ついに“中古ジャガー”の洗礼……この酷暑にエアコン故障! 修理費は? DIYで修理はできるのか?【ジャガーSタイプ・オーナーズレポート vol.4】

4年間故障知らずで調子よく走ってくれたジャガーSタイプが9月の車検を目前にエアコンが故障した。診断の結果、エアミクスアクチュエーターの不具合と判明。繁忙期ということもあり、工場が混雑していて待ち時間が長かったことからDIYでの修理に挑むのだが……。この事態に対して筆者が下した決断とは!?

エアコンから熱風が!? 車検を控えてついにトラブル発生

中古でジャガーSタイプを購入してから早4年。2023年の9月で手元に来てから2回目の車検がくる。その車検を控えてというタイミングで、なんとエアコンが壊れた! これまで調子良く、ほとんどトラブルらしいトラブルもなかったのだが、よくよく考えれば、ラインオフから19年を数える古いクルマなのだ。輸入車でなくとも年式を考えれば、こうしたトラブルに見舞われても何ら不思議ではない。

ジャガーSタイプのインパネ。高級車は作りが良い反面、構造が複雑でDIY修理は難しくなる。

さっそくエアコンの故障箇所をチェックする。症状は温度設定によらずエアの吹き出し口から熱風が出るというもの。考えられる原因は……
・エアコンのガス漏れ
・冷却水の漏れ
・コンプレッサーの故障
・ブロワモーターの故障
・エバポレーターの故障
・エアミクスアクチュエーターの故障・リレーやヒューズの故障
などが考えられる。
ちょうど元メカニックのカノジョとドライブを楽しんでいた時だったので、故障の可能性があるパーツをひとつひとつチェックしていく。

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まず疑ったのは壊れると高くつくコンプレッサーだ。エンジンルームを開けて確認するとこれは正常に動いている。エアコンの配管に手を置くと冷たいので、どうやらブロワモーターやエバポレーターにも異常がなく、エアコンのガス漏れでもないようだ。

エンジンルームをチェックし、エアコンの故障箇所を特定。エアコンの作動メカニズムが理解できていればおおよその故障箇所の見当がつく。

もちろん、オーバーヒートの兆候もなく、クーラントタンクユニットの中にある冷却水の水位も変わりがない。エンジンルームの下側を覗き込んでも水漏れはしていなかった。念のためリレーやヒューズもチェックしてみたが、これまた異常がない。とすると、どうやら「エアミクスアクチュエーター」が怪しい。

エアミクスアクチュエーターってなに? どんな故障?

エアミクスアクチュエーターに不具合があると、エアコンの温度調整ができなくなり、冷風あるいは温風が出なくなる。このパーツはヒーターユニットに取り付けられていることがほとんどで、ヒーターコアとエバポレーターからそれぞれ発生する温風と冷風を内部にあるフラップを使って混ぜることで快適な温度を作り出すという仕組みだ。

エアコンの吹き出し口は温度設定に関わらず思いっきり熱風が吹き出す。これでは夏場に乗ることはできない。

おそらくはエアミクスアクチュエーターの内部にある樹脂製のギヤが欠けたか、リンク機構が壊れたか、あるいは汚れなどで内部メカが固着したかのいずれかが原因となり、正常に作動しなくなっているに違いない。暖房側でフラップが固定されてしまうと、今回のように温風しか出なくなるというわけだ。

修理工場で答え合わせ……しかし繁忙期で作業依頼はできずDIY修理を考える

これはあくまでも出先での簡易的な診断だ。後日、原因をハッキリさせるべく、日頃からお世話になっている主治医の街工場に持ち込んだ。点検してもらうとやはりエアミクスアクチュエーターが正常に作動していないという。

簡易診断を自分で行った後で、主治医に故障箇所を再チェックしてもらう。やはり、エアミクスアクチュエーターの不具合が原因だった。

故障原因が明らかになれば当然修理となるのだが、あいにく工場は混み合っていてしばらく待たなければならないという。工場長曰く「モーターファン.jpで『DIY派はこれを揃えてお工具!』なんて企画をやっているくらいなんだから必要な工具は持っているんでしょ? とりあえず自分で修理してみたら? 上手く行けば工賃浮かせられるかもしれないじゃない。やってみてダメだったら工場に持ってきなよ。ただ待つよりその方が賢いよ」などと曰う。こうなりゃ仕方がない。とりあえず、自力でなんとかしてみるか?

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サービスマニュアルなしで修理の段取りを組んでみた!

