「アテンザ」が90年代のマツダ低迷期を救う! 200万円と手頃な価格で世界デビューしたミドルセダン【今日は何の日?5月20日】

マツダ・アテンザ
マツダ・アテンザセダン
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月20日は、1990年代に経営危機に陥ったマツダの救世主となったグローバルセダン「アテンザ」が誕生した日だ。アテンザは、走る歓びを追求するマツダのブランドメッセージ“Zoom-Zoom”を具現化した第1弾モデルである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

■新生マツダのブランドメッセージ“Zoom-Zoom”第1弾

2002(平成14)年5月20日、マツダが「カペラ」シリーズの後継となる「アテンザ」を発売。アテンザは、走る歓びを追求するマツダのブランドメッセージ“Zoom-Zoom”を具現化する第1弾として登場。経営不振に陥っていたマツダの救世主となったミドルクラスのグローバルセダンである。

マツダ「アテンザワゴン」
2002年にデビューしたマツダ「アテンザワゴン」

●マツダ再生のための新しいクルマづくり“Zoom-Zoom”戦略

1980年代後半の“作れば売れる”バブル絶頂期に、自動車メーカーは販売拡大を狙い販売網の多チャンネル化を進め、マツダも1989年に5チャンネル体制を導入した。

しかし、規模の大きくないマツダにとっては、5つの販売チャンネルを維持するための車種展開の負担は大きく、目論見に反して販売は落ち込んで低迷。さらにバブル崩壊が追い打ちをかけ、マツダは経営危機に陥り、1996年ついにフォードの傘下に収まることになった。
フォードから派遣された外国人社長のもと、経営改革と強力な諸品戦略を策定し、2001年10月の東京モーターショーで新しいブランドメッセージ“Zoom-Zoom”を発表し、再生の狼煙を上げた。これは、走る歓びを追求したマツダらしいクルマづくりを指す。
翌2002年に、“Zoom-Zoom”を具現化する第1弾としてデビューしたのが、アテンザだったのだ。

●新生マツダの先陣を切り登場したアテンザ

マツダ・アテンザ
2002年にデビューしたマツダ「アテンザセダン」

ミドルクラスのセダンとして登場したアテンザは、実質的に「カペラ」の後継だが、プラットフォームからエンジンまですべてが一新され、海外では「Mazda6」として販売された。
精悍でスポーティなフォルムに、4ドアセダン/5ドアハッチバック/スポーツワゴンの3種のボディバリエーションを設定。パワートレインは、2.0L/2.3Lの新開発アルミ製直4 DOHC エンジンと4速/5速ATおよび5速MTの組み合わせ。駆動方式はFFベースで電子制御フルタイム4WDも用意された。

マツダ・アテンザ
マツダ・アテンザセダン

足回りについては、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクサスペンションを組み合わせ、優れた操縦安定性と快適な乗り心地により、“Zoom-Zoom”を具現化したのだ。
車両価格は、2.0L/2.3Lセダンが200万/210万円(4速AT)、2.3Lハッチバックが230万円(4速AT)に設定。ちなみに、当時の大卒初任給は17.4万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算で現在の価値で安価なモデルが約264万円に相当する。
アテンザは、発売1ヵ月で7500台を受注し、2006年には当時のマツダの生産台数100万台達成の最短記録を更新するヒットとなり、マツダ再生の救世主となったのだ。

●“Zoom-Zoom”スピリットを継承したモデルで再生を加速

マツダは、アテンザに続いて走る歓びを追求したモデルを次々とデビューさせた。

デミオハッチバック
2002年に登場したマツダ2代目[デミオハッチバック」

アテンザから3ヶ月遅れの2002年8月にデビューした2代目「デミオ」は、発売1ヵ月で1万5000台を売り上げ、10年余りで100万台を達成する大ヒットによりマツダの再生を確実なものにした。翌2003年には、ファミリアの後継にあたるコンパクトスポーツ「アクセラ」がデビュー、「Mazda3」の車名で販売され特に海外で人気を獲得した。
さらに、本格的ミニバンに変貌した2代目「プレマシー(2005年~)」、進化した3代目「ロードスター(2005年~)」、広いキャビンの3代目「MPV(2006年~)」、新ジャンルのクロスオーバーSUV「CX-7(2006年~)」と、勢いのある人気モデルの新車攻勢により、新生マツダの勢いをさらに加速させたのだ。

マツダ2代目「デミオ」
2003年にデビューし大ヒットしたマツダ2代目「デミオ」

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アテンザは、計画段階から日本の5ナンバー枠にとらわれることなく3ナンバーとして開発された。これが、国際的にも通用するミドルクラスのスポーティファミリーカーとして成功し、日本以上に海外市場で好評を博した理由であろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…