは実用化に向けて鋭意開発中とのこと。遊び心にあふれたコンセプトカーの中に、こうした新技術がさりげなく盛り込まれているあたりが、実に心憎い。