2024年4月27日に埼玉県鴻巣市にある関東工業自動車大学校で開催されたクラシックカーフェスティバルでは、例年並みの参加車と見学者が集まり大盛況だった。もはや新型ウィルスの影響は感じられず、広大なグラウンドに数多くのクラシックカーが展示されるほか自動車整備の実習設備である屋内施設も展示場になる。どのような基準で展示場を分けているのかは不明ながら、今回は屋内展示に第一世代GT-Rであるハコスカ&ケンメリGT-Rがズラリと並んで壮観だった。
何台ものGT-Rは関東近辺での旧車イベントで恒例となっているGT-Rクラブの面々による一斉展示。クラブには第一世代GT-Rが各年式ごとに揃い、オーナーは複数台の旧車を所有している人がほとんど。埼玉県と茨城県のメンバーが多いことも特徴で、関東近辺の旧車イベントには途中で待ち合わせをして会場まで駆けつける。すっかり常連であり筆者も過去に多くの方を取材させていただいたが、今回のイベントで初お披露目となった1台があった。
それがこのホワイトに塗装されたハードトップGT-R。オーナーの竹木通夫さんのことは以前から旧車イベントなどで取材させていただく機会があったのだが、展示される多くの場合でメルセデス・ベンツ280SE3.5カブリオレや2代目スバル・サンバーバンであることが多かった。だから竹木さんとGT-Rという組み合わせが意外で、失礼ながら初めはオーナーを紹介されても誰だか気が付かなかった。
ところが竹木さん、40年ほど前にハコスカGT-Rを所有されていた時期があるのだそうだ。現在も前述した2台のほかにシボレー・カマロRS/SSコンバーチブルとランボルギーニ・ディアブロを所有されているほどのマニアだが、最近になってハコスカGT-Rをもう一度所有してみたいと思うようになった。ところが昨今は第一世代GT-Rの価格が高騰しており、これから買おうと思ったら数千万円の予算を見込まなければならない。
以前から好きで第一世代GT-Rに乗りたいと思っているマニアは多いが、ここまで価格が高騰してしまうと諦めてしまうことが多い。ところが竹木さんは昔からの旧車マニアであり、周囲にも旧車乗りが多い。本気で欲しいと相談をすれば一般に買うより良い条件の物件が回ってくることだろう。今回手に入れたハコスカGT-Rは、なんと納車されてから2週間しか経っていないという新婚ホヤホヤ状態。しかもどこから見ても新車のような状態を保っている。
どうしてここまでキレイなのかと聞けば、埼玉県の専門ショップである水上自動車工業でフルレストアされた個体を納車してもらったからだとか。水上自動車工業はそれこそGT-Rクラブで現在会長を務める小杉庄司さんが古くから付き合っている名店。以前は車体周りの整備からカスタム、エンジンのオーバーホールやチューニングに始まりレーシングカーの制作まで手掛けてきたが、数年前に板金塗装工場を新設。自社ですべてを手掛けることができるようになり、フルレストアの依頼に自社工場で対応できるようになった。古くからのお客さんから紹介されたとあれば、水上自動車工業としても手を抜けなかったことだろう。
もちろん金額は張るだろうが、ここまでの仕上がりはお金に代えられないともいえる。第一世代GT-R最大の魅力である直列6気筒DOHCのS20型エンジンはフルオーバーホールされている。S20も水上自動車工業にとってはお手のもので、過去に何機ものS20型を分解整備しているしチューニングノウハウも豊富。だが竹木さんは純正エアクリーナーケースを装着しているくらいで、あえてノーマルスペックでのオーバーホールを行なった。それは内外装についてもいえ、フェンダーやドアなどは新品パネルを使ってレストアされているが、リヤのオーバーフェンダー内に履くホイールも純正のか細いスチールホイールのまま。徹底したこだわりが感じられるハコスカGT-Rに仕上がっていた。