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「IMV」シリーズって何?
そもそもIMVシリーズとは、何なのか。当時アジア本部長であった豊田章男会長が指揮をとり、アジアの経済に貢献したいと現地エンジニアと共に開発した新興国向け世界戦略車プロジェクト「IMVプロジェクト」より生まれたモデル群を指す。タイでは2004年に発売されたピックアップトラック「ハイラックス ヴィーゴ」を皮切りに、車種展開を拡大。今や世界180以上の国と地域で導入され、タイ国内だけで累計270万台以上を販売し、世界各国に累計400万台以上が輸出されている。IMVシリーズには、ピックアップトラック「ハイラック」シリーズに加え、SUV「フォーチュナー」やミニバン「イノーバ」などが含まれている。当初は全て同じシャシーフレームを共有していた。
その最新作がハイラックスチャンプと名付けられた「IMV 0」なのだ。同車は、求めやすい価格と顧客のニーズを取り入れた新たなIMVピックアップトラックとして開発された。ここでのニーズとは、様々なシーンで活用するために必要な架装がし易いように配慮した設計されたことを意味する。具体的には、荷台がウェイオープンウェイフラットベッド仕様であることやカスタマイズ用に各所に穴あけ用のエリアが用意されていることなどが挙げられる。
さらに値段も45万9000バーツから57万7000バーツに抑えている(日本円で約190万円~約238万円ほど)。因みに、同じくシングルキャブの「ハイラックス レボ スタンダードキャブ」の価格は、56万4000バーツ(日本円で約233万円ほど)からとなっているので、エントリープライスが抑えられていることが分かる。
※1バーツ=4.13円で換算。
ボディサイズは日本のハイラックスZより気持ち小さめ
まず基本構成を見ていくと、ボディタイプは、全部で5種類。その中で、ホイールベースはショートとロングを使い分けている。もっとも廉価な仕様だと、架装を前提に荷台すら備えていない。キャビンは、シングルの2名乗車仕様のみとなるが、MT仕様だと座面の広いワイドタイプの助手席仕様になる。
ボディサイズは荷台付きのショートボディで全長4970mm×全幅1785mm×全高1735mm、ホイールベースが2750mm。荷台付きのロングボディだと、全長5300mm×全幅1785mm×全高1735mm、ホイールベースが3085mmとなる。
日本で販売されるハイラックスZ(ダブルキャブ仕様)のサイズが、全長5340mm×全幅1855mm×全高1800mmなので、それよりも少し小ぶり。タイのシングルキャブのハイラックスと比べると、ショートホイールベースとロングホイールベースの中間に収まるが、全幅と全高はハイラックスの方が少し大きい。
車名 | ハイラックスチャンプ (ショートボディ) | ハイラックスチャンプ (ロングボディ) | ハイラックスZ (日本仕様) |
全長 | 4970m | 5300mm | 5340mm |
全幅 | 1785mm | 1785mm | 1855mm |
全高 | 1735mm | 1735mm | 1800mm |
ホイールベース | 2750mm | 3085mm | 3085mm |
エンジンとトランスミッションは仕様により設定が異なるが、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを設定。
ガソリンエンジンは、ショートホイールベースのみに設定され、5速MTが自然吸気仕様の2.0L直列4気筒DOHCとなり、最高出力102kW(139ps)、最大トルク166Nm(※16.92kgm)。6速ATの場合、自然吸気仕様の2.7L直列4気筒DOHCとなり、性能が向上。最高出力122kW(166ps)、最大トルク245Nm(※24.98kgm)となる。
※編集部換算値
搭載グレードの多いディーゼルエンジンは、2.4L直列4気筒DOHCターボとなり、5速MTだと最高出力110kW(150ps)、最大トルク343Nm(※ 34.97kgm)。6速ATでは最高出力こそ同じだが、最大トルクは400Nm(※ 40.78kgm)まで高められている。
トラックなので当然だが、フルフレーム構造であり、駆動方式は全車FRのみとなる。
※編集部換算値
タフギア感を演出するデザインがGOOD
そのエクステリアは、ちょっとクラシックテイストで、ランクル70を彷彿させるもの。その武骨さが、なかなかカッコイイ。現行ハイラックスとは似ていないが、これはデザイン性とコストダウンを両立させる秘策ではないだろうか。クロカンのようなギア感を演出することで、無塗装のグリルやバンパーを活かしているのだ。なかなか上手いデザインだと思う。
インテリアも、お手頃価格実現のために超シンプル。メーターパネルはMTがあれどタコメーターレス。そしてエアコンが冷房のみのマニュアル仕様というのは常夏の国なので当然なのだが、驚くべきことに送風モード切替がない。恐らく天候的にも無くても困らないのだろうが、コストダウンへの意気込みが凄すぎる。
ダッシュボードデザインは、ギア感のあるスクエアなデザインで、アクセントにオレンジが取り入れられているので、ややSUV感もある。ただし、収納部には、蓋が無いなど、やはりコストダウンは徹底している。因みに、パワーウィンドウや電動調整式ドアミラー、リモコンドアロック、左右エアバック、ABS、などは備わっている。
モーターエキスポの会場では、その可能性をアピールすべく、架装済みのハイラックスチャンプを参考出品。キャンピングカーは、TJM 4×4 Thailandが手掛けたもの。ルーフテントを備えたアウトドア要素が強い仕様となっており、荷台にある収納ボックスには格納式キッチンも備えている。ワイルドなハイラックスチャンプのスタイルを見事に生かしたデザインとなっている。
カスタムベースとしての可能性も大きい
ストリート仕様と言われる派手なハイラックスチャンプもあった。同社をカスタマイズしたのは、タイのPSPショップとECUショップという二つのチューナーのコラボレーションにより完成されたもの。エンジンはノーマルだが、スロットルコントローラーなどを備え、足回りやエキゾーストも変更されている。ドラックマシンに仕上げても面白そうだが、そうなるとエンジン換装まで必要だが、コイツで速ければ、ヒーロー間違いなしだろう。
新たなトヨタの新興国向けエントリートラックとして送り出されたハイラックスチャンプ。既にインドネシアにも投入され、そちらは「ハイラックス ランガ」を名乗る。新興国では、仕事車兼愛車というピックアップトラックも多いため、上記のようなカスタムニーズも一定数ある。質実剛健な仕様であるものの、日本でもカスタムベースとして興味を持つ人は多そうだ。