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“Z”の人気と名声の一端はサファリラリーにあり
近年、海外でも1970年代から1980年代の日本車が再評価されて人気を博している。なかでも日産フェアレディZは新車当時から北米を中心に多くの台数が輸出され、全世界で52万台以上が販売されていた。そのため多くの個体が現存し、今でもチューニングベース車両としても楽しまれている。
フェアレディZの成功は北米での販売に尽力した、当時の北米日産社長である片山豊氏の功績が大きいのは周知の通りだが、フェアレディZが世界にその性能を知らしめたのはサファリラリーでの活躍も大きいだろう。
オープンスポーツからグランドツーリングカーへ
1969年10月、それまでオープンボディだったフェアレディをフルモデルチェンジする形でフェアレディZが誕生した。
軽量で軽快なオープンボディのスポーツカーから、快適で高速なグランドツアラーに変化した。ラダーフレームから高剛性のモノコックボディに進化し、エンジンもフェアレディ2000の4気筒SOHCから新開発の6気筒SOHCのL20型に変更し、先行して発売された日本国内仕様では2.0Lのみのラインナップとした。
また、スカイラインGT-Rに採用されているS20型エンジンを搭載する「Z432」もラインナップされた。翌1970年には海外への輸出が開始される。この輸出仕様には排気量を2393ccへと拡大したL24型が搭載され、ダットサン240Zの名が与えられた。この240Zがラリーフィールドで活躍することになる。
サファリラリーを連覇して”ラリーの日産”として名声を高める
1958年、モービルガストライアル・オーストラリアラリーにダットサン210型で挑んだのが日産の海外ラリー活動の始まり。その後も310型、410型ブルーバードを経て、1968年からはフルーバード510型を投入。1969年のサファリラリーではクラス優勝(総合3位)、1970年には悲願の総合優勝を果たし、日産自動車の技術力の高さを世界へアピールすることに成功した。
1971年、ブルーバード510に代わり、ラリーカーとして採用されたのが240Zだった。510型に比べるとボディは大きく重く、エンジンの気筒数も多くて排気量の大きな240Zは、当初は重戦車などと揶揄されることもあったが、1月に開催されたモンテカルロラリーでは5位に入賞。当時のモンテカルロはポルシェ911やアルピーヌA110などのRR車が有利と言われ、FR車での5位入賞は大健闘であった。
3月に開催されたサファリラリーには4台の240Zを投入。フォード・エスコートやポルシェ911といったライバルたちを抑え、総合1位、2位を獲得し、鮮烈なデビューとなった。翌1972年はモンテカルロで3位を獲得するも、サファリラリーではタイヤトラブルに見舞われて最高5位に終わる。
1973年からは世界ラリー選手権=WRCがスタート。初戦のモンテカルロでは最高9位だったが、サファリラリーでは総合優勝を獲得し、”WRC”日本車の初優勝という記録も獲得した。この年は240Zからダットサン1800SSS(610型ブルーバードU)へ切り替えられる予定であったが、パワーアップしたライバルのフォードに勝つために、1800SSSと240Zを併用する形をとった。ちなみに1800SSSも2位という結果を残している。
1974年もサファリラリーには出場し、260Zを投入しているが、オイルショックの影響からワークス体制ではなく、ディーラーチームをサポートするという形をとった。結果は4位、5位に入賞したものの、この年を最後に240Z(260Z)は最前線を退くこととなる。
貴重な二桁ナンバー車をレストア&レプリカ化
イベントで見かけた村井さんのフェアレディZは、当時のラリーカーをモチーフにしたドレスアップ。フェアレディZは当時のラリーシーンで偉大な記録を残しているのに対し、今ではその印象は薄くなってしまっている。若い世代の方々はラリーで活躍していたことすら知らない人もいるだろう。
フェアレディZはドラッグレースや公道レースをモチーフにしたドレスアップやチューニングカーが多い中、ラリー仕様に仕上げているのは珍しくなった。
村井さんがこのフェアレディZを手に入れたのは今から24年前。当初は510ブルーバードをベースにラリー仕様を作ろうと計画していたが、このZが自分の元にやってきたため、これを当時のラリー仕様にモデファイすることを決意。
購入当初は錆だらけでまずはレストアに時間をかけた。エンジンはレース車両を手がけていたエンジニアに組んでもらったもので、260Zのブロックをベースに2.7Lにボアアップ。インジェクションはアメリカ製でヘリコプター用を改造して組み込んでいる。インジェクターはR32GTR用を使用し、点火系はフルトラを装着している。
実際にこの車両で競技にも参加していたので、2度の大きなクラッシュを経験。純正ボンネットが手に入らないのが今の悩みだとか。