今、不人気モデルが狙い目? コミコミ45万円!で購入した中古の「ジャガー」は本当にドロ沼なのか!? 【ジャガーSタイプ・オーナーズレポート vol.1】

現在、筆者が愛用しているクルマが2004年式ジャガーSタイプ 3.0V6だ。2019年に走行距離4万7000kmの個体を車両価格35万円(総額45万円・車検2年付)で購入した。走り良く、快適で、大きなトラブルもなく、大変満足している。今回はそんな筆者のジャガーSタイプについてレポートしていこう。
REPORT:山崎 龍 PHOTO:MotorFan.jp

2019年にアシ代わりに激安で買った中古のジャガーSタイプ

筆者がアシに使っているジャガーSタイプはコミコミ45万円だが、走りはまずまず、快適で、不満なく使っている。

筆者が愛用しているジャガーSタイプは2004年式の3.0V6(シリーズ3)だ。購入したのは2019年9月のこと。走行距離4万7000kmで、販売店によると「記録簿がないため確かなことは言えないが、おそらくはワンオーナー車」という個体を購入した。プライスボードに掲げられた車両価格は35万円、車検2年付で乗り出し45万円だった。

ジャガーMk.IIより発展した初代ジャガーSタイプ(1963~68年)を彷彿とさせる曲面を多用したスタイリングが特徴。デザイナーはX300/X350型XJや初代XK8を担当した故ジェフ・ローソン。本国イギリスでは懐古趣味が強いアピアランスが不評を買ったそうだが、筆者はクラシカルかつエレガントなルックスで気に入っている。

丸みを帯びたスタイリングは、皮とウッドを使ったインテリアとともに筆者が最も気に入っている点だ。
故ジェフ・ローソンの手掛けたエクステリアはクラシカルで優美。とくにルーフからCピラーを通ってトランクへと流れるシームレスなラインはなんともセクシーだ。
イギリス人に言わせると「カビの生えた古臭いスタイリング」ということになるらしいが、シャープでカッコイイがどこか無国籍な感じがするイアン・カラムがスタイリングを担当した次世代のジャガーよりも、よほど“らしい”と思う。

ジャガーSタイプとはどんなクルマ?

ジャガーSタイプはフォードが資本参加していた時代に企画され、リンカーンLSや11代目サンダーバードとプラットフォームを共用するEセグメントセダンとして1999年に誕生した。だが、初期モデルはスタイリングこそ初代ジャガーSタイプを彷彿とさせる流麗なものであったが、メカニズムはフォードと共有化された上、ジャガーらしからぬフォード流の安っぽい内装が世界中のエンスージアストから批判の的となった。

全長・全幅・全高がそれぞれ4905mm、1820mm、1445mm、ホイールベースが2910mmというのは、ほぼ先代のクラウン(S220系)とほぼ同サイズだ。

そこで2002年のマイナーチェンジで足廻りを中心にジャガー流にリファインし、トランスミッションをZF製6HP26型6速ATへと換装。インストゥルメントパネルのデザインを一新するとともに内装のクオリティを大幅に向上させた。
筆者が愛用するシリーズ3は、2004年に2度目のマイナーチェンジで登場したモデルで、シリーズ2をベースにフロント&リアエンドの意匠をわずかに変更し、軽量化を狙ってボンネットのアルミ化や電動パーキングブレーキの採用などの改良を施したモデルだ。

■Specifications
全長×全幅×全高(mm):4905×1820×1445
ホイールベース(mm):2910
車両重量:1720kg
エンジン:2967ccV型6気筒DOHC24バルブ
最後出力:243ps/6800rpm
最大トルク:30.6kgm/4100rpm
燃料供給装置:電子制御燃料噴射
トランスミッション:6速AT
駆動方式:FR
ステアリング形式:パワーアシスト付ラック&ピニオン
サスペンション形式(前後):ダブルウィッシュボーン
ブレーキ形式(前後):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前・後):235/50R17・235/50R17
新車価格(税抜):690万円

