新型フリード、雪上の走りは? 4WDは? 新旧フリードの進化はどれほどか?

ホンダ新型フリードの正式デビューに先立って、2月の北海道で新型フリードのプロトタイプに試乗した。酷暑のなかの雪上試乗のレポートとなるが、来るべき冬に備えて、新型フリードのスノードライブレポートをお届けする。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:Honda

新型のe:HEV、先代のi-DCD

ホンダ・フリードe:HEV CROSSTAR 4WD
ボディ色はデザートベージュ・パール

新型ホンダ・フリードにはガソリン車(1.5L直4自然吸気エンジン+CVT)とハイブリッド車の設定があり、それぞれ2WD(FF)と4WDの設定がある。このうち、ハイブリッドのe:HEVと4WDの組み合わせをホンダは、圧倒的な燃費と進化した走りが味わえる組み合わせだと位置づける。

まずe:HEV(イーエイチイーブイ)のほうだが、先代フリードにもハイブリッドの設定はあった。だがシステムは異なっており、i-DCDと呼ぶ1モーターのハイブリッドシステムを搭載していた。マニュアルトランスミッション(MT)と同様の構造を持つ変速機にふたつのクラッチを加えて自動変速化した7速DCTと、アシストと発電を兼用する1モーターの組み合わせである。

i-DCDはMT譲りのダイレクト感が特徴だが、有段変速するのでエンジン回転数はステップ状に変動するし、クラッチを持つため、つないだり離したりする際にショックが出るのは避けられなかった。とくに、発進〜微低速〜停止を繰り返すような状況ではギクシャクした動きになりがちだった。

新型フリードのe:HEVはフィットやヴェゼルが搭載するシステムと基本的には同じで、モーター駆動による走行シーンが多く、走りはEVに近いハイブリッドシステムだ。走行用モーターとは別に発電用モーターを持つのが特徴で、i-DCDと異なり、ハイブリッドモードで走行中もタイヤを直接駆動するのは走行用モーターとなる。エンジンは発電用モーターを駆動し、発電した電力で走行用モーターを駆動して走る。

新型フリードe:HEV CORSSTAR(4WD)ハイブリッドシステムはe:HEV。以前の呼び名だとi-MMDである。
先代フリードHYBRID(4WD)ハイブリッドシステムは、i-DCDだ。

だから、走りはシームレス(継ぎ目がない)だ。エンジンを直結にしたほうが効率的(燃費がいい)な状況ではクラッチをつないでエンジン直結モードになるが、制御が上手なのでクラッチのオンオフに気づくことはまずないだろう。体感上は本当に、シームレスである。

左が新型フリードAIRガソリン車(FF)右が新型フリードe:HEV CROSSTAR(4WD)

新型の4WDシステムは格段に「頼もしい」

新型・先代ともに、リヤはモーター駆動ではなくプロペラシャフトを介して駆動力をリヤアクスルに伝える。
先代フリードの4WDもリアルタイムAWDと呼ぶシステムだ。先代はビスカスカップリング式だ。

4WDは、リアルタイムAWDと呼ぶシステムを適用している。プロペラシャフトでリヤに駆動力を伝え、リヤデフ前に搭載するカップリングユニット内でクラッチの押し付け力を制御することにより、状況に応じて前後の駆動力を適切に配分する。

システム自体は先代と同じだ。同じe:HEVを搭載するフィットの4WDはビスカスカップリング式なので、新型フリードのリアルタイムAWDはより能力の高いシステムを搭載していることになる。

低速から高速まで、しっかり後輪に駆動力を伝達するシステムという意味では、ビスカスカップリング式AWDも頼りになるシステムだ。ビスカス式に対するリアルタイムAWDの優位点は、より高い応答性でリヤに力強い駆動力を伝達できること。機構的にいえばビスカスカップリング式はパッシブで、リアルタイムAWDはアクティブ。ビスカス式は前輪のスリップを合図に後輪に駆動力が伝わるのに対し、リアルタイムAWDは常に四輪に最適な駆動力を配分する。そのぶん、頼もしいシステムだといえる。

新型フリードe:HEVの4WDはカップリングユニットを使う。

リアルタイムAWD自体も先代フリードが搭載していたシステムに対してアップデートされており、制御が進化。前後のトルク配分を制御する油圧は従来ステップ制御だったのに対しリニア制御とすることで、とくに雪道など低ミュー路でのコントロール性が向上。また、フィードフォワードだった従来制御に対して新型はフィードバック制御を加えることで、より安定した挙動に制御できるようになった。

まだある。新型フリードにリアルタイムAWDを適用するにあたっては、アジャイルハンドリングアシスト(AHA)を適用した。AHAはステアリング舵角や車速から車両の動きを予測し、コーナーの進入では必要に応じて内輪側の前輪に軽くブレーキをかけることで重心点まわりに内向きのヨーモーメントを発生させ、旋回をアシストする技術だ。リアルタイムAWDを適用しているのは先代と変わらないが、頼もしさと安心感は大きく進化している。

新型フリードe:HEVの4WDで登坂
先代フリードHYBRIDの4WDで登坂

その実力を雪上で試した。新型フリードのリアルタイムAWDは常時、力強い駆動力が四輪に伝わるので安心感が高いのが印象的だった。急な上り勾配の雪道での発進は4WDですら不安になる状況だが、フリードe:HEV×リアルタイムAWDは滑らずに苦もなく発進する。走り出しの姿勢も安定している。

ハンドリング路では乾燥した路面を走るのと変わらず「意のまま」だ。フリードと同クラスのクルマには、リヤにモーターを搭載することで4WDを実現したモデルがあるが、高車速域までカバーせず(システム上できず)、ある車速に達するとリヤのアシストが切れてしまう。

フリードのリアルタイムAWDは高車速域までカバーするので、高速道路での直進安定性や、より気を使う本線への流入時、および車線変更時も安心していられる。先代フリードは振動騒音面の制約から110km/h付近でリヤへの駆動力配分をやめていたのだが、高速道路の速度制限が緩和されて120km/h区間が設けられたのに合わせ、振動(共振)の問題を解決し、120km/h走行時でも4WDでの走行を可能にした。だから、日常使用領域は常に4WDと考えていい。

滑りやすい路面というと雪や氷が即座に思い浮かぶが、恩恵を受けるのは雪上だけとは限らない。オンロードでは旋回時や高速直進時の安定性がFFより高くなるため安心感につながるし、タイヤが空転しやすいオフロードでもリアルタムAWDは頼もしい味方になる。

上り勾配が目の前に立ちはだかっていないのでそうとは感じづらいが、オフロードでは小さな段差に見えても、タイヤ接地面に着目して斜度を換算してみると、相当な急勾配だったりする。滑りやすい砂地でほんのちょっとの段差でもスリップしてクリアできないのは、ミクロで見れば急勾配だからだ。そんなときも4WDなら難なく乗り越えられる(可能性が高い)。

新型フリードのクロスターは、アウトドアが似合うキャラクターがより際立ったバリエーションとなっており、エアーにも増してリアルタムAWDとの親和性が高そうだ(筆者の場合はエアーでも安心感を買う意味でリアルタイムAWDに気持ちがなびく)。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…