ホイールが“しなる”という逆転の発想!モデューロ・ホイール今昔物語【後編】「Modulo 30th Anniversary」

モデューロ・ホイールの違いを日常で感じるため、試乗ステージはあえて都内の一般道を選んだ。
2024年に生誕30周年を迎えたホンダアクセスの「Modulo(モデューロ)」ブランド。幅広いチャレンジをカタチにしてきた同ブランドだが、その中心となっているのは、いつの時代もアルミホイールだ。ここでは、ホイール剛性バランスを最適化した”しなり”思想によって生み出されたアルミホイールを公道試乗。モデューロの狙う走りについて考察してみたい。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

ホイールもサスペンションもブレーキも!モデューロで全身カスタマイズしたS660

モデューロのアイテムでカスタマイズしたS660とヴェゼルを乗り換えながら試乗した。

前編でお伝えしたように、ホンダアクセスが生み出すモデューロのアルミホイールには独自の設計思想が込められている。開発担当者の弁を借りれば、「ホイールの剛性バランスを最適化することでタイヤ接地感を高めるというものであり、サスペンションの一部として機能させるホイール」となっている。しかも、ホンダアクセスというホンダ車の純正アクセサリーを開発する立場であれば、車種専用設計が可能となる。

不変のこだわりと最新の走りを知る!モデューロ・ホイール今昔物語【前編】「Modulo 30th Anniversary」

ホンダアクセスが生み出してきたホンダ車専用の純正アクセサリーホイールに初めて「Modulo(モデューロ)」というブランド名が与えられたのは1994年。つまり、2024年はモデューロにとって30周年、節目の年となっている。はたして、モデューロの誕生にはどのような意思が込められていたのか、最初のモデューロ・ホイールに関わった当時のエンジニアとデザイナーに話を伺った。そして現在のモデューロ・ホイールに通じる「こだわり」があったことが確認できた。 REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

外側のディスク面ではなく、内側部分のリム形状をコンマ数ミリ単位で厚さを調整して、ホイールに“しなり”を与えるよう剛性バランスを最適化している。車種専用設計だから可能となる繊細な形状だ。

というわけで、最初に乗り込んだのはモデューロのアイテムをふんだんに装着したS660だ。フットワーク系でいっても、アルミホイール「MR-R01」に加えて、サスペンションやディスクローター、スポーツブレーキパッドといったパーツが装備されている。さらに、外観からもわかるように前後バンパーやアクティブスポイラーなど空力にも配慮した一台である。

S660専用ホイール「MR-R01」はフロント用15インチ、リヤ用16インチとなる。(販売終了品)

首都高速を走り、都心に向かっているときから感じていたのは、”しなり”というキーワードの先入観をなくす必要性だ。モデューロのアルミホイールは剛性コントロールして、ホイール全体をしならせることでタイヤの性能を引き出す…という設計思想はあるが、その大前提として4つのタイヤの性能を引き出すという狙いがある。

そして、S660はアドバン・ネオバという市販タイヤとしてはかなりハイグリップな銘柄を標準装着している。つまりネオバのグリップにバランスした剛性を持つホイールとして「MR-R01」は設計されているといえる。しかも、前述したように試乗したS660にはモデューロのサスペンションやエアロパーツが備わっている。さらなるスポーティな走りを可能にしているのだ。

モデューロのカスタマイズとしてサスペンションやアクティブスポイラーも装着される。(販売終了品)

そのためホイールはしなっているというよりも、タイヤをしっかり張りつつ、グリップにふさわしい剛性感を全体として表現する仕上がりとなっている。ネオバのアグレッシブなトレッド面が、常に路面を捉えているという感触が伝わってくるため、微妙なステアリング操作で挙動は変わっていく。

しかしながら、ヘンな緊張感はない。このあたりの絶妙な味付けは「MR-R01」ホイールのしなり思想によるものだろう。S660というマイクロスポーツカーのキャラクターにマッチした剛性感のある走りを存分に味わうことができた。

フロントフェイスキットやリアエアロバンパー、ドリルドタイプのディスクローター、スポーツブレーキパッドも装着されていた。(販売終了品)
タイヤが常に路面を捉えているという感触があるため、速度を上げても安心感が消えることがない。
ホンダ・S660 純正アクセサリー装着車

ホイール交換によりコツコツ感が消えたヴェゼル。接地面積が増えた感触もあり

「Sport Style」と名付けられたスタイリングパーツを装着したヴェゼル。都心で佇む姿も似合う。

車種専用に剛性バランスを最適化することにより、適切な”しなり”を手に入れたホンダアクセスのモデューロ・ホイール。その最新作がヴェゼル用の「MS-050」である。最新は最良といえるわけで、その走りにはより注目したい。

