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スバルが提唱する『総合雪国性能』とは?
先日、スバルから「スバル車の総合雪国性能をリアルに味わってみませんか?」とのお誘いを受けた。聞けば、最新のスバル車を貸していただいて、お好みのルートで1泊2日の雪道ドライブ……という趣向だ。
スバルといえば、4WD性能ではちょっとしたカリスマ的なブランドといえる。かつての世界ラリー選手権での活躍を引き合いに出すまでもなく、積雪地域のドライバーやウィンタースポーツ愛好家の多くが、スバルの4WDに絶大な信頼を置いている。
スバルが提案する『総合雪国性能』とは、単純な雪道の走破性にとどまらない。雪はないけど凍結した道路、つるつるに磨かれて滑りやすくなっている歩道段差の乗り越え(=ガソリンスタンドやコンビニの出入り)、寒暖差で荒れた道路、さらには寒い日のヒーターやエアコンの使い勝手……にいたるまで、寒い地域での安心・安全に徹底的にこだわったクルマづくり全般を指すらしい。
というわけで、スバルからの提案を二つ返事で受け入れたわれわれ取材班は、東京は恵比寿にあるスバル本社を起点に、北陸は金沢を往復するルートを選んだ、往路は関越自動車道と上信越自動車道で長野まで走り、そこから長野オリンピックの舞台となった白馬を通過。その後は再び北陸時自動車道に乗って金沢を目指した。復路は世界遺産の白川郷に立ち寄った後、飛騨高山から、長野県に戻り、あとは長野自動車道と中央自動車道で東京に戻るルートである。
今回のおともは、スバルの国内フラッグシップでもなる「アウトバック」である。まずは高速で一気に長野まで走るが、今回の取材時は、残念ながら(?)高速道にはいっさい雪はなかった。ヨコハマの最新スタッドレスタイヤ「アイスガード7」を履かせたアウトバックは、当然ながら、ドライの高速をすこぶる快調に走る。
正真正銘のフルタイム4WD
現在のスバル4WDシステムの主力となっているのは「アクティブトルクスプリットAWD」である。そのセンター油圧多板クラッチを電子制御するハードウェア自体は、一般にスタンバイ式とか、オンデマンド型などと呼ばれる他社のそれと変わりない。ただ、他社ではフルグリップ時にクラッチを開放して、燃費に有利な前輪駆動になるケースも多いのだが、スバルのそれは60:40という駆動配分(これはクルマの大まかな重量配分に合わせたもの)を基本として、滑りやすい路面ではさらに後輪へのトルク配分を増す。……つまり、正真正銘のフルタイム4WDとして作動するのが大きな特徴だ。
それもあって、アウトバックも雪道に強いだけでなく、ドライの高速での安定性も高い。その路面のうねりや強い横風への強さ、安心感はやはりフルタイム4WDならでは。そのぶん、少しばかり燃費に不利なのも事実。スバルに「燃費はあまりよくない」というイメージをお持ちの向きもおられるだろうが、そこにはこうした真面目な4WDの影響も少しある。
長野インターで高速を降りると、周囲にスバル車が目に見えて増えるのが面白い。スバルの地元である群馬県にかぎらず、降雪地域になると、街中のスバル比率が明らかに確実に高まるのはクルマ業界の「あるある」といってもいい。
今年の2月上旬の長野や北陸は一時の大雪からひと段落……といった感じで、白馬や白川郷周辺も、ところどころに踏み固められた積雪路やシャーベットが入り混じった凍結路、そして硬く凍ったワダチが見られる程度だった。
アイスガードを履いたアウトバックは、こうした様々な道をまるで苦もなく走っていく。ロードクリアランスは本格SUVそのままの210mm超なので、多少のワダチでもフロアをこするようなストレスもほとんどない。あまりに普通に走ってしまうので、スキを見て乱暴にアクセルをあつかっても、タイヤが空転しかけることも安定性を失いかけることもほとんどない。
より深い降雪路でも真価を発揮する「X-MODE」
スバルのSUVといえば、スイッチひとつで雪道や凍結路、悪路に最適化される「X-MODE」の存在も忘れてはならない。この種の技術も、存在自体はさほどめずらしいものではないが、X-MODEはさすがスバルらしく、とても凝ったものだ。
X-MODEを起動させると、センター油圧多板クラッチの締結力を上げることで、四輪全体のトラクションを引き上げるとともに、ブレーキLSDも介入しやくすることでトラクション性能を最大限まで引き出せるようになる。さらには、変速やスロットル特性も低グリップ向けになるほか、トルクコンバーターもロックアップせず開放状態を保つことでエンジントルクの増幅効果も引き出すという。すべての制御をここまで細かく変えるのは、やはりスバルならでは……といっていい。
アウトバックの場合、グレードによってX-MODEも少しちがう。今回試乗した「リミテッドEX」のX-MODEがオンオフのみの制御となるのに対して、よりタフなキャラクターを強調した「X-BREAK EX」のそれは“スノー/ダート”と“ディープスノー/マッド”という2モード式となる。
X-BREAKの2モードX-MODEでは、前者のスノー/ダートが普通のX-MODEのオンに相当する。そしてタイヤが半分以上埋まるような状況を想定したディープスノー/マッドは、トラクションコントロールを解除することで、タイヤの空転を許容しながら、より強力な脱出能力を引き出すモードである。
開発担当者によると、今回のリミテッドEXでも「まずX-MODEをオンにして、別のスイッチでVDC(いわゆる横滑り防止機能)もオフにすれば、2モードのディープスノー/マッドとほぼ同様の効果が得られます」とのことだ。
いずれにせよ、今回遭遇できた程度の雪道では、X-MODEを作動させるだけでなんのストレスもなく走破できた。もっといえば、アクセル操作に少し注意を払えばX-MODEも不要なくらいだが、X-MODEを作動さると、アクセル反応が圧倒的に穏やかになるので、雪道でアクセルをテキトーにあつかってもスルスルと上品に走っていくだけで、細かいコツや神経を使うストレスとは無縁となる。
結局のところ、今回のような普通に出かけられるような雪道では、アウトバックは拍子抜けするほど普通だった。誤解を恐れずにいえば、とくに感動もなかった(笑)。ただ、いかに高度な制御を使っていても、乗り手にそうと感じさせないアクティブスプリットAWDやX-MODEも含めて、スバルの総合雪国性能とは、そういうものなのだろう。
スバル アウトバック Limited EX 全長×全幅×全高 4870mm×1875mm×1675mm ホイールベース 2745mm 最小回転半径 5.5m 車両重量 1690kg 駆動方式 四輪駆動 サスペンション F:ストラット式 R:ダブルウィッシュボーン式 タイヤ 前後:225/60R18 エンジン種類 水平対向4気筒 エンジン型式 CB18 総排気量 1795cc 内径×行程 80.6mm×88.0mm 最高出力 130kW(177ps)/5200-5600rpm 最大トルク 300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm トランスミッション CVT(リニアトロニック) 燃費消費率(WLTC) 13.0km/l 価格 4,290,000円