新生・クラウンエステートを機に、58点の写真で振り返る、過去クラウンの脇役たち

3月11日にクラウンエステートが発表・発売された。
車名を聞いて、1999年のクラウンエステートを思い出すひともいるだろう。
本稿では、同じクラウンエステートの1999年版と2025年版を並べると同時に、
過去70年の間、本流クラウンを支えてきたワゴン/バン型ボディのクラウンを眺めていく。

TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:トヨタ自動車/モーターファン・アーカイブ

一目瞭然・同じクラウンエステートでもこんなにちがう

いま売られているクラウンは、「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」と、「クラウン」を冠しながら、まったく異なる3つの道を歩んでいる。これが過去クラウンと大きく性格を異にするところだ。

先発は2022年7月の「クラウンクロスオーバー」。このとき後に続く3車型を予告し、クロスオーバーはその年の秋に発売された。

クラウンクロスオーバー。

約1年経って次に発進したのは「クラウンスポーツ」で、発表は2023年10月だった。

クラウンスポーツ。

3番手は「クラウンセダン」が追い、スポーツのすぐ後の2023年11月に発売された。いままでだったらこの「セダン」が最初に発表されたのだろうが、これをシリーズ3番目に持ってきたところに、トヨタがクラウンのポジショニングを刷新しようとしていたことがうかがえる。「クラウンとていつまでもセダンを主軸にしているわけにはいかなくなったのよ」というわけだ。

クラウンセダン。

そしてシリーズしんがりでこの3月13日に発表・発売されたのが、今回主役の「クラウンエステート」である。
クラウンスポーツの時点で、クラウンエステートは2023年度内の発売とアナウンスされていたが、半導体不足に認証不正問題が響いた結果、約1年遅れの発売と相成った。

クラウンエステート。

それにしても、クラウンセダンはFR、他の3つは4WDだが、ベースはFF。車型ごとにコンセプトを変えたクルマには3代めシビックがあるし、同世代で駆動輪を前輪と後輪、両方を持ったクルマには昔のルーチェ、エルフに前例があるが、これらの例を併せながらシリーズ完結に2年半かけた例は見当たらない・・・とにかくこのクラウンエステートですべてが出揃った。

クラウンエステートのネーミングは、何も今回が初めてではない。1999年12月に発売された「ラージクラスの新型最高級ステーションワゴン」と銘打って、11代めクラウンのシリーズに追加発売された「クラウンエステート」がある。
次の12代めとなるゼロクラウン以降も継続されたが、ステーションワゴン市場の縮小で2007年6月に販売を終了している。

11代めクラウンの発売から3か月後に追加発売されたクラウンエステート(1999年12月)。

本記事テーマは新旧比較をというのだが、従来型はステーションワゴン、今回のクルマは、いま流行のSUVの姿をしており、事実、当のトヨタですらホームページのラインアップには「SUV」の項にカテゴライズしている。クリックすればカローラツーリングやカローラフィールダーが待つ「ワゴン」に置かれていない。要するに今回のクラウンエステートは、17年半途絶えていたこともあり、同じクラウンエステートを名乗ってはいてもクルマとしてのつながりは一切なく、比較は意味がないのだ。

ここは新型・旧型の「新旧」ではなく、「新生クラウンエステート」と「旧来クラウンエステート」と捉えてごらんいただきたい。

クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート アスリートV(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート アスリートV(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート アスリート(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート 3.0ロイヤルサルーン(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート アスリートG(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート アスリートV計器盤。もちろん見てくれはクラウンと同じ。(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート アスリートV内装(1999年12月)。
クラウンエステート(2025年3月)。
クラウンエステート(1999年12月)。

ここで1999年版クラウンエステートの代表機種のスペックを載せておく。

【スペック】

トヨタ クラウンエステート 3000 D-4 ロイヤルサルーン(GH-JZS175W型・1999(平成11)年・5Super ECT)

