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スタイリッシュなデザインがアメリカで人気となったスポーツクーペ
最近あまり聞かなくなった「逆輸入車」という表現。日本の自動車メーカーが海外の工場(主に北米)で生産したモデルを日本に輸入して販売するケースを指す言葉だった。
最近はモノ作りのグローバル化やファブレス化が進み、いちいち逆輸入と表現しているとキリがない。東南アジアの工場で生産している現行モデルもあるが、それをあえて逆輸入車とは表現しないのも、「逆って何?」という時代感覚がそうさせるのかもしれない。
アメリカのカリフォルニア州で開催される旧車イベント、ジャパニーズ・クラシック・カー・ショー(JCCS)を取材していると、かつて逆輸入車として脚光を浴びたクルマたちに出会うことがある。今回はその一例として、JCCSの会場で発見した初代の三菱エクリプスを紹介しよう。
現在はSUVのエクリプスクロスに車名が引き継がれているが、もともとエクリプスとは手頃な価格帯の割にパフォーマンスが高いことで知られたコンパクトクーペだった。1989年にアメリカで発売され、生産は三菱が当時クライスラーと共同出資して作った現地法人ダイヤモンド・スター・モータースが担っていた。
コクピット感に溢れた特徴的なインテリア
こちらのリトラクタブルヘッドライトを備えた車両は初代モデルの前期型。2.0Lターボエンジンを搭載した4WDの「GSX」と呼ばれた最上級グレードで、日本仕様の場合は「GSR-4」と呼ばれていた。ちなみに初代モデルの北米仕様は1992年のマイナーチェンジで固定式ヘッドライトに変更されたため、それを境に前期型と後期型に分けることができる。
日本では1990年に発売。94年に2代目へとスイッチするまでリトラクタブルヘッドライトが継続採用され、テレビ朝日系列の刑事ドラマ「ゴリラ・警視庁捜査第8班」に劇中車として登場。田中美奈子演じる、その名も田中美奈子刑事の愛車として活躍したことでも知られている。
本来、「GSX」が搭載するエンジンは2.0Lの4G63T型なのだが、実はこの撮影車両は2代目のエクリプスなどに採用された2.4Lの4G64型にエンジンスワップされている。エキマニやターボチャージャー、ウェイストゲートバルブもアフターパーツに交換済みだ。
インテリアは特徴的な形状のステアリングホイールや左右非対称のコクピット感溢れるインパネがグッドコンディションをキープ。グローブボックスの内部には追加メーターが装備されていた。
サイドサポートが大きいスポーティなファブリックシートを装備。カラフルなトリムは後から張り替えられたものかもしれない。
ホイールはアフターパーツに交換されており、17インチのOZスーパーツーリズモが装着されていた。
アメリカではクライスラーからイーグル・タロン、プリムス・レーザーといった兄弟車も存在したが、初代モデルを見かける機会は、全米から旧車が集まるJCCSでも稀。こちらの個体はJCCSが開催されるカリフォルニア州から遠く離れたオクラホマ州のナンバープレートがつけられていた。ぜひとも日米双方の自動車史に残る名車の生き証人として、末永く走り続けてもらいたい一台である。