修理の段取りはこうだ。まずはエアミクスアクチュエーター不具合の原因が内部メカの固着だとすれば、エアコンの温度操作を繰り返しているうちに固着が取れてフラップが動くかもしれない。ただし、無理やり固着したフラップを動かすわけだから、下手をすると内部のリンクやギヤを痛めてしまう可能性もある。上手くいけば手間がかからず不調を治せるかもしれないが、そういうリスク込みの作業である。

結局、DIYで内装をバラして修理するハメに……。サービスマニュアルがないので作業は手探りだが、構造を確認すればある程度はバラすことができる。

それでも問題が解決しないときは、エアミクスアクチュエーターを車体から外し、電装屋に持ち込んで修理を依頼する。パーツの構造は比較的単純なので、エアミクスアクチュエーターのオーバーホール工賃はそう高いものではないだろう(1~2万円くらい?)。

ただ、これを外す作業はなかなか厄介だ。ダッシュボードの下側に身体をよじって潜り込むと、センターコンソール付け根のあたりにパーツは見えているのだが、どうにも工具が入らない。センターコンソールを外せば手が届くかもしれないが、それで外れないとダッシュボードをバラす必要がある。
果たしてサービスマニュアルもない状況で素人にできるのか? こういうときに頼りになるのがHAYNES (ヘインズ)のアマチュア向け手引書なのだが、同年代のXJやXタイプはラインアップがあるのに、なぜかSタイプは刊行されていない。

元メカニックのカノジョのアドバイスで助手席側からは冷風が出たが……

元メカニックのカノジョに相談すると「中性洗剤を含ませた水を霧吹きでエアコン吹き出し口から拭き入れながら、温度調整スイッチの冷暖操作を繰り返すと固着が取れることがあるよ」とのアドバイスをもらう。そんな乱暴な……とも思ったが、元メカニックが「やってみろ」というのだから試してみるしかない。

エアコンの吹き出し口から中性洗剤の水溶液を霧吹きで吹き入れ、同時にエアコンの温度操作を行なった。これで助手席側のエアミクスアクチュエーターは固着が溶けたのだが……。

恐る恐るエアコン吹き出し口から霧吹きで水を吹き入れ、それと同時にエアコンの冷暖切り替え操作を何度も繰り返す。5回、10回、15回と試しているうちに助手席側の固着が取れたようで、左側のエアコンから冷気が吹き出した。やった! やはりエアミクスアクチュエーターの不具合が原因であったか。

だが、問題は運転席側だ。こちらは何度同じことを繰り返しても一向に冷気が吹き出す気配がない。この時ばかりは左右独立制御のエアコンが恨めしい。「一般的なエアコンならこれで問題が解決するのに……」と誰が聞くともなしにジャガーに恨み言をこぼす。

運転席側の修理するために内装バラしに挑戦!

エアミクスアクチュエーターへはステアリングコラム下からのアクセスを目指す。
ステアリングホイール下のインパネを外す。4本のボルトをHEXドライバーを使って外すことでアクセスホールが開く。だが、肝心のエアミクスアクチュエーターは見えているのに手が入らない。

かくなる上は運転席側のエアミクスアクチュエーターを外すしかない。とりあえず、ハンドル下のダッシュボードパネルをHEXドライバーを使って外す。近年の欧州車はフィリップスねじはほとんど使われていない。4本のボルトを抜くとエアミクスアクチュエーターがよく見えるようになったが、隙間から手を入れて外すスペースはない。

写真ではわかりにくいが、奥にあるバーコードシールの貼られたパーツがエアミクスアクチュエーターだ。

アクセスするには覚悟を決めてバラしていくしかないようだ。とりあえずセンターコンソールから取り掛かる。当たりをつけてセンターコンソールボックス底部を見るとここにもねじが2本ある。ここから順番に外していけばセンターコンソールは外せそうだ。

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センターコンソールボックスの上蓋を外し、センターコンソール後端のエアコン吹き出し口を外し、シフトレバーのパネルを外し……と、順調に作業を進めていく。思いの外バラすのは簡単だったが、紫外線でプラスチックが劣化しており、気を抜くとヒビが入りそうで怖い。パーツを壊さないように慎重に分解していく。

ボルトを数本外すと後部のエアコン吹き出しパネルを外せる。隠しボルトに気づかず、パーツを少し破損してしまった。失敗である。
センターコンソールをある程度外した状態。ここまでは順調だったが……。

主だったパーツを外したところで、オーディオパネルの取り外しにかかる。隠しねじがないことを確認して内張剥がしを隙間に差し入れ、パーツを止めるクリップを慎重に外す。そしてナビ本体を止めているねじを外し、ナビ本体がフリーになったところで背面のカプラーを外した。

オーディオパネルは内装剥がしを使うと簡単に外せる。今回は金属製を使ったが、プラスチック製の方が傷が入りにくくオススメ。

しかし、ここまでだった。この状態でもエアミクスアクチュエーターにはアクセスできない。あるいはツートンで色分けされたダッシュボードが分割できる構造になっているかとも思ったが、そんな親切な作りにはなっていなかった。分割して色違いの下側だけ外せれば故障箇所にアクセスできるものを……。

カーナビを外したところ。ここから手を入れればエアミクスアクチュエーターにアクセスできるかと思ったが無理だった。クリーム色のパネル下側だけ取り外せる構造と思ってここまで外したが、残念ながらそんな親切な構造にもなっていない。つまり、インパネを完全に外さないとエアミクスアクチュエーターに手が届かない。万事休す。

こうなればダッシュボードを外すしかないわけだが、サービスマニュアルもないこともあって素人にはチト荷が重い。ネットで情報を検索してみたが有益な情報は一件もヒットしない。ねじのある場所もよくわからないし、隠しねじだってあるだろう。クリップだってどこについているのかまるでわからない。プラも経年劣化で脆くなっている。思案の末、ここで作業を諦め、元に戻すことにした。

