ピレリの新タイヤ『SCORPION™MS』は、SUV/クロスオーバーに最適。その走りを検証する

ピレリの新タイヤ『SCORPION MS(スコーピオン エムエス)』は最新のSUV/クロスオーバー向けに開発されたハイパフォーマンスタイヤだ。ウェット、静粛性、長寿命、低転がり抵抗というさまざま要素を高次元で融合させたうえで、快適なドライブ性能を実現した『SCORPION MS』をタイヤに精通したジャーナリスト、瀨在仁志が試した。
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

新世代SUV/クロスオーバー向けに開発

スコーピオンMSは、ウェット/ドライ、転がり抵抗、快適性/ノイズなどさまざまな相反する要素を高レベルに融合させている。

ピレリタイヤからSUV/クロスオーバー向けのハイパフォーマンスタイヤ『SCORPION MS』がラインアップされた。今、市場を賑わしているSUVやクロスオーバーモデルは、背が高く、路面を選ばないフットワークの良さが魅力。そんな多機能モデルだけに、走りに求められるのが、正確なハンドリングと安定感。そして、何よりも快適性だ。新車装着されているタイヤも、多角的に性能を検証してバランスの良いものが選ばれる。

しかし、しっかりとした走りを求めれば、タイヤは強くて丈夫な作りが必要となり、路面から受ける衝撃は避けられず、乗り心地は固く快適性は損なわれる。かといって音や振動ばかりにフォーカスしてしまうと、やわな乗り味となって走りの性能は犠牲になってしまう。

タイヤの性能は、求められる要素がいつも背反してしまうことから、最適解がなかなか見つからない。だからどの性能も『ほどほど』にまとめ上げられているのが今装着されているタイヤなのだ。

その煮え切らない総合性能に答えを出してくれたのが新世代SUV・クロスオーバーモデル用の『SCORPION MS』で、常に背反する性能である、走りと快適性能を両立させたところに、ハイパフォーマンスたる所以がある。

トヨタ・ハリアー×『SCORPION MS』で試す

スコーピオンMSは、トヨタ・ハリアー、RAV4、日産エクストレイル、マツダCX-5、スバル・フォレスターなど人気のSUV/クロスオーバーモデルに最適だ。

実際にNEWタイヤを装着したモデルに乗ってみるとその言葉の重みがよくわかる。試乗用に用意されたトヨタのハリアーは新骨格のボディに加えて、流れるような立体形状を持つスタイリングでもわかるとおり、新世代SUVとしての上質さが売り。走りと快適性を両立させている点は『SCORPION MS』と同じだ。タイヤの性能次第によっては、このクルマの持つ価値観を左右しかねない。

走り始めて気づくのは静粛性の高さだ。路面とタイヤは常に高い密着性を持っているから、路面から受ける衝撃で、直接路面に触れるトレッド面に起因するノイズはもとより、タイヤ側面の変形などにも影響を受ける。外部からショックを受ければタイヤ内部の空気だって圧迫されて、太鼓が音を発するのと同様に、振動によって共鳴する音も発生してしまう。

『SCORPION MS』はそんな外部からの衝撃を可能な限り低減させるために、タイヤ骨格のベースとなるカーカスを一般的な2層から1層構造とした。その繊維素材には長い研究から生まれた密度の高いものを採用。結果タイヤは軽くてしなやかさを生み、構造が元となる衝撃音を緩和。路面変化によって衝撃を受ければ当然のことながらタイヤは変形して音は発生するが、反発力が小さいことで音の質がスッキリとし、音圧自体も小さくて耳に届きづらい。

内部構造は革新的な高剛性カーカスのモノプライ。

また、ピレリ自慢のバーチャルシュミレーション技術によって生まれた可変ピッチ配列のトレッドパターンは、溝の角度や深さを変化させることで、空気が圧縮される際に生まれる音の発生を最小限にとどめているという。確かに、速度を上げていっても音の変化が少なく、街乗りでの静粛性の高さが、そのまま高速域まで続く。

もっとも軽量化されたことによって、構造的にシンプルで肉厚が薄いためか、タイヤ内部で吸収されるはずの、やや高周波寄りの音は見受けられた。エンジン音や風切り音でかき消されてしまうものの、音質といった面では重量級タイヤの低周波寄りのものとは異なり、新しい乗り味のひとつである。

走りのフィーリングはどう変わるか?

走りに関してもこの軽さが生きている。新車装着タイヤは安定感を求めるあまりに、手応えばかりが重くて動きの鈍さが感じられるもの多いが、『SCORPION MS』は動き出しが正確な上に操舵フィールが重すぎない。切り始めからしっかりと反応している上に、大きく動きすぎることがないから操作に対して常に正確。スッキリとした操舵フィールが味わえる。

高速域になるほどセンター付近の締まり感は出てきて、手応えも相応に重くなってくることから、ハンドル操作に無駄な神経を使う必要がなく、ロングドライブになるほどその恩恵を受けられる。

コーナーでは追い込んでいくほどにノーズは気持ちよく入っていってくれるし、リヤの追従性も良く、旋回姿勢は粘り強く安定感が高い。なかでも接地感が常に落ち着いていて、ボディの揺り返しが少ないのがいい。ひと言で言うならタイヤが頑張りすぎず、クルマの動きを最大限に引き出してくれる。したがって、背の高さや重さを事前に察知することができて、限界付近でドライバーが操作に戸惑うことがない。タイヤはサスペンションのサポート役に徹してくれているのだ。

だから、タイヤのグリップ感やGの高さと言った数値目標と異なり、ドライバーやクルマ次第でいかようにも対応してくれる。路面の変化に強いこともあるから、この接地感ならきっと雨などの環境変化にも不安になることは無いだろう。

ピレリの研究開発部門は、ポリマーと特殊樹脂の新配合によってグリップ性とウェット&ドライブレーキング性能を向上させた。またサイプを最適化し、さまざまなコンディションにおけるパフォーマンスを向上させた。

ハンドリング性能は素直で、頑張りすぎない。結果、誰でもどこでも安心して走ることができる。あまた走るSUVやクロスオーバーモデルは重量もサイズもさまざま、走る環境も多岐にわたる。そんな、マルチパーパスなクルマにとって、この『SCORPION MS』ならさまざまな乗り味や乗り手に柔軟に対応してくれる。

しなやかさゆえにノイズばかりではなく、乗り心地もマイルドで、快適性も高い。今履いているタのイヤが固くて、重い。その上動きが鈍く感じられたら、きっとこのタイヤがちょうどいい。『SCORPION MS』はクルマとドライバーから多くの期待に応えてくれるに違いない。 

モールドの形状を最適化することで接地圧を均一にし、偏摩耗を抑制。長寿命を実現している。サイドウォールには、シャープなロゴマークが。

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「ピレリの新タイヤ『SCORPION™MS』は、SUV/クロスオーバーに最適。その走りを検証する」の1枚めの画像
高速道路での走行でも静粛性の高さを確認できた。

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装着サイズは、225/65R17

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タイヤ評価に定評のあるジャーナリスト、瀨在仁志氏

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発売サイズは17〜22インチの28サイズ

SCORPION MS サイズ一覧

※elt = Electテクノロジー搭載  (MGT1) = マセラティ技術承認タイヤ 

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…