軽量と贅沢が絶妙に交わる一台「マツダ ロードスターRF」【最新スポーツカー 車種別解説 Mazda Roadster RF】

21年のマイナーチェンジでは、日常使いには太いトルクで扱いやすさを、スポーツドライビングではMT車/AT車ともにパワーを使い切る楽しさが味わえるようになった。スタイリングもルーフクローズドではなめらかな美しさを、オープンではタルガトップテイストの力強さで、大人のエレガントなスポーツカーとして独自のスタイルを確立している。
REPORT:石井昌道(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:神村 聖

オープンエアを楽しめて高回転ドライブも気持ち良い

先代のNC型ロードスターではRHT(リトラクタブルハードトップ)の人気が高く、現行のND型ロードスターでも用意されるのが当たり前と思われたが、2015年5月のソフトトップの発売から1年半後に登場したのはRF(リトラクタブルファストバック)だった。

エクステリア

古典的なスポーツカー像を具現化する幌のロードスターに対して、リトラクタブルハードトップのロードスターRF は、スポーツ性にエレガントさを加えたスタイリングが特徴。オープン時にはタルガトップ的イメージとなる。
最高出力184psとスペック自体は平凡にも思える2.0l NAエンジンだが、ドライバーの意思をアクセルに込めれば7500rpmまで気持ち良く回る様は、スポーツカーらしいところだ。AT車でもSPORTモードを選ぶことで高回転域を活用した走りを楽しめる。
ブレンボのブレーキキャリパーやBBSの鍛造アルミホ イールといったブランドアイテムは、メーカーオプションとして設定されている。 タイヤのエア圧が200kPaと低めなのは、いかにもマツダらしい。
トランク容量は127lもあり、 最大幅も1000mm以上と実用的なスペースとなっている。小旅行の荷物くらいであれば余裕で収まるだろう。 ルーフの開閉状態に関わらず活用できるのもうれしい。

ND型ロードスターは原点回帰がテーマとなっていてパッケージングはミニマム。フルオープンになるRHTは、やってやれないことはないが不格好で重量の増加も避けられない。そこでクローズドでは美しいファストバック、オープンではリヤクォーターが残るものの機構が軽量シンプルなRFが考案された。電動開閉機構はスイッチひとつで13秒と驚速(10km/h 以下で作動)。スマートかつ気軽にオープンエアドライビングを楽しめるのが特徴だ。

インテリア

ドライビングに集中できる環境づくりを第一にデザインされたコクピットはスポーツカーとしての基本を追求することで生まれた空間だ。ただしセンターディスプレイが7インチサイズなのは設計の古さを感じさせる。
撮影グレードにはレカロ製シートが標準装備。スポーツカーらしく座面は低いが、乗降性においてサイドサポートなどが邪魔しない絶妙のデザインとなっている。ステアリング調整幅はチルト約42mm、テレスコピック約30mmと広い。妥協なくドライビングポジションを合わせることができる。
指針式タコメーターを中央に配置、左側のインフォメーションディスプレイは4.6インチのカラー液晶だ。
シフトストロークは吟味されたもので、短か過ぎて操作しづらいということもない。
ペダルは若干右に寄っている印象もある。

ソフトトップが1.5lエンジンなのに対してRFは北米仕様と同様の2.0lエンジン。1.5lは7500rpmまでぶん回して使い切る楽しさがあるが、2.0lは6800rpmが上限。だがトルクがあって扱いやすく、RFのイメージに沿った大人の雰囲気とされた。18年の改良ではそのエンジンに大幅に手が入れられ、ピストンやコンロッドの軽量化、吸排気系の適正化などで回転上限が1.5lと同じ7500rpmに引き上げられ、最高出力は158psから184psへと向上。大人っぽいだけではなくぶん回す楽しも身につけたのだ。

操る楽しさが味わえるMT 運転に集中できるAT

初期モデルの2.0lは、確かにトルクがあって扱いやすいけれど、何やら物足りなさがあった。回転上限やパワーが低いのみならず、吹け上がりの鋭さやサウンドなど官能性が足りなかったからだ。ところが大幅改良を受けて、1.5lと同様にエンジンだけでも楽しめるモデルとなった。

普段乗りではトルクの太さによる扱いやすさがありながら、右足に力を込めれば迫力を増したサウンドとともに伸びやかに吹け上がっていく。MTで操るのが楽しいのはもちろんだが、ロードスターのATはトルクコンバーター式としては切れ味が鋭く、スポーツドライビングにも向いている。ブレーキやハンドルの操作などに集中できるのが美点だ。

うれしい装備

ベーシックグレード以外にBOSEの9スピーカーシステムを標準装備。
脱着式カップホルダーは全グレードに標準装備。助手席のみセンタートンネル側にも設置できる。 
シート間にリヤコンソールボックスを用意。 オープン時のセキュリティも考慮してキーロックできるのはうれしい。 
ハードトップは開閉シークエンスも美しく、周囲の人も楽しめる。

シャシー性能はソフトトップと違いが大きい。車両重量が約100kg違うのだから当然だろう。ハンドリングはビルシュタインダンパーを装着するRSならばノーズの動きが軽快。ただ、ソフトトップを知っていると動きの軽快感は薄く、限界付近で走らせるとおっとっと、となりそうなこともある。

ノーマルの方が全体的に穏やかで扱いやすい面もあるようだ。22年の改良からはKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)が採用され、リヤの安定感が増した。基本的には落ち着いた乗り味で、大人のグランドツアラー的な雰囲気。トルキーな2.0l+ATなどと相性がいいイメージだ。

Country          Japan
Debut            2016年11月(商品改良:21年12月)
車両本体価格          346万1700円〜392万2600円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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