ヴェゼル専用に開発されたアルミホイール「MS-050」の価格は4万6838円/本。写真のブラッククロームのセンターキャップは4個セットで1万7600円。

ちなみに、ヴェゼルについては足回りで変更されているのはアルミホイールのみ。サスペンションは標準状態であるし、装着されているタイヤもラインオフ時につけられているものだ。はたして、アルミホイール「MS-050」による走りの違いは体感できるのだろうか。

さて、今回試乗したのはハイブリッドのFF車で18インチタイヤを履く上級グレード。ヴェゼルのFF車は先日のマイナーチェンジ時に欧州風味のサスペンションに進化している。たしかにハンドリングのスポーティ度は増しているが、コツコツ感が出てしまった部分もある。クーペSUVのスポーティグレードとして十分に良い乗り心地ではあるが、このMS-050がもたらす乗り味を知ってしまったら、もう後戻りできないだろう。

真っ直ぐ走っているときの走りはマイルド。いい意味で入力をいなしてくれる。

そんなコツコツ感は、「MS-050」を履いたことでかなりマイルドになっている。真っ直ぐに走っているときであっても、モデューロ・アルミホイールの効果がこれほど感じられるというのは驚きだ。ドッシリとしたステアフィールと、路面への当たりの滑らかさが感じられ、さらにワンランク上のクルマに乗っている感覚がある。

市街地速度のコーナリング、交差点を曲がるときでもハンドリングの進化を感じることができるだろう。

もちろん、ハンドリング面でのポジティブな効果も実感できる。それも、わざわざワインディングに足を伸ばす必要はない。市街地で、ゆっくり走っているときでもハンドリングの精度が高くなっていることは、多くのドライバーが体感できるのではないだろうか。

ホイールサイズは18×7 1/2J PCV114.3mm インセット55mm。装着タイヤはブリヂストン・アレンザだった。

さらにホイールの剛性コントロールによりタイヤの実質的な接地面が増えている感触もある。こうした変化を実感しやすいのは高速道路をホンダセンシングを活用して走っているとき。グリップを引き出しているためか、うねりや轍のある路面状態でもその影響を受けづらく、それがLKAS(車線中央維持アシスト機能)による安定性をさらに高めている。

テールゲートスポイラー(5万5000円)やエキパイフィニッシャ(9900円)など、さりげないアピアランスチューンも魅力。

タイヤの性能を引き出すことがシャシーセッティングの基本であることは言うまでもないだろう。その意味でたしかにヴェゼル用「MS-050」ホイールは、開発の狙い通りにサスペンションの一部として機能していることが確認できた。

ベルリナブラックとクロームメッキのフロントグリルは4万1250円。ブラッククロームのエンブレムは1万1550円で用意される。
ヴェゼルとS660、車両により異なるキャラクターに合わせた剛性感に仕上がっていることが確認できた。
ホンダ・ヴェゼル

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モデューロ・ホイールの違いを日常で感じるため、試乗ステージはあえて都内の一般道を選んだ。

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モデューロのアイテムでカスタマイズしたS660とヴェゼルを乗り換えながら試乗した。

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「Sport Style」と名付けられたボディキットを装着したヴェゼル。都心で佇む姿も似合う。

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テールゲートスポイラー(5万5000円)やエキパイフィニッシャ(9900円)など、さりげないアピアランスチューンも魅力。

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ベルリナブラックとクロームメッキのフロントグリルは4万1250円。ブラッククロームのエンブレムは1万1550円で用意される。

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市街地速度のコーナリング、交差点を曲がるときでもハンドリングの進化を感じることができるだろう。

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ホイールサイズは18×7 1/2J PCV114.3mm インセット55mm。装着タイヤはブリヂストン・アレンザだった。

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ヴェゼル専用に開発されたアルミホイール「MS-050」の価格は4万6838円/本。センターキャップは4個セットで1万648円。

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ヴェゼルとS660、車両により異なるキャラクターに合わせた剛性感に仕上がっていることが確認できた。

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真っ直ぐ走っているときの走りはマイルド。いい意味で入力をいなしてくれる。

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モデューロのカスタマイズとしてサスペンション(1台分14万800円)やアクティブスポイラー(16万5000円)も装着される。

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S660専用ホイール「MR-R01」はフロント用15インチ(3万6300円/本)、リヤ用16インチ(3万8500円/本)となる。

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フロントフェイスキット(11万3300円)やリアエアロバンパー(8万9100円)、ドリルドタイプのディスクローター(6万6000円)、スポーツブレーキパッド(3万8500円)も装着されていた。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…