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エンジンの吹け上がりは格別 新設8速ATの走りも要注目
GRヤリスは基本骨格の一部をヤリスと共有するものの、まったく別物といっていいスポーツモデルだ。3ドアというボディ形式からして専用だし、ふくらんだボンネットにオーバーフェンダー、低いルーフもGRだけの特権である。GRヤリスはそこに300㎰超、400超(改良前は272㎰、370Nm)を絞り出す1.6ℓ3気筒ターボを搭載。FFベースながら最大で30対70という後輪寄りの駆動配分も可能とした4WDを組み合わせている。
エクステリア
GRヤリスはもともと、世界ラリー選手権(WRC)の「WRカー」規定用ホモロゲーションモデルとして開発がスタートした。しかし、新型コロナ禍の影響で、WRCマシンの開発は難航。結局はこのクルマを直接的なベースとしたワークスカーがWRCを走ることはなかった。いずれにせよ、コンパクトなBセグメントサイズでここまで凝った内容のスポーツモデルは、今や世界的にもほとんど存在しない。また、WRCホモロゲモデルという役割は厳密には果たせなかったGRヤリスだが、全日本ラリーやスーパー耐久などでは発売直後から大活躍だ。
乗降性
その走りは快活そのもの。通常のヤリスからドア枚数を減らしたボディの剛性感は素晴らしい。7000rpmまで駆け上がるように吹け上がる3気筒ターボの雄たけびは3気筒であることを忘れさせるハイトーンだ。4WDを回頭性重視のモードを選べば面白いように曲がりまくる。感心するのはフットワークが意外なほどしなやかなことで、たっぷりとしたストローク感で、路面感覚や荷重移動の様子が手に取るようにわかる。ラリーを想定したクルマだからか、アマチュアドライバーが一般の山道で走らせても、十分に溜飲を下げられるのがうれしい。
インストルメントパネル
そんなGRヤリスは実戦での「壊しては直す、壊しては改善する」を繰り返したノウハウを結集して、この春に大幅改良を実施。標準のヤリスもほぼ同時期に一部改良を受けたが、GRの改良はそれとまったくといっていいほど無関係なのが面白い。改良内容はマニアック極まる。最大のトピックは実戦で開発されたスポーツ8速AT(従来は6速MTのみ)が追加されたこと。それ以外でも外観の変更はすべて冷却性能や修繕性の向上などを意図したものだし、インテリアではシートポジションを25㎜低めた上に、4〜6点式ハーネスで身体を締め上げられても全操作系に手が届くようにインパネは湾曲したGRヤリス専用のものに、ごっそりと交換されているのだ!
居住性
走行メカもエンジン性能アップやボディ強化など、あらゆるパートに手が入っており、その走りはさらにパンチが増している。注目の8速ATはまさに目からうろこ。Dレンジのままでもエンジンの美味しいところを上手く引き出してくれるし、パドルによるマニュアル変速でもステアリング操作に集中できるぶん、開発テストでも、大半のドライバーがダートとサーキットの両方で6速MTよりタイムアップしたのだという。
うれしい装備
月間販売台数 88台(23年11月~24年4月平均値)
現行型発表 20年9月(改良 24年3月)
WLTCモード燃費 12.4 ㎞/ℓ※6速MT車
ラゲッジルーム
超マニアックな改良の数々に加えて、「MTよりスポーティなAT」が登場したことで、この日本一マニアックなコンパクトスポーツの門戸は、さらに広がったといえる。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.159「2024-2025 コンパクトカーのすべて」の再構成です。