今度のGT-Rは顔が違う! 空力を磨き上げた日産GT-R 2024年モデルが衝撃のデビュー【東京オートサロン2023】

東京オートサロンとGT-Rの縁は深い。R33型スカイラインGT-Rが1995年に、R34型が1999年にデビューを飾った。そして今年の東京オートサロンでは、R35型GT-Rの2024年モデルが初お披露目。そのキモはズバリ、空力。大幅にダウンフォースを増した「史上最高のGT-R」の登場だ。
PHOTO:中野幸次(NAKANO Kouji) REPORT:MotorFan編集部

2007年に誕生したR35型GT-R。以来、レーシングマシンのように速さを極める「R」ゾーンはニスモ仕様が、一般公道での快適性や扱いやすさも追求する「GT」ゾーンはスタンダード仕様が担いながら、連綿と進化を続けてきた。

最新の2024年モデルが掲げるキーワードは二つある。まずは「人の感性に気持ち良く、それでいて速い」こと。そして、「トータルバランスをもっと高い次元へ」だ。その実現のキモとなったのは、ズバリ空力性能の向上である。

そのため、ニスモ仕様とスタンダード仕様はともにフロントバンパーやリヤバンパー、リヤウイングといった外装のデザインを大幅に見直すこととなった。まずはニスモ仕様から具体的に見ていこう。

日産GT-R2024年モデル
日産GT-R NISMO スペシャルエディション

フロントグリルは導入される空気の量はそのままに開口部を小さくすることに成功。冷却性能をキープしつつ、空気抵抗を低減している。

さらに、新しいGT-Rの顔を印象付けているシグネチャーランプ(デイタイムランニングライト)の上下にはエアガイドを配置して、ヘッドライト下のキャラクターラインと合わせて走行風を整流。これも空気抵抗の低減に貢献している。

また、フロントバンパーまわりではカナードの形状を一新。タイヤの横に渦を発生させてホイールハウス内の圧力を吸い出すことで、ダウンフォースを発生する効果がある。

日産GT-R2024年モデル
フロントグリルの開口部は縮小しつつ、インテークのスロープ角度やストローク最適化、グリルメッシュのハニカム化により、流入する空気量は前モデル同等を確保。
日産GT-R2024年モデル
シグネチャーランプ付近のエアガイド、ヘッドライト下のキャラクターラインで整流効果を発揮。カナードはえぐり面を深くすることでより強い縦渦を生成し、ダウンフォース向上につなげている。

リヤまわりでは、バンパーサイドに設けられた大きなエッジが目を引く。また、トランクリッドの上にもエッジが設けられているのに注目だ。クルマの周りを流れる空気が後ろに巻き込まれると、クルマを後ろに引っ張ろうとする(=空気抵抗が増す)。これらのエッジによって空気を剥離させ、乱流を抑えることで空気抵抗を低減しているというわけだ。

見逃せないのがリヤウイングだ。ニスモ仕様では翼面を上から支えるスワンネックタイプを採用。負圧を発生させる翼面下の有効面積を拡大することで、より大きなダウンフォースを得ることが可能となった。これらの改良により、トータルのダウンフォースは前モデルに対して約13%増を実現している。

日産GT-R2024年モデル
日産GT-R NISMO スペシャルエディション
日産GT-R2024年モデル
ボディ後端のサイド部に設けられたセパレーションエッジを延長し、後面に巻き込む風を抑制する。
日産GT-R2024年モデル
リヤウイングはスワンネックタイプのステーを採用することで、翼の裏面を最大限に活用する。
日産GT-R2024年モデル
ウイングは外側と内側で高さと断面が異なる凝った3D形状。トランクリッドの後端部が持ち上がったダックテールになっている点にも注目だ。

ニスモ仕様では空力性能とともに、トラクション性能の向上にも注力された。目指したのは、「R35史上最高のトラクションマスター」だという。前述したダウンフォース増とともに、その実現のために新採用されたのが、フロントのメカニカルLSDだ。コーナリングの立ち上がりの際、フロント内輪のタイヤの空転を抑制する効果があるが、そこで生まれたフロントタイヤの余力を最大限活かすため、四駆の前後トルク配分も見直された。ヘアピンコーナーでの脱出では、前モデルに対して0.6台分のアドバンテージを稼ぎ出しているそうだ。