●全長×全幅×全高:4835×1765×1510mm ●ホイールベース:2780mm ●トレッド前/後:1495/1475mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:1650kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.3m ●燃費:11.4km/L(10・15モード燃費) ●タイヤサイズ:205/65R15 ●エンジン:2JZ-FSE型・水冷直列6気筒DOHC ●総排気量:2997cc ●圧縮比:11.3 ●最高出力:220ps/5600rpm ●最大トルク:30.0kgm/3600rpm ●燃料供給装置:D-4(筒内直接燃料噴射) ●燃料タンク容量:70L(無鉛プレミアム) ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:391万円(当時・消費税抜き)

トヨタ クラウンエステート 2500EFIターボ アスリートV(GH-JZS171W型・1999(平成11)年・ECT-iE)

●全長×全幅×全高:4835×1765×1510mm ●ホイールベース:2780mm ●トレッド前/後:1495/1470mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1680kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.3m ●燃費:9.2km/L(10・15モード燃費) ●タイヤサイズ:205/55R16 ●エンジン:1JZ-GTE型・水冷直列6気筒DOHC ●総排気量:2491cc ●圧縮比:9.0 ●最高出力:280ps/6200rpm ●最大トルク:38.5kgm/2400rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:70L(無鉛プレミアム) ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:388万円(当時・消費税抜き)

このボディ形は「ステーションワゴン(駅馬車)」と呼ばれるのが一般的だが、それとは別に、このクルマのように「エステート」と呼ぶ場合もある。
「estate:エステート」とは「広大な地所」「土地」のことで、他に「荘園」なんていう意味もあり、車名の「エステート」場合、「道具を積み込んで自分の領地を見まわるクルマ」という意味があった。かつてボルボがよく用いていたものだ(「850エステート」など)。

領地なら走行シーンはアスファルトとは限らず、土やがれき道の可能性があるわけで、その意味でも今回のクラウン「エステート」をSUVスタイルにしたのは間違っていない。

総覧・歴代クラウンのワゴン&バンボディ

さて、セダン市場が縮小し、いまのクルマ界は猫も杓子もSUVという状態で(ほんとうはまだミニバンも)、出揃ったクラウンシリーズ4種のうち、セダン以外の3つをトヨタはSUVに位置付けている。セダンはもはや脇役だ。

だが、クラウンといえば元来、セダンでスタートしたトヨタの基幹車種だ。途中ドアに窓枠のないハードトップに主力を移したが、セダンやハードトップ以外はいわば脇役だった。

ここでは新しいクラウンエステートを入口にタイムスリップし、歴代クラウンの脇役の中のワゴン型を見ていこう。
なお、本稿のクラウンワゴンボディの写真は、バンやワゴンが混在したり、どちらかががあったりなかったりがあるが、どうかそのへんご勘弁。いろいろと事情があるのです。

・初代クラウン時代:トヨペットマスターラインバン(1955(昭和30)年)

いまから70年前の1955(昭和30)年に発売された初代クラウンは、初の純国産乗用車のセダンとして出発した。
前輪サスペンションは独立懸架だったが、当時のセダンユーザーの多くはタクシー需要で、初もの独立懸架には耐久性が不安視されたため、トヨタは並行して前輪も車軸懸架となる「トヨペットマスター」も開発していた。
同じくセダン型で、ラインナップ上はいまや営業需要が主体となったカローラセダンと似た位置づけといっていいだろう。

そのマスターのバン型が「トヨペットマスターライン」だ。

トヨペットマスターラインライトバン。
トヨペットマスターラインライトバン。
バックドアは左右観音開き。
トヨペットマスターラインライトバン中期型。
トヨペットマスターラインライトバン後期型。実はこの後期型は、ベースがクラウンに変わっている。
後期型マスターラインライトバンの計器盤。
バックドアは上下開きに変わっている。

