個性を明確化し選択肢を充実させた人気モデル「ホンダ・フィット」【最新コンパクトカー 車種別解説 HONDA FIT】

2つのパワートレイン・10のグレードを展開している「ホンダ・フィット」。初代の登場からコンパクトカーの定番中の定番として存在し、現行の4代目も実用性も走行性能も高いレベルを誇る。それぞれのグレードが個性を発揮しているが、その中でも新たなグレード「RS」はスポーティなエクスエリアと爽快な操縦性は注目だ。
REPORT:岡本幸一郎(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:新 唯

内外装の質感はクラストップ スポーティなRSは走りも◎

かつては年間販売台数が20万台を超えるのも珍しくないほどで上位の常連だったのに、このところ5〜6万台程度にとどまっているのが不思議でしょうがない。

エクステリア

撮影車の「RS」ほか、SUVテイストの「CROSSTAR」、上質志向の「LUXE」は、それぞれ個性的なエクステリアや専用16インチアルミホイールでキャラクターを明確にしている。最小回転半径は5.2m。

新たに2モーターのe:HEVを搭載し、2020年2月に登場した4代目フィットは、車内の広さや実用性の高さに加えて、走りの洗練度や内外装の質感などコンパクトカーとしての実力で競合するライバルをずっと凌いでいるからだ。22年10月のマイナーチェンジで見た目も走りもテコ入れされ、各タイプそれぞれのデザインの個性をより際立たせるとともに、従来の「NESS」に替えてスポーティな「RS」がラインナップされた。

乗降性

外観は初期型に比べてフロントまわりがスッキリとしている。「RS」ではフロントグリル、前後バンパー、サイドシルガーニッシュ、アルミホイール、リヤスポイラー、エキゾーストフィニッシャーなどが専用品だ。インテリアはグレーを基調にイエローステッチのアクセントがあしらわれている。滑らかで上質な肌触りのウルトラスエードを用いたフロントシートの座り心地も良い。走りについて、e:HEVの全車でトラクションモーターの出力が当初比で10kW、発電用エンジンの出力が同8kW、それぞれ引き上げられた。

インストルメントパネル

メーカーオプションのコネクテッドナビと7インチフル液晶メーターのコンビネーションが未来的な雰囲気を醸し出す。ダッシュボードはフラットで広く、視界を遮る印象はないが、ノーズ位置を把握しづらいのは残念。

さらに、シフトアップの変速ポイントを高めてより気持ちの良い吹け上がりを実現するとともに、エネルギーマネジメントの制御ロジックを最適化したという。これらにより線の細かった初期型と比べてアクセルレスポンスが向上し、明らかにパワフルになっている。「RS」は専用サスペンションを装備。その足まわりとベストマッチするよう、e:HEVの「RS」ではアクセルレスポンスや加速の特性が独自にセッティングされている。これにより基本的にはモーター駆動が主体のe:HEVながら、まるでエンジンで駆動しているかのような、サウンドと同期した気持ちの良い加速フィールが味わえる。

居住性

また、エンジン回転数の上昇が速まり小気味良く走れるスポーツモードを備えたドライブモードスイッチや、ステアリングホイールのパドルで4段階の強さを調整できる減速セレクターが設けられているのも、e:HEVの「RS」のみの特権だ。一方、当初の1.3ℓから1.5ℓに排気量を拡大したガソリン車は、CVTの制御の見直しも効いて、内燃エンジンらしい伸びやかな加速フィールを味わえる。このクラスでは3気筒が増えているところ、4気筒のエンジンを積んでいるのもフィットならではの特徴のひとつで、回しても安っぽい感じがしないのもポイントが高い。

うれしい装備

助手席前のリッド付きインパネアッパーボックスは、財布やスマートフォンなどを収めたポーチなどが入れられる利な収納スペース。ウエットティッシュをしまっておく定位置としても便利そうだ。
月間販売台数    5258台(23年11月~24年4月平均値)
現行型発表     20年2月(マイナーチェンジ 22年10月)
WLTCモード燃費   30.2 ㎞/ℓ※「e:HEV BASIC」のFF車

ラゲッジルーム

足まわりの印象も他のコンパクトカーと一線を画するほど乗り心地が快適で、動きも落ち着いている。ロールを適度に抑えた「RS」の意のままに操れるオン・ザ・レール感覚のハンドリングも気持ちが良い。23年末には「HOME」をベースに内外装の各部に黒のアクセントを象徴的に配した特別仕様車「BLACK STYLE」が発売された。販売比率は高くないがクロスターのような選択肢もあり、ラインナップの充実ぶりもフィットの強みだ。

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