動力は再生型燃料電池(RFC)を搭載。約1ヶ月間の有人ミッションを乗り切る
トヨタは21日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)主導のもと開発を進める月面探査車「ルナクルーザー」および、三菱重工が開発を進める月極域探査機「LUPEXローバ」について、連携を強化することを発表した。2029年予定の運用開始に向け互いの技術を活用しプロジェクトを加速させる狙いだ。
「ルナクルーザー」は、国際宇宙探査ミッションのひとつである月面での有人探査活動に必要な有人与圧ローバで2019年から行っている。月面は、重力が地球の6分の1、温度はマイナス170~120℃、真空、強い放射線、表面は月の砂(レゴリス)に覆われており、大変厳しい環境での使用に耐える技術が必要となる。
ルナクルーザーのボディサイズは、全長6000mm×全幅5200mm×全幅3800mmと、マイクロバス約2台分程の巨大さだ。車体重量は約10トンを想定している。車内は、乗組員2名滞在の可能(緊急時は4名)で、居住空間の広さは13平方メートル(4畳半のワンルーム程度)。約1ヶ月間の調査ミッションを想定してる。残りの期間は地球上から遠隔操作を行い調査ミッションを続行する。
ルナクルーザーは「再生型燃料電池(RFC)」を動力源として搭載する。RFCは、燃料電池を使用した際に生じる水を電気分解し、そこから「燃料」となる水素や酸素を再度取り出す技術だ。月面は地球と違い「月面は昼が2週間、夜が2週間続く」という環境のため、RFCならば2週間続く「昼」の間に、太陽光エネルギーで水を電気分解してエネルギー源となる水素や酸素を蓄えられる。そうして蓄えた水素で2週間続く「夜」に発電を行う。月には氷として水が存在すると報告されており、現地調達も期待される。
こうした、水と太陽光だけで発電できるRFCの技術は、宇宙開発だけでなく離島や被災地など、地球上での発電にも活用できるのではないかと期待している。
今後の計画は、本年度中に原寸大のテスト車輌を制作し、来年度からトヨタ施設内の屋外テストコースで検証を開始するというスケジュールだ。現在でも、月面の重力とサラサラした砂地に有効な金属製タイヤをブリヂストンと共同で開発を進めている。
宇宙空間への打ち上げは、2029年を目標にしていて、NASAのロケットを使用する予定だ。車両重量10トンにも達する大型の車体を分割せず打ち上げる計画だという。
会見に臨んだ、トヨタ自動車 月面探査車開発プロジェクト プロジェクト長 山下健 氏は
「宇宙開発という未知への挑戦が人材を育成し、技術を鍛えます。ここで培った知見は、カーボンニュートラルや次世代のモビリティなど、宇宙だけでなく地球上にも“循環型社会の実現” として技術を還元することができると信じています」とルナクルーザープロジェクトの意義を語った。