日産GT-R2024年モデル
ニスモ仕様はフロントにメカニカルLSDを新採用。コーナー立ち上がり時のフロント内輪の空転を防止する。

インテリアのニューアイテムはカーボンフレームが剥き出しになっている新開発のレカロシートだ。従来のものよりかなりスパルタンな印象だが、重量を一切増やすことなく、シートの横剛性を50%向上。腰や背中、肩といった各部を最適にサポートするために、パッドは分割構造となっている。

日産GT-R2024年モデル
新しいレカロシートはカーボンシェルを採用。パッドにはアルカンターラや本革が組み合わされ、レッドステッチやNISMOロゴが刺繍されるなど、機能美を感じさせる仕上がり。

続いて、スタンダード仕様の変更をチェックしてみよう。こちらのフロントマスクも大きく変更された。ヘッドランプ下のキャラクターラインや新しいシグネチャーランプ(デイタイムランニングライト)、深さを増した新しいカナードはニスモ仕様と同様で、空気抵抗の低減を実現している。

スタンダード仕様では2007年以来、変更がなかったリヤウイングも新デザインへと改められた。ウイングの幅を広げるとともに、搭載位置を少し後ろに下げている。これにより、わずかではあるがトランクリッド上面に働いていたクルマを持ち上げようとする負圧を削減することができたという。結果として、スタンダード仕様のダウンフォースも前モデルから約10%増加している。

日産GT-R2024年モデル
日産GT-RプレミアムエディションT-spec
日産GT-R2024年モデル
スタンダード仕様もフロントマスクを刷新。その狙いはニスモ仕様と同様だ。
日産GT-R2024年モデル
日産GT-RプレミアムエディションT-spec
日産GT-R2024年モデル
新形状のリヤウイングは搭載位置を後方にすることで、効率的にダウンフォースを発生する。
日産GT-R2024年モデル
ニスモ仕様、スタンダード仕様ともにインテリアの変更はアナウンスされていない。

最後に、2024年モデルの最も重要な進化とも言えるポイントをご紹介しよう。それがマフラーだ。巷では「GT-Rは新車外騒音規制に対応できないので生産終了になるのでは?」という噂が流れていた。今回、新構造のマフラーを採用することにより、動力性能を犠牲にすることなく新車外騒音規制に対応したというのもファンには朗報だ。

排気音を低減するには排気管を長くしたり、マフラー容量を大きくするのが一般的だが、排気ガスの流れが悪くなり、パワーダウンにつながりかねない。また、排気音をただ小さくすると、GT-Rのようなスポーツカーの魅力を削ぐことになってしまう。そのため、2024年モデルのマフラーは排気管の途中に分岐をつくり、片側の排気管だけがつながっている消音室で低音域のみをピンポイントで消音することで、動力性能はそのままに新車外騒音規制への対応が可能になったという。

さらに、旅客機が搭載するジェットエンジンを参考にしたというエンジンサウンドも新マフラーのポイント。分岐の配管形状を工夫することで、内部を流れる排気ガスに小さな渦をいくつも発生させることで、迫力のある”ジェットサウンド”を生成。高回転になればなるほど、新しいGT-Rのエキゾーストノートが響きわたるという。これはぜひ実車で確かめたいところだ。

なお、スタンダード仕様のエンジンスペックは最高出力570ps/最大トルク637Nm、ニスモ仕様は最高出力600ps/最大トルク652Nmで、前モデルから変更はない。

日産GT-R2024年モデル
新構造の採用により、新車外騒音規制を見事にクリア。「ジェットサウンド」と称される排気音も聴いてみたい!

「史上最高のGT-R」を日産自身が謳うのも納得の充実した改良内容が施された2024年型GT-R。グレード構成に変更はなく、スタンダード仕様が「プレミアムエディション」「同Tスペック」「ブラックエディション」「ピュアエディション」「トラックエディション・エンジニアード・バイ・ニスモ」「同Tスペック」、ニスモ仕様が「NISMO」「同スペシャルエディション」というラインナップ。発売はスタンダード仕様が今春、ニスモ仕様が今夏を予定している。

日産GT-R2024年モデル
GT-R2024年モデルをアンベールしたアシュワニ・グプタCOO(左)と、開発をリードした川口隆志チーフエンジニア(右)。

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