トヨタに日本メーカー初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらした名車! ST185型セリカGT-FOURをカストロールカラーに!!【WRCレプリカのススメ】

WRC(世界ラリー選手権)において日本メーカーとして初めてチャンピオンを獲得したのがトヨタだ。特に1988年から実戦に投入されたセリカGT-FOURのシリーズは、当時絶頂とも言えたランチアワークスのデルタと真っ向勝負を繰り広げ、ついに栄光の座を手に入れるに至った。それだけに印象深いグループAセリカのレプリカマシンを紹介しよう。
PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)/MotorFan.jp

トヨタは古くからWRCに参戦し、勝利を重ねてきたメーカーだ。1970年代のグループ2/4時代に始まり、1980年代のグループB時代にはセリカツインカムターボでサファリラリーを3連覇(1984〜1986)するなど、耐久色の強いラリーで存在感を示していた。

1984年にグループBカーのセリカ・ツインカムターボはビョルン・ワルデガルドのドライブでWRC第4戦サファリラリーに勝利。先鋭化が進むグループBで、堅実さを武器に1986年までサファリラリーを3連覇を飾る。
1989年のサファリラリーを走るグループAスープラ。1987年からワークスマシンとして使用され、セリカGT-FOUR投入後の1989年にも信頼性を買ってサファリラリーに投入された。香港北京ラリーで優勝を飾るが、WRCでは勝利に届かず。

しかし、WRCの車両レギュレーションが1987年から突如グループAに変更されたことから、トヨタはランチア・デルタのように最適なマシンを用意することができず、繋ぎのマシンとしてハイパワーFRのスープラを投入することになった。しかし、グループB時代からすでにラリーカーは4WDの時代に突入しており、わずかにターマックラリーでFR車が輝きを放ったものの、進化と熟成が進むランチア・デルタの前にそれすら過去のものになりつつあった。

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トヨタは1988年、満を持して4WDのグループAマシン、セリカGT-FOUR(ST165)をWRCに投入。熟成に手間取りつつも、カルロス・サインツの手により1990年ドライバーズタイトルを獲得。トヨタに日本メーカー初のWRCタイトルをもたらすことに成功した。

オートサロンで展示されたセリカGT-FOUR(ST165)。1988年〜1991年まで使用され、1990年にはカルロス・サインツのドライブでドライバーズタイトルを獲得した。
ST165セリカGT-FOURの誕生から活躍、栄光に至るまでを詳細に綴った1冊。

市販車のモデルチェンジに合わせ、WRCに投入されるセリカもST165から新型のST185に切り替わったのが1992年。新車投入時にはありがちな初期トラブルに悩されつつも、カルロス・サインツが再びドライバーズチャンピオンを獲得した。しかし、ドライバー陣容で既にワークスが撤退しているランチアに及ばず、ランチアにマニュファクチャラーズタイトル6連覇を許すことになった。

1992年のサファリラリーで勝利を飾ったカルロス・サインツのセリカGT-FORU(ST185)。1992年のカラーは白ボディに赤マルが特徴的なデザインの俗称“赤パンダ”。チーム監督オベ・アンダーソンの奥さんがデザインしたという説もある。
ST185型セリカGT-FOURのラリーカーについて詳しく解説しているのがこの本。

セリカGT-FOUR(ST185)カストロールカラー

そして1993年、ワークスが完全に手を引いたランチアからユハ・カンクネンとディディエ・オリオールを獲得。逆にセリカGT-FOURと苦楽を共にしたカルロス・サインツがランチアに移籍した。
熟成が進んだセリカGT-FOUR(ST185)はサインツのスポンサーであるレプソルから、カストロールに大胆にカラーチェンジ。このカストロールカラーが、その後長くトヨタワークスのカラーとして用いられることになる。

1993年のサファリラリーに臨むトヨタワークスの陣容。

そんなカストロールカラーをベースに作り上げたのが、プロショップ「Prototype」の店長が所有するセリカGT-FOUR(ST185)だ。
このセリカは元々お店の常連さんが大切にしていたクルマだったのだが、後ろから追突されたことからその常連さんが手放して店長の元にやってきたというもの。

プロトタイプ店長の所有するセリカGT-FOUR(ST165)レプソルカラー。

プロトタイプは多くのWRCレプリカを手掛けてきたショップだけに、店長ももちろんこの世代のラリーカーが大好き。特にこのセリカは元々一番乗りたかったクルマだったということもあり、そのまま譲り受けて完全に修復したそうだ。事故車であることもよりも憧れのクルマをマイカーにできたことの方が嬉しく、以来25年間所有し続けている。

