一体感を突き詰めた走りのセダン!「スバルWRX S4」【最新スポーツカー 車種別解説 SUBARU WRX S4】

1992年にWRC(世界ラリー選手権)にちなんで名付けられ、現在はレヴォーグのセダン版とも言える「スバル WRX S4」。水平対向エンジンをターボ化し、フロントに縦置きするアイデンティティは不変だ。排気量が先代までの2lから2.4lになったことでターボの立ち上がりが穏やかになり、アクセル操作に対するダイレクト感の高さなど、スバルならではのこだわりの走行性能はさらに際立っている。
REPORT:森口将之(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:高橋 学/中野幸次/平野 陽

伝統はそのままに走行性能を熟成

WRXはもともと1992年に登場した初代インプレッサの高性能版として、当時参戦していたWRC(世界ラリー選手権)にちなんだネーミングとともに送り出された。

エクステリア

セダンボディの高性能スポーツモデルであることが宿命づけられたWRX 。新型になって賛否両論があるフェンダー周囲の樹脂パーツだが、イメージは「往年の高性能車のオーバーフェンダー」。空力性能向上パーツでもある。
国内向けとしては初搭載となるFA24型ユニットを採用。スバルのアイデンティティといえる水平対向を継承するが、新型になり排気量を 2.4lへアップしている。トランスミッションは高トルクに対応するとともに、アクセル操作に対するダイレクト感の高さが見事。
全車とも18インチタイヤを装着。銘柄はダンロップ「SP SPORT MAXX GT600A」だがWRX S4専用にチューニングが施された専用設計だ。ホイールは「STI Sport R」系がブラック+ 切削光輝処理なのに対し、「GT-H」系はガンメタだ。
実用的なセダンボディのモデルだけあり、トランクも大容量。 奥行きは1mを超え、大型スーツケースを二個積載できる。必要とあればリヤシートを倒して荷室を拡大できるのも実用的だ。

その後2014年にインプレッサから独立。内容的には同年デビューしたレヴォーグのセダン版という成り立ちとなった。この時点ではS4とSTIの2モデル体制だったが、21年に発売された現行型はいまのところS4のみとなる。スバル伝統の水平対向エンジンをターボ化してフロントに縦置きした左右対称AWDというパッケージングはインプレッサ時代から不変。ただし排気量は、インプレッサ時代から先代まで2.0lだったのに対し、現行型は2.4lとなった。同じエンジンは同時期にレヴォーグにも積まれている。

インテリア

センターに埋め込んだ11.6インチの縦長ディスプレイ(EX系グレードに標準装備)が特徴的。しかしすべてをタッチパネル操作とせず、エアコンの温度調整やオーディオ基本操作は物理スイッチを残していることに好感が持てる。
「EX」系モデルは全面液晶メーターを採用。速度など走行系を小さくする一方で、地図を大きく表示する画面などへの切り替えもできる。「EX」系ではないモデルはアナログメーターを組み込む。
シフトレバーの動きはシンプルだ。

トランスミッションは先代S4に続きCVTを使うものの、現行型ではスポーツ走行に照準を定めた設計としており、メーカーではスバル・パフォーマンス・トランスミッション(SPT)と呼んでいる。AWDシステムはインプレッサやフォレスターなどが採用するアクティブトルクスプリットAWDとは異なる、VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)を使っている。センターデフによってトルク45対55に配分した上で、走行状況に合わせて配分を可変制御するもので、後輪により大きなトルクを分配するという特徴がある。

数値からは予測できない走りの旨味が詰まっている

2.4lターボエンジンの最高力は275ps、最大トルクは375Nmで、実は先代の2.0lターボを下回る。環境性能に配慮するとともに、性能を適度に留めることで軽量化を目指したためだという。走り出すとさらなる美点に気付かされる。排気量の拡大でターボの立ち上がりが穏やかになり、アクセルペダルに対する反応がリニアになったのだ。音も滑らかで、昔の水平対向エンジンが発していた独特の響きとは別次元だった。サスペンションは硬め。運動性能に振ったチューニングと言える。おかげでハンドリングは、新世代プラットフォームやワイドトレッド、エンジンの軽量化などの効果が手に取るようにわかる。

うれしい装備

ドライブモードは「I」「S」そして「S ♯」の3タイプ。ハンドルのスイッチで切り替え可能。 
緊急時は頭上にあるSOSボタンを押すことでコールセンターに接続。
「EX」系グレードには、高速道路の渋滞時にハンドルから手を離して運転できる機能を搭載。 
センター画面には各種車両情報を表示可能だ。AWDシステムの作動なども確認できる。

ターンインでのフロントの重さは感じず、ロールはしっかり抑えられる。コーナーでの踏ん張り感は確実にアップ。加えてタイヤの接地感がはっきり伝わってくるので、四輪の状況を確実に把握しながら、安心してペースを上げていける。ドライブモードをノーマルからスポーツ、スポーツ+に切り替えていくと、SPTはATのように段を切ってシフトアップやシフトダウンを行ない、AWDは後輪へのトルク配分が強まって旋回力が高まる。スペックだけで判断してしまうとおとなしくなったと感じる現行型であるが、操る楽しさはむしろ高まっており、深みを増しているという印象を受けた。

Country          Japan
Debut           2021年11月
車両本体価格        400万4000円~477万4000円 

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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