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レジャー用途だけでなく、防災シェルターとしての役割も再認識
今年も千葉県・幕張メッセでは、多彩なキャンピングカーが集合した。「ジャパンキャンピングカーショー(JCCS)」の規模はもはやジャパンモビリティショーに迫る勢いであり、国内でのキャンピングカーへの注目度がさらに上がっていることを物語っている。
特に今年は、元旦に能登半島大地震が発生したことにより、防災シェルターとしての役割が再認識されている。ショーの中では震災への支援活動の模様や、災害時の活用方法なども紹介された。苛酷な避難生活の中でいかにパーソナルスペースを確保するか、ライフラインが寸断された際にどうやって生活を続けるかといった問題での、キャンピングカーの有効性が解説されていた。
一人旅、二人旅用に「タウンエース」ベースの評価が高まる
会場に並べられたニューモデルは、昨年に引き続いてフィット「デュカト」ベースのバンコンモデルが多かったが、同時に多かったのがトヨタ「タウンエース」ベースのモデルだ。実は最近まではタウンエースベースのキャンピングカーはそれほど多くなかった。しかし、一人旅、二人旅用モデルの需要がますます高まる中で、タウンエースのサイズが再評価され始めたのである。
例えば、軽バンをベースにした軽キャンは、価格と装備のバランス、そして購入後のランニングコストで申し分ないカテゴリーと言える。だが、その居住空間にはどうしても限りがあるし、車内をダイネットとして活用できないモデルも少なくない。そうしたモデルは“寝るだけ”と割り切ればいいのだが、雨の日などはやはり少々気詰まりになりそうだし、まったく車内を移動できないというのも少々ネガティブなポイントにはなる。
一方、タウンエースはそもそもが商用車として造られたクルマなので、バンなどは車内がなかなか広い。外観の見映えはそれなりだが、ミニバン的なフォルムの日産「NV200バネット」と比べると、車内空間は明らかに広い。またエンジンは1500cc直4を搭載しているので、660cc直3の軽自動車とでは明らかなパワーのアドバンテージがある。また2020年に実施されたマイナーチェンジによって新型エンジンに換装。これにより、勾配の厳しい山道でもストレスなく走れるようになっている。
加えて4ナンバーであることから自動車税などの負担も小さく、さらに1ナンバーのバンコンと比べると高速道路料金も抑えられるというメリットがある。
こうした利点から、タウンエースのニューモデルが今年続々と登場したことは自然の流れとも言えるのだが、ユーザーとして気になることがある。それが、ダイハツの不正問題だ。すでに再三報道されているので、ご存じの読者も多いと思うが、何と国交省が型式認定取り消しをした車種の中に、タウンエースが入っていたのである。
誤解のないようにつまびらくと、型式認定取り消しになったのは「タウンエーストラック」だ。しかし、バンでなかったからいいということではない。キャンピングカー、特にキャブコンの中にはタウンエーストラックやマツダ「ボンゴトラック(OEMモデル)」をベースにしたものがあるからだ。
キャンピングカー業界におけるトヨタ系不正問題の影響は?
現在、タウンエーストラックと兄弟車は生産再開見通しが一切立っていないので、納車を楽しみにしていたユーザーには気の毒としか言いようがない。だが、ビルダー側もそれは検討しているようで、今回のJCCSで取材したところでは、タウンエースバンのボディをカットしてキャブコンに架装するというところが何社かいた。製造に手間暇とコストはかかるが、約2年待ちというバックオーダー状況を考えればやむを得ないというところだろう。
ちなみに、現在使用中の車両、ならびに市場に出ている新車のタウンエーストラックに関しては、特段安全性に問題あるという認識は官庁もしていないので、そこは安堵というところだろう。
だが、安堵していられないのはキャンピングカー業界だ。ダイハツ問題で「ハイゼット」シリーズのデリバリーは停止したままだし、さらに豊田自動織機の不正が業界に追い打ちをかけた。こちらはディーゼルエンジンだっただけに、ダメージも広い。
キャブコンのベースシャシー車である「カムロード」、「ハイエース」「ハイラックス」といったキャンピングカーにはなくてはならないベースモデルがことごとく出荷停止になったからだ。もちろん、トヨタ本体が全力でリカバリーするだろうが、納期が延びることは回避できないだろう。
ちなみにタウンエースバンは2024年1月19日に出荷停止指示が解除されているので、これをベースにしているキャンピングカーの納期が大幅に遅れるということは回避できそうだ。
新たな選択肢「エルフmio」に期待が集まるが、問題は価格の高さ。
やはり手痛いのは、ハイエースのバンコンやカムロードのキャブコンだろう。これは余談だが、今年夏頃にいすゞが「エルフmio」と同型のキャンピングカーシャシーを市場に投入する。これが登場すれば、ビルダーにもユーザーにも新たな選択肢となるわけだが、問題は価格だ。
いすゞ関係者によれば、シャシーだけの価格で400万円を下ることはないという。これは、カムロードよりもかなり高いことになる。つまり、架装した場合にその価格差がそのまま出ることになる。最新の性能とスタイリッシュなフェイスデザインは魅力だが、果たしてその価格でビルダーが使うかは疑問だ。
様々な流れが渦巻くキャンピングカー業界だが、今年のショーも秀作が多く発表されただけに、このいい流れを自動車メーカーが妨げないよう祈るばかりだ。