ひと味違うプレミアム・ブランド、マセラティ好調の秘密

絶好調のマセラティ グレカーレが切り拓くプレミアムSUVの新しい風

マセラティ・グレカーレ トロフェオ
プレミアムブランドに新たな風が吹いている。国内でプレミアムブランドといえばメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、そしてレクサス、ジャガーといったあたりが人気ブランドだが、そこにラグジュアリーブランドのマセラティが触手を伸ばしている。そのマセラティの1000万円を切るSUV、グレカーレが絶好調だ。マセラティ好調の秘密をアジアパシフィック統括責任者の木村隆之氏に訊いた。
TEXT & PHOTO:高橋アキラ(TAKAHASHI Akira)

すでに600台を納車し、バックオーダーも500台!

マセラティお馴染みの三又槍(トライデント)を模したエンブレム

マセラティといえば、ステランティス・グループのなかでもフェラーリと並んで別格なブランド。ラグジュアリーでゴージャスなモデルだ。車両価格帯も2000万円前後からスタートするモデルラインアップだが、2023年1月に1000万円を切るGrecale(グレカーレ)が国内デビューして衝撃が走った。

マセラティのアジアパシフィック統括責任者、木村隆之さん。ブルーのグレカーレはモデナグレードだ。

国内導入のインパクト、そして販売状況についてマセラティのアジアパシフィック統括責任者代表取締役の木村隆之氏にグレカーレについて話を聞くことができた。

木村社長は日本、韓国、オーストラリア、ASEAN、インドのマーケットを見ており、なかでも日本は本国イタリアについでマセラティのブランドイメージが高い国なので、重要なマーケットだという。その日本で、グレカーレは発売と同時に非常に多くの注文を受け、幸先の良いスタートを切っている。発売から1年経っていない状況で、すでに600台を納車し、500台のバックオーダーを抱えている状況だという。残り3カ月で170台を納車予定としていると、好調なのだ。

木村社長によるとマセラティのユーザーは、これまでマセラティからマセラティへの乗り換えが最も多く、他ブランドからの乗り換えではメルセデスとポルシェだそうだ。その3ブランドで70%を超える販売比率になっているという。

しかしグレカーレのデビューによって他社からの乗り換えはメルセデス、ポルシェは変わらず、ついでBMW、トヨタ、レクサス、ジャガー、アウディ、ボルボからの乗り換えユーザーが占めるようになり、大きく客層が変貌しているという。マセラティ・ジャパンとしては新しいユーザー層を獲得したことになり、ラグジュアリーブランドの認知度が高いことの証明でもあると分析している。言い換えれば、狙い通りの展開であり、新たな市場開拓は成功していると言えそうだ。

グレカーレのプラットフォームはジョルジョ・プラットフォーム(アルファロメオ・ジュリア/ステルヴィオが採用しているプラットフォーム)。

プレミアムブランドとは異なるラグジュアリーブランドが放つ魅力は、スポーツドライブが楽しめるハイパフォーマンスとゴージャスさを身に纏う存在感だろう。販売会社のアンケートではポルシェを好むユーザーはハイパフォーマンスを乗りこなすことに喜びを感じるユーザーが多く、マセラティはハイパフォーマンスを所有する喜びを持つユーザーが多いという興味深いデータがあるのだ。

ひとつの証拠として、グレカーレの初期オーダーでは最もハイパフォーマンスな「トロフェオ」グレードが35%のシェアを持ち、受注が落ち着いた現在でも20%のシェアになっているという。富裕層の多い北米でもトロフェオは15%のシェアなので、日本がそうしたハイパフォーマンス車を好み、所有する喜びを知っているユーザーが多いというわけだ。

3.0L・V6も2.0L直4もテクノロジー満載

全長×全幅×全高:4846×1948×1670mm ホイールベース:2901mm

グレカーレのラインアップを紹介すると、トップグレードが「トロフェオ」でV6 3.0LのNettuno(ネットゥーノ)を搭載。中間グレードが「モデナ」で直列4気筒ターボに48Vマイルドハイブリッド+E-boosterを搭載。そして標準グレードが「GT」で、ユニットはモデナと同じだが、馬力を少し落とした仕様のエンジンを搭載している。

