ホンダ・フィットRS 走りも燃費も欠点なし 560km走って実感した。ヤリス、ノートに対抗できる素性の持ち主だ

ホンダ・フィット e:HEV RS 車両価格:234万6300円
ホンダのコンパクト、FIT(フィット)のRSグレードは、フィットの良さをそのままに「ちょっとスポーティ」に仕立てがグレードだ。だから「RS」はロードセーリングの頭文字でレーシングスペシャル的な立ち位置ではない。このフィットe:HEV RSで560kmドライブしてみた。その良さについてあらためて考えた。

フィット、ヤリス、ノート。売れているのはどれ?

日本のコンパクトカークラスは、トヨタ・ヤリス、日産ノート、そしてホンダ・フィットを中心に回っている。現行モデルのデビューは
トヨタ・ヤリス 2020年2月10日発売
ホンダ・フィット 2020年2月14日発売
日産ノート 2020年12月23日発売
だ。その前年(2019年)の3モデルの販売台数はこうだった。
2019年
トヨタ・ヴィッツ 81,554台
ホンダ・フィット 74,410台
日産ノート 118,472台

2020年以降の販売台数の推移を下のグラフにまとめてみた。

2020H12020H22021H12021H22022H12022H22023H1
ホンダ・フィット50,02948,18129,68629,09429,61730,65429,962
トヨタ・ヤリス48,129103,637119,11293,81581,58086,97797,241
日産ノート41,70730,58846,87943,29856,94853,16558,095
ヤリスはヤリスクロス、GRヤリスを含む、ノートは、ノートオーラを含む

もちろん、ヤリスにはヤリスクロスとGRヤリスが含まれているし、ノートにはノートオーラが含まれている。だからフィットは不利なのはわかる。が、それにしても、ヤリス、ノートに差を付けられてしまっている。コロナ禍と半導体不足が重なったのは、同条件。フィット、いいクルマなのに……。ヤリス、ノート追撃のために2022年10月にマイナーチェンジ。そこでラインアップに加わったのが「RS」である。スポーティなイメージを醸すグレードがいまひとつはっきりしなかったフィットにRSは明確に「スポーツ」のフレーバーを振りかけた。

全長×全幅×全高:4080mm×1695mm×1540mm ホイールベース:2530mm
トレッド:F1485mm/R1475mm 最小回転半径:5.2m
車両重量:1210kg 前軸軸重780kg 後軸軸重430kg

でも、RSは「レーシングスペシャル」でも「レンシュポルト」でもなく「ロードセーリング」なのだ。だから、エクステリアが少しスポーティ、男っぽくはなっているが、乗り味がガチガチというわけではない。家族には、「このRSは、ロードセーリングって意味だからな」と伝え、自分の気持ちとしては、「これはただのフィットじゃない。だってRSだもん」という気持ちになれる。お兄さん・お父さんがフィットを選びやすくなるのは間違いない。

RSの狙いは?

RSは専用のフロントグリル、フロントバンパー、サイドシルガーニッシュ、リヤバンパー、リヤスポイラー、アルミホイールが装着され、スポーティーさが強調されている。

MC後のFIT HOME
FIT RS

こうして並べて見ると、RS、引き締まって見える。やはりグリルって重要なんだろうか。

e:HEVではないコンベのRSの試乗記はこちら

フィットRSは、コンベのエンジンとハイブリッドのe:HEVが選べる。駆動方式はFFのみで4WDの設定はない。試乗車はe:HEV。ボディカラーはRSとクロスターに専用設定された新色スレートグレー・パールだ。この色がいい。

さて、フィットe:HEVだ。ご存知のとおり、基本はエンジンが発電、モーターで駆動だ。高速走行ではエンジン直結。もちろん運転領域によってはモーターがアシストに入る。

エンジン形式:直列4気筒DOHC+e:HEV エンジン型式:LEB-H5 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm 圧縮比:13.5 最高出力:106ps(78kW)/6000-6400rpm 最大トルク:127Nm/4500-5000rpm 過給機:× 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー フロントモーター:H5型交流同期モーター 最高出力:123ps(90kW)/3500-8000rpm 最大トルク:253Nm/0-3000rpm

モーター駆動の気持ち良さがフィットe:HEVの魅力のひとつ。モーター駆動なのに良いエンジンで走っているようなフィーリングなのがホンダe:HEVだ。エンジンがかかったときのガッカリ感がないのが、e:HEVの良さ。RSだとそれがいいのかもしれないけれど、もしかしたらエンジンの存在をひたすら隠すほうがコンパクトカーユーザーの心には響くのかもしれない。たとえ、エンジンがかかってしまったときに、少しガッカリしたとしても。