工賃は10万円! 直すか……乗り換えるか……それが問題だ

後日、ことの顛末を主治医のもとに報告に行く。そこであらためて修理を依頼すると、工場長は一瞬天を仰いでから「う~ん、高級車のダッシュを外す作業は手間がかかるんだよね。工賃は10万円くらいは見てほしいなぁ~」と言う。まあ、それでエアコンが直るものなら妥当な金額だと思った。そう思ったのだが、寿命を迎えたタイヤの交換、天井トリムの落っこち、抜けたダンパーの入れ替えなど、この先長く乗るのなら車検のタイミングで他にもいろいろとやることは多い。

ルーフトリム落ちは輸入車では定番のトラブル。

19年落ちのヨーロッパ製高級車としては手間のかからない良いクルマなのだが、そこは腐っても“ジャガー”だ。趣味車の半世紀落ちのアルファロメオとともに維持するにはアレコレと入用になる。しかも、3.0L V6エンジンということで燃費は街乗りで6~7km /Lほど。ひと昔前なら排気量を考えればごく標準的な燃費性能なのだが、エコカーが普及した現在では決して褒められた数字ではない。さて、どうするか? とりあえず、修理を一時保留してよく考えることにした。

1967年型アルファロメオ”段付き”ジュリアに装着できる新品タイヤはあるのか!? 選んだタイヤと気になるお値段は……

【旧車アルファロメオ・オーナーの現実 vol.1】 アシに使っているジャガーSタイプの記事が好評とのことなので、趣味車として筆者が8年ほど所有している1967年型アルファロメオ1300GTジュニアについて書いてみたい。ラインオフから56年が経過した旧車ということでコンディションは年式相応。内外装、メカともに痛みはあるが、とりあえず動かす分には支障がないレベルにはある。本来ならばフルレストして一気に新車に近い状態に戻したいところだが、万年金欠病の筆者にそんな余裕があるはずもなく、対処療法で悪くなったところを修理している状況だ。今回は迫り来る車検に備え、購入時から履かせっぱなしで息絶えたタイヤ交換についてリポートする。

その晩、筆者の背中を押したのはカノジョからの電話だった。「もういいんじゃない? もっと小さなクルマに買い換えたら?」との言葉。
たしかに昨今のガソリン高騰を考えるとアシに乗るならもう少し燃費の良いクルマが良いかもしれない。一説にはレギュラーは200円/Lまで高騰するという観測もある。

「そうだな……ボチボチ潮時かもな。コミコミ45万で買って4年間楽しめたのだからジャガーとお別れしてもいいかもしれん」

今、不人気モデルが狙い目? コミコミ45万円!で購入した中古の「ジャガー」は本当にドロ沼なのか!? 【ジャガーSタイプ・オーナーズレポート vol.1】

現在、筆者が愛用しているクルマが2004年式ジャガーSタイプ 3.0V6だ。2019年に走行距離4万7000kmの個体を車両価格35万円(総額45万円・車検2年付)で購入した。走り良く、快適で、大きなトラブルもなく、大変満足している。今回はそんな筆者のジャガーSタイプについてレポートしていこう。 REPORT:山崎 龍 PHOTO:MotorFan.jp

次なるアシ車は……またもやコミコミ49万円の中古輸入車!?

電話口のカノジョにそんな言葉を返していた。「で、そう言うからには何か気になるクルマでもあるの?」と筆者が尋ねると、「アタシ、これまで輸入車に乗ったことないんだ。〇〇〇〇〇が可愛くていいと思うんだけどどう思う?」と返ってきた。「〇〇〇〇〇かぁ~。アレの姉妹車を弟が買ってひどい目にあったんだよなぁ~。オレも好きなクルマだけどミッションが構造的にダメなんだよ。せめてMTならなんとかなるけどね。ちょっと考えさせてヨ」そう言って電話を切る。

タバコを消して仕事場に戻りパソコンを開く。ネットで繋いだのはご存知『カーセンサー』だ。先ほど話題に上った車種の中古車を検索してみる。ひと頃に比べて結構相場が下がっているように思われる。そう言えばアレの限定車があったような……発売当時に欲しかったものの、万年金欠で手が出なかったヤツだ。今は……え? こんな値段で買えるの⁉︎ マジか!!
タマ数の少ない希少な限定車ということもあり、長年中古車相場が超高値安定だったこのクルマが、いつの間にかコミコミ49万円まで下がっていたのだ。

走行距離は11万km、おまけにトランスミッションに爆弾を抱えた例のアレだ。冷静に考えたらフツーは選ばないのかもしれない。だが、幸か不幸か筆者はマトモじゃない。ことクルマに関しては手段と目的を取り違えるなど日常茶飯事のカージャンキーである。
「よぉし、毒を食わば皿までだ。行ったろうやないかい!」
販売店情報に目を移すと、ところは九州、大分県の由布院だ。ちょっと遠いが、ま、いいか。翌朝さっそくその中古車店に電話をしていた筆者であった。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…