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MIVECエンジンとチタン系コンプレッサーで高レスポンスを達成
2005(平成17)年3月2日、三菱自動車の「ランエボIX」がデビュー。最大の特徴は、名機4G63ターボエンジンにMIVEC(連続可変バルブタイミング機構)を採用し、ターボのコンプレッサーホイールをチタンアルミ合金化するなどして、高速性能とレスポンスを向上させたことだ。
MIVECの採用とターボ改良でさらに進化した第9世代ランエボIX
2005年に登場したランエボIXは、先代VIIIで不評だったダイムラー・クライスラー出身デザイナーが手掛けた“ブーレイ顔”を一新して、冷却性に優れたシンプルなフロントマスクに変更した。
最大の特徴は、2.0L直4 DOHC(4G63)インタークーラーターボエンジンの吸気側に位相型MIVECを組み込んだこと、さらにターボチャージャーのコンプレッサーホイールをインコネル(ニッケルクロム合金)からチタンアルミ合金にするなどして、全域で高性能とハイレスポンスを実現したこと。
4WDについては、三菱独自のAWC(オールホイールコントロール)+スーパーAYC(アクティブヨーコントロール)+スポーツABSをさらにブラッシュアップして、高出力エンジンのパワーを余すことなく路面に伝えて果敢な走りを実現したのだ。
ランエボIXに設定された3グレードのスペック
・ランエボIX RS(294万円):競技用グレード
軽量化のためにエアコンやパワーウィンドウまで排除した戦闘用グレード。車重は1320kg、最高出力280PS/6500rpm、最大トルク40.8kgm/3000rpmを発生。
・ランエボIX GT(313.8万円):快適装備と価格のバランスを取ったグレード
これまでは、GSRとRSの2グレードだったが、新たに追加されたグレード。車重は1390kg、最高出力280PS/6500rpm、最大トルク40.8kgm/3000rpmを発生。
・ランエボIX GSR(357万円):快適装備を搭載した最上級グレード
快適装備のために車重が重くなったが、それでも十分以上の性能を発揮。なお、6速MTを選択できるのは、GSRだけ。車重1410kg、最高出力は280PS/6500rpm、最大トルク40.8kgm/3000rpmを発生。
標準的な技術となった可変バルブタイミング機構
三菱の可変バルブタイミング機構は、MIVEC(Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system)とネーミングされ、カム切替型とカム位相型の2種類がある。
1992年に低速カムと高速カムを切替える切替型が「ミラージュ」に採用され、その後2005年に連続的にカム位相を変える位相型が「アウトランダー」に採用。2つのタイプを、エンジンや車両タイプによって使い分けており、大まかには2.4L以下は位相型、2.4L以上には切替型が採用されている(2.4リッターは混在)。
今や可変バルブタイミング機構は特別な技術ではなく、すべてのメーカーが出力と燃費、排ガスを両立させるために採用している標準的な技術だ。各メーカーによって呼称は異なるが、その仕組みに大きな差はない。かつては先進的な技術でも急速に普及が進んで、時間とともに標準的な技術になるという典型的な技術である。
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高性能4G63エンジンと4WD技術がブラッシュアップされたランエボIXは、最強の戦闘力を持ったランエボと評され、歴代に中でも人気のモデルとなった。しかし、残念ながらWRCの舞台で活躍することなく、三菱はWRCから完全に撤退し、次のランエボXでランエボの歴史に幕を下ろした。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れない。