PSAの最新のプラットフォームは
B/Cセグメント用がCMP
C/Dセグメント用がEMP2である。
だから最新の208はCMPベース、モデルチェンジしたばかりの新型308はEMP2ベースです。
と書いたのは、21年1月にフェイスリフトを受けてマイナーチェンジを果たしたシトロエンC3のプラットフォームが、上記ふたつの、モジュラープラットフォームではないことを説明するためだ。C3のプラットフォームはPF1(プラットフォーム1)と呼ばれるもので、登場は2002年の初代C3(その前のプジョー206もPF1を一部使っている)だからもう20年選手の古いものだ。
プラットフォームが古いとダメか、といえばそんなことはなくて、現行C3は2016年末のグローバルでの発売以来、累計80万台を超える大ヒットとなっている。日本でも20年12月末日現在で7625台も売れているのだ。
2021年も欧州では売れ行きに陰りはなく、1-11月で14万4859台も売れている。ちなみに、シトロエンブランドでもっとも売れているのがC3なのだ。
「コンピューターのOSと畳は新しい方がいい」派の筆者としては、クルマのプラットフォームも新しい方がいい、と思っていることを否定しない。でも、なかには例外があって、その例外の代表格がこのシトロエンC3なのだ。
マイナーチェンジ前のC3も長距離ドライブをさせてもらって、その良さを実感している。どこかが飛び抜けているわけではないのに、全体として心地よい、「クルマってこういう感じだよなぁ」と思わせてくれる魅力がC3にはある。
そのC3のマイナーチェンジ版に試乗した。
まずは見た目。これは好みによるが、もしかしたらMC前の、よりほんわかした顔つきの方が好きな人が多いかもしれない。新型は少しワイド感が強まり、強そうな、シャープな印象に変わった(もちろん、それが意図なのだから、変わったではなく、変えた、ということなんだろう)。
借り出したのは、C3の上級グレードのSHINE(エメラルド内装)だ。価格は268万7000円。
一般道を少し走って高速道路に乗る。80km/hで6速、90km/hで6速、100km/hで6速。
あれれ? なかなか7速、8速に入らない! と思ったのだが、そうだった、C3のトランスミッションは6速ATだったのだった。最近のPSAはほとんどのモデルがアイシン製8速ATを使っているから、勘違いをしてしまった。
時代も変われば変わるものだ。ふた昔前のプジョー/シトロエンといえば、AL4型の4速AT、ひと昔前は5速オートメ―テッドMTと、トランスミッションでだいぶ損をしていたのだが、いまや「えっ、6速ATなの? 8速じゃないの?」と思われるほど。
6速ATに不満はまったくない。
各巡航速度でのエンジン回転数はメーター読みで
100km/h(6速) 2100rpm
110km/h〔6速)2270rpm
120km/h(6速)2530rpm
ほどだ。
昨今の多段化されたトランスミッションを搭載するモデルと比較すると若干高めではあるが、実用上まったく問題ない。うるさくもない。
エンジンは、現在のPSAの主力ユニットであるEB2 PureTech1.2ℓ直3DOHCターボだ。このエンジンは、3気筒のネガを感じさせずに気持ちよく回るのが身上だ。プジョー208や2008に乗ったEB2 PureTechエンジンは、とにかくシャープでシューンと回るのに対して、C3のエンジンは、若干ゆったり、のんびりした印象だ。エンジン回転数はより高いわけだから、そう思わせるのは、クルマ全体の印象によるところが大きい。
今回のフェイスリフトは、外観のお化粧直しがメインだが、本当のハイライトは、エメラルド内装仕様が採用したアドバンストコンフォートシートだと言っていい。生地裏のフォームのボリュームも従来の2mmから15mmへと大幅にアップしたことで、しっとりふっかりとした比類ない柔らかさを実現している。これは、座ってすぐにわかるほど先代モデルとは違う。今回は長距離を走れなかったが、きっとロングドライブではその差をもっと感じることになるだろう。とはいえ、これまでのシートが悪かったわけではまったくない。それは、MC前のC3で長距離(1200km以上)を走った経験があるから、断言できる。
それでも、今回の新しいシートはグッとよくなっていた。エメラルド内装仕様のみがこのシートになるということだが、少なくとも上級のSHINEグレードには標準にしてほしい。
スタンダード内装とエメラルド内装の価格差は2万円だから、これはもう絶対エメラルド内装にした方がいい。
今回の試乗は100kmほどしか走れなかったから、燃費もあまりはアテにならないが、一応報告しておくと
107km走って13.3km/ℓだった(平均速度は31.1km/h)
だった。
試乗車はおろしたての新車でオドメーターはまだ1000kmほどだった。プジョー/シトロエン車の常として、もう少し走り込むと燃費も乗り心地も大きく改善されることが多い。乗り心地は、新車の段階でも充分以上に快適。ゆったりロールを許容する乗り味は、先進運転支援技術花盛りの現代では貴重なものかもしれない。
久しぶりにC3に乗ったが、相変わらずいいクルマだった。ただし、前回試乗した(2017年初夏)のときは、プラットフォームの古さは感じなかったけれど、今回はかすかに感じた。それほど、コンパクトカークラスの進化が急だということだろう。シトロエンC3の乗り味、佇まいは、おそらくもう少ししたら消えてしまう類いのものかもしれない。そう思えば、なかなか愛おしくなるコンパクト・シトロエンなのである。
シトロエンC3 SHINE 全長×全幅×全高:3995mm×1750mm×1495mm ホイールベース:2535mm 車重:1160kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列3気筒DOHCターボ 型式:EB2 PureTech 排気量:1199cc ボア×ストローク:75.0mm×90.5 mm 圧縮比:10.5 最高出力:110ps(81kW)/5500pm 最大トルク:205Nm/1750rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:47ℓ 燃費:WLTCモード 17.2km/ℓ 市街地モード13.3km/ℓ 郊外モード:17.5km/ℓ 高速道路:19.5km/ℓ トランスミッション:6速AT 車両本体価格:268万7000円 試乗車はオプション(タッチスクリーン専用ナビ+ETCユニット25万3000円/メタリックペイント4万9500円)装着車