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あれっ、もしかして新型アコード、すごくいいクルマじゃない?
11代目となるホンダ・アコードが再び国内で販売されたのが2024年3月。豪雨のなかで開催された報道向け試乗会で少し触れた時から気になっていた。「あれっ、もしかして新型アコード、すごくいいクルマじゃない?」
クローズドコースは路面が滑らかで実際の乗り心地はわからなかったし、もちろんロングドライブした際の燃費もわからない。ただ、そのスタイリングは写真で見るよりずっと魅力的で、インテリアの質感も高いことは確認できていた。
なかなか公道で試す機会がなかったが、ようやく借り出して数日間過ごすことができた。
結論から先に言うと、新型アコード、すごくいいクルマです。
ボディサイズは
アコードe:HEV
全長×全幅×全高:4975mm×1860mm×1450mm
ホイールベース:2830mm
だから、日本の路上で見ると堂々たるサイズだ。サイズ的には「Fセグ」に当たる。
ほぼ同じカテゴリーのライバルは、
クラウンクロスオーバー
全長×全幅×全高:4930mm×1840mm×1540mm
ホイールベース:2850mm
レクサスES
全長×全幅×全高:4975mm×1865mm×1445mm
ホイールベース:2870mm
メルセデス・ベンツEクラス
全長×全幅×全高:4960mm×1880mm×1465mm
ホイールベース:2960mm
BMW5シリーズ
全長×全幅×全高:5060mm×1900mm×1515mm
ホイールベース:2995mm
アウディA7スポーツバック
全長×全幅×全高:4970mm×1910mm×1415mm
ホイールベース:2925mm
といったところだ。スタイリングは好みによるが、筆者は伸びやかでクリーンさに魅力を感じた。日本ではお尻が下がったデザインは成功例があまりないとだが、果たして今度のアコードはどうだろう。アウディA7とちょっと似ている……かもしれないが。
乗り心地がいい
ホンダ青山本社地下駐車場でアコードを借り出す。シートに腰を下ろしてドライビングポジションを調整する。インテリアはシビックやヴェゼルとも共通する最新ホンダデザインだが、質感は当然1ランク上だ。しかも、広い。普段乗っているマイカーのBMW3シリーズ(F30型)よりも格段に広い。
Fセグセダン、つまり正統派フォーマルセダンを選ぶユーザーにとって、質感の高いインテリアとゆったりとした室内空間は重要だ。アコードの室内は身長180cmクラスの乗員が4人乗っても狭さを感じることはなさそうだ(筆者は身長175cmなので、「おそらく」ということだが)。
走り出すと、パワートレーンの洗練度の高さに驚く。静か、滑らか。e:HEVはかつてi-MMDと呼ばれていたホンダ独自のハイブリッドシステムだ。基本はシリーズハイブリッドでモーター駆動だ。高速巡航になればエンジン直結となり、その中間はエンジン/モーターアシストとなる。とはいえ、エンジンがかかってもがっかりすることはない。静かで滑らかだ。
ドライブモードは、ECON/COMFORT/NORMAL/SPORT/INDIVIDUALの5つから選べる。まずは、NORMALで走ってみる。特段速いわけではない(し、その必要もないのだが)が、バッテリーの状況が許せば、EV走行だからトルキーで滑らか。
次にCOMFORTで走ってみる。
アダプティブ・ダンンパーシステムを採用する脚周りは、路面の段差を乗り越えても、角のないじつに心地より乗り味だ。
SPORTモードを試すのはやめておいて(実際に自分がアコードを買った場合、あまり使わないと思ったので)、INDIVIUALに切り換えた。このモードは、「パワートレーン/ステアリング/サスペンション/ACC/メーター」を自分好みに設定できる。
パワートレーン:NORMAL
ステアリング:SPORT
サスペンション:NORMAL
ACC:NORMAL
メーター:NORMAL
にする。ステアリングはやや手応えを増す(といっても、決して重くはない)。こちらの方が好みだ。だだし、ドライブ毎にINDIVIUALモードを選び直さないといけないのは、どうも面倒だ(NORMALに戻ってしまうので)。
首都高速に乗る。首都高独特の路面の継ぎ目もあまり不快ではない。これは、アコードのサスペンションの出来の良さ……だけでなくボディがしっかりしているおかげだろう。
常磐道に乗って、モビリティリゾートもてぎを目指す。
常磐道の一部区間の制限速度は110km/h。そこそこ交通量は多かった。アコードにはホンダ最新の先進運転支援システムであるHonda SENSING360が載っている。速度を設定したACCをONにすれば、あとはハンドルに軽く手を添えているだけでいい。レーンキープ性能も速度管理もクルマ任せでリラックスしてドライブが楽しめた。
となると、いろいろ試したくなる。アコードはGoogleアシスタントを採用しているから、ナビのマップはGoogleマップだし、「OK、Google!」と呼びかければ、大抵のことは済んでしまう。もちろん、目的設定などお手のものだ。
明日のニューヨークの天気も、為替相場もすぐにわかるし、「最新のニュースを読み上げて」と頼めば即座に応えてくれる(各放送局の最新ニュースを読み上げてくれる)。
これは便利だ。
BOSE製オーディオも良い音がする。いわゆるBOSEらしいメリハリの効いた音だが、静かで広い室内によく響く。
いいなぁ、アコード。
せっかくなので、「SPORTモード」もちょっとだけ試してみた。アクセルペダルを深く踏み込むと、ホンダらしいエンジンの快音がした。いい音。いいなぁ、アコード。
驚異的な燃費性能 ディーゼル以上の経済性
エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:LFD 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.9 最高出力:147ps(108kW)/6100rpm 最大トルク:182Nm/4500rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48L モーター H6型交流同期モーター 最高出力:184ps(135kW)/5000-8000rpm 最大トルク:335Nm/0-2000rpm