・2代めクラウン時代:クラウンカスタム/マスターラインバン(1962(昭和37)年9月)

大幅にサイズアップした2代めクラウンのデザインそのままに、2BOX型も2代目に。同じく「マスターライン」を名乗る。

実は2代めクラウンには、このスタイルのままの乗用ワゴン「クラウンカスタム」があるのだが、なにぶんかろうじて入手できたのが1点。しかも当時の東京モーターショー展示車だ。多くの写真はマスターラインでご勘弁いただきたい。デザインはおんなじですので。

2代目クラウンの発表・発売は1962年だが、この写真は1964年、第11回東京モーターショーに展示されたときのクラウンカスタム。
同じデザインのまま商用車化した2代目マスターラインライトバン(1962年9月)。
これはカタログのカラー写真。発行年月は不明。
計器盤は2代目クラウンと同じだ。

さて、前世代マスターラインバンのバックドアは、時期によって初期は横開き、観音開き、上下開きといくつかあったが、2代目は下ヒンジの手前開きタイプに変更。じゃあ上半分のガラスはどうなるのとなるが、何とまあこの時代にしてパワー式で昇降する。
操作は、中からは計器盤上のハンドル左のスイッチで、外からは鍵穴操作で。

マスターラインライトバン。バックドアは上下開きだが、ガラスは・・・
パワーでガラスがパネル内に収容されるのだ。

走行時の窓開で新鮮な空気と自車の排気ガスが入ってきて車内は爽快。
窓を完全に降ろしてからでないとドアが開かないというフールプルーフ付きだし、寒冷地用はパワーではない手動式も用意していた。いつの時代もトヨタは気配りが細かいと思う。

・3代め時代:クラウンカスタム/クラウンバン(1967(昭和42)年9月)

法人ユースからの脱却を目指した3代めクラウン。
公用車の黒だったクラウンのイメージを「白いクラウン」のコマーシャルフレーズで塗り替え(色だけに)、パーソナルユースを意識した装備を持つ新機種「オーナーデラックス」設定の後押しもあって一般ユーザーの取り込みに成功した。

乗用ワゴンは「クラウンカスタム」のまま、「マスターライン」の名称はこのモデルチェンジを機に廃止され、商用バンは「クラウンバン」に改称。

3代目クラウンカスタム(1967年9月)。

バックドアの開閉方式は、ガラス昇降のメカも含めて2代目と同じだが、カスタムは対向車線側に向いて座る横向きのサードシートを新設したことからドアも横開きに変更している。同じボディで、サードシートのためにドアの開閉向きまで変えるとは!

ここではマイナーチェンジ前後の写真を合わせてお見せする。

バックドアは、ハンドルが左端に、ヒンジが右にあることで、横開きになったことがわかる。
後期型1970年3月のクラウンカスタム。
サードシートは対向車線側に向けて置かれている。
こちらは1970年のクラウンバン。
バンのバックドアは上下開きだ。

・4代め時代:クラウンカスタム/クラウンバン(1971(昭和46)年2月)

有名な「くじら」の愛称で知られるクラウンの4代目。
クラウンイメージをさらに変えようと、「スピンドルシェイプ(紡錘型)」と謳うデザインを起用しているが、何がスピンドルで、なぜ「くじら」なのか、筆者はいま持ってわからないでいるが、由来がどうであれ、ニックネームがあるのはいいことだ。親しまれている証拠だからである。そんなクルマ、いまは皆無だ。

クジラのクラウンカスタム(1971年2月)。
サイドシルエットで見ると、ボディ後半もかなり凝った造形であることがわかる。

4代目クラウンは顔が個性的だが、ワゴン型の後ろ姿だって負けてはいない。

割と傾斜させたバックドアガラス。その下は左右いっぱいに楕円型のえぐりをつけ、その中にリヤランプを収めている。

他にはないデザインの後ろまわり。

そうそう、そのバックドアは一般的な、上ヒンジのまるまる1枚跳ね上げ式に変更されたが、これは3代目カスタムでは犯人護送車よろしく横向きだったサードシートを後ろ向きにしたため・・・乗降性を考慮したのである。

