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伝統はそのままに走行性能を熟成
WRXはもともと1992年に登場した初代インプレッサの高性能版として、当時参戦していたWRC(世界ラリー選手権)にちなんだネーミングとともに送り出された。
エクステリア
その後2014年にインプレッサから独立。内容的には同年デビューしたレヴォーグのセダン版という成り立ちとなった。この時点ではS4とSTIの2モデル体制だったが、21年に発売された現行型はいまのところS4のみとなる。スバル伝統の水平対向エンジンをターボ化してフロントに縦置きした左右対称AWDというパッケージングはインプレッサ時代から不変。ただし排気量は、インプレッサ時代から先代まで2.0lだったのに対し、現行型は2.4lとなった。同じエンジンは同時期にレヴォーグにも積まれている。
インテリア
トランスミッションは先代S4に続きCVTを使うものの、現行型ではスポーツ走行に照準を定めた設計としており、メーカーではスバル・パフォーマンス・トランスミッション(SPT)と呼んでいる。AWDシステムはインプレッサやフォレスターなどが採用するアクティブトルクスプリットAWDとは異なる、VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)を使っている。センターデフによってトルク45対55に配分した上で、走行状況に合わせて配分を可変制御するもので、後輪により大きなトルクを分配するという特徴がある。
数値からは予測できない走りの旨味が詰まっている
2.4lターボエンジンの最高力は275ps、最大トルクは375Nmで、実は先代の2.0lターボを下回る。環境性能に配慮するとともに、性能を適度に留めることで軽量化を目指したためだという。走り出すとさらなる美点に気付かされる。排気量の拡大でターボの立ち上がりが穏やかになり、アクセルペダルに対する反応がリニアになったのだ。音も滑らかで、昔の水平対向エンジンが発していた独特の響きとは別次元だった。サスペンションは硬め。運動性能に振ったチューニングと言える。おかげでハンドリングは、新世代プラットフォームやワイドトレッド、エンジンの軽量化などの効果が手に取るようにわかる。
うれしい装備
ターンインでのフロントの重さは感じず、ロールはしっかり抑えられる。コーナーでの踏ん張り感は確実にアップ。加えてタイヤの接地感がはっきり伝わってくるので、四輪の状況を確実に把握しながら、安心してペースを上げていける。ドライブモードをノーマルからスポーツ、スポーツ+に切り替えていくと、SPTはATのように段を切ってシフトアップやシフトダウンを行ない、AWDは後輪へのトルク配分が強まって旋回力が高まる。スペックだけで判断してしまうとおとなしくなったと感じる現行型であるが、操る楽しさはむしろ高まっており、深みを増しているという印象を受けた。
Country Japan Debut 2021年11月 車両本体価格 400万4000円~477万4000円
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/143/