アコードのモード燃費は
WLTCモード燃費:23.8km/L
市街地モード 20.5km/L
郊外モード 27.0km/L
高速道路モード 23.6km/L
である。23.8km/L!全長5mのサルーンの燃費が23.8km/L! どうせモード燃費に過ぎないのだろう、と思ってドライブしていたのだが、燃費計の数字は着々と上がっていく。
e:HEVの優秀性ももちろんあるのだが、アコードはサイズに比して車両重量が重くない。これが燃費にも走りの爽快さにも効いている。最近のBEVだと軽く2トン超えも珍しくないから1580kgは軽いとすら思ってしまう。
アコード(FWD)
車重:1580kg
WLTCモード燃費:23.8km/L
クラウンスポーツZ(AWD)
2.5L直4(A25A-FXS)+シリーズパラレルハイブリッド
車重:1810kg
WLTCモード燃費:22.2km/L
レクサスES 300h(FWD)
2.5L直4(A25A-FXS)+シリーズパラレルハイブリッド
車重:1670kg
WLTCモード燃費:22.3km/L
といった具合で、あのトヨタのハイブリッドモデルを上回るモード燃費性能を誇る。さらにライバルの燃費を記すと
メルセデス・ベンツE300エクスクルーシブ
2.0L直4ターボ(M254)+48Vマイルドハイブリッド
車重:1880kg
WLTCモード燃費:14.0km/L
BMW523iエクスクルーシブ
2.0L直4ターボ(B48型)
車重:1760kg
WLTCモード燃費:14.4km/L
となるわけで、アコードの燃費性能が図抜けて優れていることがわかる。しかも、燃料はレギュラーガソリンである。
と書いてきたが、モード燃費と実燃費が乖離していたら意味がない。が、ここでもアコードは優れた結果を残した。
501.3km走って24.4km/Lの燃費(あくまでも燃費計のデータだが)をマークしたのだ。すごいな、アコード、モード燃費以上だ。
最近の平均燃料価格は次の通りだと仮定してみる。
レギュラーガソリン:176円/L
ハイオク:187円/ L
軽油:156円/L
24.4km/Lを燃料価格で割ってみると7.2円/kmになる。
我がBMW320d(2.0Lディーゼル)は6万kmほど走って平均実燃費は18.3km/Lだから8.5円/kmということになる。なんとディーゼル以上の経済性ということになる。
さらに参考までに言うと、BEVの場合だと
電気代1kWh 36.4円/kWh(東京電力のスタンダードプランの場合)だとしたら、5.1km/kWhということになる。
ほぼ同サイズ(重量は別だが)のBMW i5セダンのモード電費が166Wh/kmだから6.0km/kWhということになる。となると、これが6.0円/km。おそらく実電費となれば、アコードの7.2円/kmに近づくだろう。
となると、安心して長距離を走れる、給油・充電の容易さを考えると、圧倒的にハイブリッドのアコードの方が使い勝手がいい。
ちなみにシビックe:HEVは
WLTCモード燃費:24.2km/L
市街地モード 21.7km/L
郊外モード 27.6km/L
高速道路モード 23.4km/L
試乗したときの試乗では21.6km/L。シビックよりアコードの方が良い燃費だったのだ(無論、走行状況が違うので直接比較はできないが)。
アコードの燃費性能の高さは、まったくもって凄いとしか言いようがない。
コストパフォーマンスが高い!
欠点を探すのが難しいほど、今度のアコードは出来がいい。スタイリング(繰り返すが好みの問題でもある)が気に入ったなら、ぜひ一度試乗してみていただきたい。たとえ、Eクラスや5シリーズ、クラウンクロスオーバーが第一候補だったとしても、アコードを試さないテはない。
メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズを考えている人も、ガレージのサイズに問題がなければ、ぜひ一度アコードに乗ってみてほしい。
価格の話もしておこう。
ホンダ・アコード e:HEV:544万9400円
クラウンスポーツZ(最上級グレード):595万円
レクサスES 300h(FWDエントリーグレード):602万円
メルセデス・ベンツE300エクスクルーシブ:1126万円
BMW523iエクスクルーシブ:798万円
アコード、安い。ほど同価格だと
メルセデス・ベンツA200dセダン:571万円
BMW318i:574万円
なのだから、やはりアコードのコストパフォーマンスの高さが際立つ。
とにかく、新型アコードはDセグ以上セダンのベストバイだと言える。デザインが問題なければ(クドい!)ぜひぜひ、試して見てほしいモデルだ。
というわけで、アコード、大変気に入った。気に入ったまま自宅に戻ったのだが、我が狭小住宅の小さなガレージ(BMW320dがちょうどぴったり。アコードは330mmも長いのだ)では、アコードは大きすぎた。うーん。最小回転半径5.7mは、狭い道ではちょっと持て余す時がある(320dは5.4m)。アコードを楽々収められるガレージがほしい、と強く思った。それほど、アコード、気に入ったのである。
それにしても、こんないいクルマなのに、ホンダの月販目標台数は200台だという。目標、低すぎませんかね。
ホンダ・アコード e:HEV 全長×全幅×全高:4975mm×1860mm×1450mm ホイールベース:2830mm 車重:1580kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R マルチリンク式 駆動方式:FWD エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:LFD 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.9 最高出力:147ps(108kW)/6100rpm 最大トルク:182Nm/4500rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:48L モーター H6型交流同期モーター 最高出力:184ps(135kW)/5000-8000rpm 最大トルク:335Nm/0-2000rpm WLTCモード燃費:23.8km/L 市街地モード 20.5km/L 郊外モード 27.0km/L 高速道路モード 23.6km/L 車両価格:544万9400円