マツダ「ボンゴ」はRR&低床フロアを実現した元祖小型ワンボックス、今もキャブコン派に大人気!【今日は何の日?5月9日】

マツダ・ボンゴ
1966年にデビューした初代「ボンゴ(ワンボックスバン)」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月9日は、今から58年前にトラックとワンボックス商用バン、8人乗りの乗用ワゴンの3モデルを揃えたマツダ「ボンゴ」シリーズが誕生した日だ。なかでも乗用ワゴンのコーチは、ワンボックスカーのパイオニアとして、その後のミニバンにも大きな影響を与えた。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

■超低床のキャブオーバー商用/乗用車として一世を風靡したボンゴ

1966年(昭和41)年5月9日、マツダ(当時は、東洋工業)は超低床の「ボンゴ」シリーズを発売。キャブオーバーのRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトのボンゴシリーズは、トラックとワンボックス商用バン、8人乗りの乗用ワゴンの3モデルを設定し、その利便性の高さから大ヒットした。

マツダ・ボンゴ
1966年にデビューした初代「ボンゴ(ワンボックスバン)」

●ワンボックスカーのパイオニアとなった乗用コーチ

ボンゴシリーズは、超低床のRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトで、商用のトラックとワンボックス型バン、乗用ワゴン「コーチ」の3つのモデルが設定された。コーチは、バンのボディに3列シートを搭載した8人乗りのワンボックスで、大人の膝程度の高さの超低床が特徴だった。
パワートレインは、最高出力37psのファミリア用アルミ製800cc(その後1.0Lに拡大)直4 OHVエンジンと4速フロア式MTの組み合わせ。エンジンは、最高出力を下げ低中速トルクを上げるチューニングとしたため、実用域で力強い走りができた。

ボンゴ1000バン
1968年にデビューした「ボンゴ1000バン」。発売2年後にエンジン排気量を800ccから1000ccに拡大

ボンゴシリーズは、利便性の高さから人気を獲得したが、特に超低床の多目的車として登場したコーチは大ヒット! ワンボックスカーのパイオニアとなった。その後、同様のコンセプトのトヨタ「ミニエース(1967年~)」や三菱自動車「デリカ(1968年~)」が登場したが、コーチはそれらの草分け的存在になったのだ。

●2代目はさらに進化してマツダの中核モデルに

ボンゴトラック
1977年に登場した2代目「ボンゴトラック」。超低床でアプローチのし易さがアピールポイント

初めてのモデルチェンジを迎えた2代目ボンゴシリーズは、1977年にトラック、1978年にワンボックスの商用マルチバンと乗用マルチワゴンの、初代同様3モデルが設定された。ワゴンは、スタイリッシュなワンボックスタイプとなり、小型ダブルタイヤと低床荷室にフルフラットシートが装備された。
エンジンは、最高出力77PSの1.3L/82PSの1.6L直4 OHV、ワゴンには95psの1.8L直4 OHVを搭載し、初代にも増して力強い走りを実現。駆動方式は、初代のRRから前席下にエンジンを置いたFR方式に一新され、静粛性が向上した。

ボンゴフレンディ「@NAVI」
2000年9月に登場したボンゴフレンディ「@NAVI」

その後も様々な改良を加えながら、初代と2代目ボンゴは1970年代に堅調な販売を続け、1980年に大ヒットした5代目「ファミリア」が登場するまで、マツダの屋台骨を支えたのだ。

●マツダは商用車の自社生産から撤退、ボンゴはOEM車に

ボンゴブローニイバン
2021年に登場した「ボンゴブローニイバン(ダイハツのOEM車)

ボンゴシリーズは、その後3代目、4代目とやや販売は落ちたものの堅調な販売を付け、2020年まで生産された。
しかし、マツダは1998年の軽自動車や2018年の自社生産撤退に続いて、商用車についても自社生産から完全撤退し、開発リソースを乗用車とSUVに集中することを決断。2020年から、商用車ボンゴバン、ボンゴトラックをダイハツからのOEM供給による新型車に切り替えた。

1976年式マツダ・ボンゴトラック
1976年式マツダ・ボンゴトラック。オートモビルカウンシル2020より(PHOTO:平塚直樹/clicccar)

ボンゴは、トヨタの「タウンエースバン」や日産自動車「NV200バネット」などと同クラスの長寿商用バンだが、自社生産撤退により実質的には54年の歴史の幕を下ろしたことになった。

ボンゴ・トラックGLをベースにしたキャブコンバージョン
セミキャブオーバーのボンゴ・トラックGLをベースにしたキャブコンバージョン。東京キャンピングカーショー2020より(PHOTO:塚田勝弘/clicccar)

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かつては、ワンボックスの代名詞とも言われたボンゴだが、競争の激しい商用車のなかで徐々に台数を減らした。“選択と集中”をしなければ生き残れない、リソースが限られたマツダのような中堅メーカーにとっては、OEM対応も致し方ないのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…