後ろ向きになったらなったで、こんどはサードシート乗員と後続車前席乗員が「サザエさん」のエンディングのサザエとワカメのように相向かいになり、これが他人同士だと、お互いの目が合って何となく気まずい思いをすることに・・・後ろも家族のクルマならいいのだが。

サードシートは後ろ向きになった。ゆえにバックドアが跳ね上げ式になったわけだ。ここに座ると後続車乗員と目が合うことに・・・
商用版・クラウンバン デラックス。カスタムとバンは同じカタログだ。したがってこちらも1971年2月車。

・5代め時代:クラウンカスタム/クラウンバン(1974(昭和49)年10月)

いまでこそくじらと愛されるクラウンも、当時はスタイリングが受け入れられず、コンペティターの日産セドリック/グロリアの後塵を拝した。
そこで5代めは4代目から3年ほどでモデルチェンジ。本来のクラウンの姿に戻されることになる。
併せて、ドアに窓枠のないハードトップ(以下HT)の4ドアを新設。セド/グロが日本初の4ドアHTを、柱のないセンターピラーレスで構築したのに対し、5代めクラウンは柱を残して応戦(?)した。いわく「4ドア・ピラードハードトップ」。

とはいえ、ワゴン型は当然窓枠付きセダンをベースに設計され、布陣は4代目と同じくカスタムとバン。
引き続きサードシートも搭載され、これもだんだん伝統的なものになっていく。

クラウン2600カスタム(写真は1974年型)。
サードシート。
こちらはクラウンバン スーパーデラックス。写真は1977年型)。
クラウンバン スタンダード。同じく1977年型。

・6代め時代:クラウンカスタムワゴン/クラウンバン(1979(昭和54)年9月)

シリーズ全体で、重厚・威厳のイメージがだんだん定着してきた。
ワゴンに目をやると、乗用ワゴンはボディを商用バンと共用していたため、乗用カテゴリーでありながらどこか冷遇され、外観も内装も廉価モデルに近いものだったが、この時代のクラウンになると、ワゴン型もいくらかハードトップやセダンの方を向いてきている。
アメリカ志向になってきたのか、バックドアにはウッド模様も施されているのも、いかにもこの時代らしい。

クラウンカスタムワゴン(1979年9月)。
クラウンカスタムワゴン、リヤスタイル。
カタログ写真より。ウッドパネルがいかにもこの時代という感じがする。この頃のサニーカリフォルニアやシビックカントリーにも同じようなのがサイドにありましたな。
計器盤はハードトップやセダンと共通。
クラウンカスタム前席。

サードシートまわりも従来はバン+アルファ仕立てだったが、6代目となると荷室フロアはカーペット仕立てだ。

毎度おなじみサードシート。
サードシート格納状態。

いっぽうのバンは、クラウンの威厳・重厚を保ちながら実用性第一にしている。カタログにも「ビジネスへの誇り。気品と風格の堂々たるバンです。」とあるが、仕事グルマの中にも確かに堂々たる風格がある。しぶいねえ。

こちらはクラウンバン。

・7代め時代:クラウンステーションワゴン/クラウンバン(1983(昭和58)年8月)

「いつかはクラウン」のフレーズが有名な7代め。
80年代らしく、エレクトロニクス技術を積極的に採り入れた。
この代から、ワゴン型のネーミングを「クラウンカスタム」から「クラウンステーションワゴン」に改め、「本格的高級ステーションワゴン」を謳う。