年式なりにヤレはあるが、トラブル少なくアシとしては概ね満足

激安中古輸入車ということで心配になるのが信頼性だが、ジャガーSタイプは新車時から故障が少ない車種だったことに加え、筆者が購入した個体は当たりだったようで、購入以来、大きなトラブルは発生していない。
細かな故障としては、電動パーキングブレーキの故障や輸入車でお約束の天井の内張り落ちがあるが、パーキングブレーキの故障はヤフオクで中古パーツを購入して安価に修理できたし、天井の内張り落ちは致命的なトラブルではないのでそのまま放置している(次の車検を通すなら直そうかと検討中)。

英国車伝統のレザーとウッドを多用したインテリア。よく見るとセンターコンソールなどは質感の低いプラスチックを使用しているが、正直あまり気にはならない。ウッドパネルは本物のバーズアイメイプルのパネルとなる。

19年落ちの中古車ということで、おそらくは工場出荷時から無交換のダンパーはやや抜け気味だが、それでも猫足は辛うじて残っているようで、路面からの突き上げを柔らかくいなしつつ、しなやかに走る独特の感覚がある。大柄のセダンながら運転して楽しく、乗り心地が良いのでロングドライブでもまったく疲れない。

リアシートはやや小ぶりで足元サイズもあまり余裕がない。「適度な狭さがスポーティさを演出する」というジャガーらしいところ。
堂々としたボディサイズの割にインテリアはさほど広くない。本革シートもやや小ぶり。ドアトリムとシートとの間に広めの隙間があるのはコートの裾をドアに挟まない工夫。

フォード製のV6をひと言で表せばスムーズかつパワフル。突出した性能はないのだが、必要にして十分な排気量なりの性能で、運転していて不満を感じることは全くない。
燃費は街乗りでは6~8km/L(高速走行では10~12km/L)と最近のエコカーに比べればまるで振るわないが、3.0Lという排気量を考えれば妥当な燃費と言えるだろう。ハイブリッドカーと違って人間の感覚から離れた制御が入ることが一切なく、ストレスなく運転できるのも現在では美点のひとつとして数えられる。また、昨今流行の直噴エンジンと違ってスラッジの問題に悩まされることもなく、タイミングチェーンを採用しているのでベルト交換時期に煩わされないで済むのもメリットだ。

最高出力243psを発揮する2967ccV6DOHC。フォード製のV6エンジンはフラットトルクで、アクセルを踏みこめばストレスなく加速してくれる。驚くほどの動力性能はないがアシに使うには十分すぎるほどの性能だ。

部品の入手性・整備性ともに優れており、意外と維持費はかかっていない

世間では「ジャガーは信頼性が低い」ということになっているが、X300型のXJ以降のジャガーは下手なドイツ車よりもよほど故障が少なく、安心して乗れるクルマだと考えている。
とくに電子制御てんこ盛りな最近のドイツ車は新車保証期間の内はまだしも、保証が切れてしまえば故障修理は自腹となるわけで、高額な修理費が予想される上に専用のテスターを持つディーラー以外は修理不可になることを考えると、恐ろしくてとても所有する気になれない。
その点、枯れた技術で製造されたSタイプのようなクルマは、年間5万1000円+15%割増(5万8650円※)の自動車税に目を瞑ればなんとか維持できる。
※編集部計算

天井の内張り落ちは、ジャガーに限らず年式を経たクルマでは輸入車・国産車問わずありがちなマイナートラブル。天井面積の広いワゴン系では顕著で、日本の高温多湿の厳しい環境が影響している、

不人気車とは言え、そこそこの台数が国内販売されたので、ヤフオクなどをチェックすれば中古パーツや安価な社外パーツをみつけることができるし、海外サイトをチェックすれば部品の入手に困ることはない。
また、フォードの息がかかったモデルということで意外にも整備性は良く、日常点検レベルの作業や簡単な修理ならサンデーメカニックでもDIY作業がやりやすい。もちろん、素人では手に負えない部分はプロにお願いすることになるのだが、街の修理工場を頼ることで大幅に維持費を節約できている。

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