高速走行はe:HEVの得意分野だ。エンジン直結だから出来の良いエンジン車の走りだ。アクセルから足を離せばエンジンブレーキとともに回生してバッテリーレベルが上がる。その電気エネルギーは次の加速で使われるわけだ。

長いルーフのおかげで後席の居住性は高い。
シート素材は、ウルトラスエードとプライムスムースのコンビ

フィットe:HEV RSのモード燃費は
WLTCモード燃費:27.2km/ℓ
 市街地モード25.6km/ℓ
 郊外モード29.0km/ℓ
 高速道路モード26.8km/ℓ
だ。実際、東京~栃木往復の高速走行300kmほどの燃費は26.0km/Lだった。しかも大人3名乗車での燃費だ。1名乗車なら高速道路モード燃費の26.8km/Lは楽々クリアしていただろう。ただし、高速での速度上限は120km/hではなく(東北自動車道は120km/h区間がある)、90-100km/hに設定したおいた。e:HEVもe-POWERもトヨタ・シリーズパラレルHEVも120km/hだと燃費が悪化する。そのなかでもe:HEVは高速での燃費の悪化が少ないのがいい。

フィット e-HEV RSのシフトレバー。いまとなっては古くさいし、P→Dに入れようとおもうとBに入ったり、D→Rに入れようと思うとNに入ったりする。最新ホンダe:HEVのシフトボタンの方が使いやすい。
ZR-V e:HEVのシフト。慣れると断然こちらの方が使いやすいし、運転席と助手席の間に、レバーがにょきっと生えていない方がすっきりしている。
タイヤサイズ:185/55R16 指定空気圧はF240kPa/R230kPa
タイヤはYOKOHAMAのBluEarth-AE51
RSはFFしか設定がない。リヤサスは、TBA(トーションビームアクスル)
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式 RS専用チューンだが、硬すぎることはない。
トランクスペースはもちろん広大ではないが、使いやすい工夫が施されている。

560km走って燃費はどうだった?

久しぶりにフィットe:HEVに少し長く乗って、その素性の良さを実感した。トータルで563km走って24.6km/Lだった。モード燃費の90.4%の達成率だった。全行程の6割は3名乗車、2割は2名乗車だったから、1名乗車ならほぼモード燃費が達成できるだろう。

燃費もいいし、走りもいい。なのにノートやヤリスに販売台数に敵わない。個人的に言えば、エクステリアデザインならノート、燃費はヤリス、走りはフィットだと思う。デザインに関しては好みは人それぞれ。フィットの「柴犬っぽい」デザインも悪くない。ただし、斜め後ろから見るとややずんぐりむっくりだ。その代わり後席の居住性もいい(全行程の25%は後席に座っていたが、スペースも乗り心地も良かった)。運転席からの視界もいい。RS専用のサスペンションも、硬くも緩くもなくて走りやすい。1台でファミリーカーに必要な要素を高い次元で詰め込んだフィットは、じつは平均点が高いクルマだ。コンパクトカーをお探しなら、フィットもショッピングリストに載せて検討する価値は大だ。

前方の細いAピラーは剛性を担うわけでなく、手前のA”ピラーがその役割を果たす。視界はいいのだが、なんとなく心理的に「ピラー、細くて大丈夫かな」って思わせてしまうかも。あくまでも剛性はA”ピラーなのに。
RSは4WDの設定なし
フルタンク(40L)なら航続距離は900kmオーバーは楽勝。脚が長いのもいい。
ボディカラーはスレートグレー・パール(有料色3万3000円)
ホンダ・フィット e:HEV RS
全長×全幅×全高:4080mm×1695mm×1540mm
ホイールベース:2530mm
車重:1210kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン形式:直列4気筒DOHC+e:HEV
エンジン型式:LEB-H5
排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm
圧縮比:13.5
最高出力:106ps(78kW)/6000-6400rpm
最大トルク:127Nm/4500-5000rpm
過給機:×
燃料供給:PFI
使用燃料:レギュラー
フロントモーター:H5型交流同期モーター
最高出力:123ps(90kW)/3500-8000rpm
最大トルク:253Nm/0-3000rpm

バッテリー:リチウムイオン電池
燃料タンク容量:40ℓ

WLTCモード燃費:27.2km/ℓ
 市街地モード25,6km/ℓ
 郊外モード29.0km/ℓ
 高速道路モード26.8km/ℓ
車両価格:234万6300円 メーカーオプションHonda Connectディスプレイ+ETC2.0車載器19万8000円 広報車の価格は263万8900円

キーワードで検索する

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…