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先代モデルはMTのWRX STIとCVTのWRX S4をラインナップ
2021年にVA型からVB型へとフルモデルチェンジを敢行したWRX。
VA型ではEJ20ターボに6速MTを組み合わせた「WRX STI」と、FA20ターボにリニアトロニックCVTを組み合わせた「WRX S4」の2車種が存在した。
VB型へとフルモデルチェンジされたWRXは、排気量を2.4Lに拡大したFA24ターボを搭載するCVTモデルのS4のみとなり、MT車は登場していないのが現状だ。
国内ではMTモデルの登場を期待する声が大きいものの、現時点では今後の登場も予定されていない。しかし、海外仕様車に目を向ければ、国内のVB型S4にあたるWRXには6速MT搭載モデルが存在し、技術的には製造は可能と予想できる。
なぜ国内にはMT仕様がないのか? 北米にはあるのに……
なぜ、国内にMTモデルが追加されないのか?
その理由のひとつに新型車の自動ブレーキ(AEBS=Advanced Emergency Braking System)の装着義務化が考えられる。国土交通省は2021年11月以降に発売する国産新型車には自動ブレーキの装着を義務付けている。つまり、これをクリアするには自動ブレーキが付いていないとMT車でも新型車として登録ができないのである。
CVT車については、アイサイトX(EXグレード)やアイサイトツーリングアシストが標準装備されており、この問題はクリアされている。
ちなみにBRZはこの規制が施行される直前の2021年7月に発売されているので、対象外となりMT車が存在するのだ。
しかし、MT車に関しては、現時点でスバルではアイサイトと組み合わされるモデルが存在しない。
技術的には他メーカーと同じくMT車に搭載可能ではあるそうだが、MT車の場合自動ブレーキ作動時にドライバーがクラッチ操作を行わなければエンストしてしまう。
エンジンが停止した場合ブレーキのバキュームやパワーステアリングなどのアシストも停止するため、安全を最優先するスバル車であれば、“万が一”のことも考えてこうした場合のことも考慮するはずだ。メカニズム的には、エンジンが停止してもそれらをバッテリーなどで動かすか、自動ブレーキ作動時にクラッチを切る動作も自動で行うなど、可能ではある。
しかし、そうしたメカニズムがコスト面に跳ね返ってくることで車両本体価格が向上した場合、どれだけのユーザーがそれでも欲しい!と思うかに疑問が残る。
VB型WRX S4は400万4000円~482万9000円という価格を考えると、こうした機構の分だけ価格が上乗せされ、容易に手が届かないモデルになるのではないかという危惧もある。
全日本ラリーに投入されるWRX S4のトランスミッションは……
今年の東京オートサロンではVB型WRX S4ベースのラリーカーが発表されたが、内装はまだ非公開となっていた。ラリーマシンともなればMTの搭載が考えられるが、プロドライバーのみがステアリングを握る、ほぼワンオフのようなモデルであれば“万が一”のケースにも対応できるため、即座に市販車にMTが追加されるとは考えにくい。
かつてとは違う! “CVT”と侮るなかれ!
ちなみにVB型WRX S4やVN型レヴォーグの2.4Lモデルに搭載されているCVTはSPT(スバル パフォーマンス トランスミッション)と呼ばれる大容量スポーツCVTが搭載されている。
このSPTはVTD(不等可変トルク電子制御式センターデフ)と組み合わされ、刷新したトランスミッションコントロールユニットの制御により、その動作は驚くほどの進化を遂げている。マニュアルモード時の変速スピードはもちろん、Dレンジでもフットブレーキだけでダウンシフトブリッピングなどを行い、チェーン式CVTならではのダイレクト感は圧巻!試乗したMT派のオーナーからも評価は高く、CVT食わず嫌いのユーザーにも是非試してほしいトランスミッションだ。
ファンとしてはMTの追加を熱望する気持ちは非常に理解できる部分ではあるが、メーカー側も法規制による苦労を強いられていることを、むしろ理解してあげたい。スバル側でもきっとそうしたユーザーの声は届いているはずなので、開発をしていないとは考えにくい。すべては筆者の想像の領域を出ていないが、是非とも魅力的なMT車に期待しつつ登場を待ちたい。その間にSPT搭載のWRX S4で「CVTって意外とアリかも!」と先進技術を体感するのもおススメだ。