トップモデルのトロフェオには100%マセラティオリジナルで開発した Nettunoエンジンを搭載。これは2020年7月のMC20発表に合わせて開発されたユニットで、100%メイド・イン・モデナだ。それをグレカーレにも搭載したのだから、初期オーダーでは人気を博すわけだ。

グレカーレGT  2.0L直4ターボ(300ps/450Nm)922万円
グレカーレ モデナ 2.0L直4ターボ(330ps/450Nm)1114万円
グレカーレ トロフェオ 3.0LV6ターボ(530ps/620Nm)1520万円

90度のV型6気筒3.0Lで630ps/730Nmという大出力。F1由来のプレチャンバー燃焼システムを持つエンジンだ。グレカーレには、このエンジンをデチューンし、530ps/620Nmの出力で、気筒休止システムも搭載している。

トロフェオが積む3.0L V6ツインターボエンジン。形式:90度V型6気筒 排気量:3000cc ボア×ストローク:88.0mm×82.0mm 圧縮比:11.0 最高出力:530ps(390kW)/6500rpm 最大トルク:620Nm/3000-5500rpm 燃料供給方式:筒内直接噴射 使用燃料:プレミアム

そしてもうひとつの売りは直列4気筒2.0Lターボエンジンで、こちらはターボラグを減らすためにタービンへ直接送風するモーターを搭載。その電力にマイルドハイブリッドの電力を利用するユニークな構造だ。名称は「E-booster」で、ターボラグを減らす仕組みになっている。

出力はモデナに330ps/450Nm、GTに300ps/450Nmの2仕様で対応しており、ハイパフォーマンス好きの日本人の琴線に触れているようで、GTとモデナグレードでは、GTが50%、モデナが30%、トロフェオが20%の構成比に変わってきているという。スタート価格はGTが922万円、モデナが1114万円、トロフェオが1520万円となっている。

もうひとつ、木村社長がアジア向けに投入した魅力的なプログラムに「フォーリセリエ」というビスポークプログラムがある。木村社長によれば3000万円ほどする車両のオーナーには、こうした特注品メニューは必要だが、ベースモデルが1000万円を切るグレカーレには需要がないというのがグローバルマーケットだという。

しかし日本では、予算は持っていても車両のサイズが5mを超える他のマセラティは乗りづらく、グレカーレのサイズだとちょうどいいというユーザーもそれなりにいるのだという。だからこそ、アジアパシフィックにはフォーリセリエは絶対に必要なプログラムだと本社を説得し、導入することができたと説明する。

フォーリセリエはイタリア語で「特注品」を意味し、「俺だけの一台」を作ることができるビスポークプログラムだ。マセラティでは「あなたのマセラティをつくる」としているのだ。まさにラグジュアリーブランドに相応しく、同じハイパフォーマンスでもポルシェとは一線を画すブランドであり、それをよく知るオーナーの期待に応える準備も整っているということになる。

ちなみに、トロフェオに乗って走ってみると、エンジン音の気持ちよさは格別で、グレカーレのコンセプト「格別な毎日に」という狙いどおり、マセラティに乗ることで格別な気分を味わえるのだ。SUVスタイルなのに地面をしっかり鷲掴み、猛然と加速する様は格別なのだ。

マセラティ・グレーカーレGT
マセラティ・グレカーレGT
全長×全幅×全高:4846×1948×1670mm
ホイールベース:2901mm
車両重量:1870kg
乗車定員:5名
最小回転半径:-
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
エンジン
型式:L4
形式:直列4気筒SOHCターボ+48V MHEV
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm
圧縮比:9.5
最高出力:300ps(221kW)/5750rpm
最大トルク:450Nm/2000-4000rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:65L
トランスミッション:8速AT

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著者プロフィール

高橋 アキラ 近影

高橋 アキラ

チューニング雑誌OPTION編集部出身。現在はラジオパーソナリティ、ジャーナリスト。FMヨコハマ『ザ・モー…