とはいえ、ST185型のセリカもデビュー(1989年)からすでに34年が経過しており、部品が手に入れづらくなってきているのはプロショップ店長といえどネオヒストリックカーオーナー共通の問題。
これまで大きなトラブルこそなかったものの、ちょっとした事でも部品の入手が悩みの種になっている。パッキン類の予備は、欠品の気配が感じられた時にまとめて結構な数を購入しておいたそうだ。

エンジンや足回りのコンディションは良好。今となってはコンパクトなクーペボディのドライビングポジションや視界が懐かしい。

しかし、乗らな過ぎるのもかえってクルマに良くないので、普段使いこそできなくとも、長距離ドライブのようなできるだけコンディションの良い条件で乗るように心掛けているとか。もちろん、日頃の点検やメンテナンス、消耗品の定期的な交換はしっかりとやっていき、今後も末長く維持していきたいと語る。

エンジンは基本的にノーマル。カーステーションマルシェのストラットタワーバーを装着する。
ラリーセリカといえばやはりO・Zレーシングの白ホイールに赤文字は外せない組み合わせ。

実は店長のこのセリカ、2015年の東京モーターショー60周年記念パレードに際してトヨタに貸し出され、モリゾウ氏(豊田章男社長※当時)が運転したとか。トヨタ社長がステアリングを握るということもあり、当時装着していたステンメッシュのブレーキホースがノーマルに戻されたり、バケットシートがTRD製に交換されたりしたそうだ。

ロールケージが組まれている以外はノーマル然とした室内。ステアリングはOMPを装着。
トヨタに貸し出した際に装着されたTRDのバケットシートがそのまま残る。運転席側のハーネスもOMPを装着。
ロールケージは斜行バーも付いていて、ヘルメットネットを吊るす。かといって競技使用前提ではなく、リヤスピーカーも残る。
シフトノブはカルロス・サインツのサインを刻印したものが装着されていた。

「GRIFONE(グリフォーネ)」ってナニ?

店長のカストロールレプリカのセリカを見て気になるのが、ボディやダッシュボードにある「GRIFONE(グリフォーネ)」のキーワードだ。

ボンネットのダクトに貼られたグリフォーネのエンブレムとロゴ。

グリフォーネは英語でいえばグリフォンで、その名を冠したイタリアの名門ラリーチーム(H.F.GRIFONE)だ。主にランチアのサテライトチームとして、ラリー037やデルタS4といったグループBマシンを走らせた他、グループA時代はランチアの撤退までデルタシリーズで主にヨーロッパのラリーで活躍した。
ランチアのWRC撤退後はマシンをセリカにスイッチし、以降、トヨタとのつながりを深くしていく。

リヤウインドウに貼られたグリフォーネのエンブレムとロゴ。
リヤゲート中央のエンブレムとロゴ。
リヤのマッドフラップにもグリフォーネのロゴ。

このレプリカセリカのゼッケンは1994年のラリーサンレモのものになっている。実際、グリフォーネはこのラリーにセリカGT-FOUR(ST165)を投入しているのだが、ESSOをメインスポンサーとした赤白青のカラーで出走しており、ワークスのカストロールカラーではなかった。

1994年のラリーサンレモのゼッケン。余談だが、ゼッケン15はジョリークラブ(これも元ランチア系の名門チーム)から出走したマルコム・ウィルソンのフォード・エスコートコスワース4×4。
クルー名も、ドライバーはピエロ・ロンギだったがナビはフラビオ・ザネッラだった。ファブリツィア・ポンズは女性ナビゲーターで、後にスバルワークスで活躍する。

これについて店長は、厳密にレプリカするのではなく自分が好きなスタイルに仕上げたのだと語る。どうしてまたグリフォーネのエンブレムやロゴを入れているかといえば、カッコ良くて気に入ってるからだそうだ。ショップに保管されているAE111もオリジナルデザインのグリフォーネ仕様になっている。

レプリカ化も憧れのマシンを忠実に再現するのはもちろん、そこに自分の好みやオリジナリティを織り込んで仕上げるのもまた面白い。そうすれば、レプリカを楽しみながら唯一無二の自分だけのマシンを作ることができるというわけだ。
そのあたりも柔軟に対応してくれる、そしてハイクオリティに仕上げることができるのが、競技車両のオリジナルデザインなども手掛けるプロトタイプの強みでもあるのだ。
オリジナルレプリカに興味があるなら、相談してみては如何だろうか?

Prototype
所在地:埼玉県春日部市梅田本町2-37-5
営業時間:11:00~19:00
定休日:毎週水曜日、第一・三木曜日
電話/FAX:048-753-1240
http://www1.odn.ne.jp/prototype/

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