6代めですでにゴージャス化の兆候は見られたものの、まだまだ徹底していなかったし、機種も「カスタム」の1種。

この7代めワゴンは2機種構成にし、(たぶん)従来の「カスタム」に相当する「スーパーデラックス」の他に、「スーパーサルーン」を新設した。ハードトップやセダンのフラッグシップ「ロイヤルサルーン」より一格下だが、ボディはバンと共通でも、商品として本格乗用ワゴンにしようという心意気がうかがえる。

トヨタのワゴン本気は、後席の頭上空間を大きくすべく、ルーフに段をつけてハイルーフ化したことと、その境目にガラスを仕込んだ「スカイライトルーフ」を与えた点に見出せる。これがスーパーサルーンだけでなく、スーパーデラックスにも装備したところがえらい。

ここではクラウンステーションワゴンのディーゼル車をお見せする。

「いつかはクラウン」のクラウンから、ワゴンは「ステーションワゴン」に呼び名が変わった。 スカイライトルーフの存在がわかりますか? 写真はクラウンステーションワゴン スーパーサルーン 2400ターボディーゼル。名前が長い!
同車の室内。

・8代め時代:クラウンステーションワゴン/クラウンバン(1987(昭和62)年9月)

バブル期クラウン第1弾。
過去同様、基本的に5ナンバーサイズ主体だが、ハードトップ車には、2代目時代に追加した「クラウン・エイト」以来となるワイドボディ車をラインアップした。とはいえ、今回は外板を膨らませて全幅を1745mmにしただけの3ナンバーワイドボディだし、室内幅だって5ナンバークラウンと同じだから、人間でいえば着ぶくれしただけの3ナンバー化だが、これまでの2L超3ナンバー車はサイドプロテクターやバンパーなど、突起物に厚みを加えて無理矢理3ナンバー域に踏み込んだだけだったからいくらかましだ。
もっともセダンの3ナンバー車はプロテクターやバンパーの対応で3ナンバーボディになっている。

この8代め、歴代クラウン中、最高の売れ行きを示したんじゃなかったっけ。
後期型でのちのセルシオと同じV8エンジン車が登場したのもバブル期ゆえで、これも「エイト」以来だ。

さてワゴン。ステーションワゴン名はそのままに、バリエーションが一気に豊かになった。ハードトップやセダンで主力とするエンジンがステーションワゴンにも搭載されるようになったのだ。

EFIのDOHCスーパーチャージャー2000のロイヤルサルーン、2000EFIと2400ディーゼルターボが用意されるスーパーサルーン、2000EFIのみとなるスーパーデラックスと、その中に一部装備を簡略化したスーパーデラックス・グレードパッケージがある。

クラウンステーションワゴン 2000EFI DOHC スーパーチャージャー ロイヤルサルーン。名前が長い!(1987年9月)。スカイライトルーフはチルトアップ機能が加わった。
後ろ姿もギラリ!
同車計器盤。
後席。
同車の荷室。
後席をたたむとこうなる。カーペットがふっかふかだ。
サードシートも立派になった。

7代めでワゴン全車に標準でついていた2段ルーフは8代めも継続。スカイライトルーフはチルトアップになったのはいいが、スーパーデラックス・グレードパッケージのみ省略されるので、厳密には全車標準というわけにはいかなくなった。

・9代め時代:クラウンステーションワゴン/クラウンバン(1991(平成3)年10月)

バブル期クラウン第2弾。
バブル期の開発だけに8代目を超える造りこみになっている。時代を反映して骨格ごと3ナンバーボディとなり、なおバブリーになったが、発表・発売の頃にはバブルが弾け、7代めカローラとともに売れ行きにブレーキがかかったのは気の毒だった。

9代めでは新たに「クラウンマジェスタ」が誕生、従来までの4ドアHTは、マジェスタとの対比で「ロイヤルシリーズ」に・・・4ドアハードトップは2本立てになったわけだ。マジェスタに限られるとはいえ、クラウンで伝統だったフレームをやめ、モノコックボディになったのも話題だった。

ところで9代めにチェンジしたのは4ドアHTに限られる。セダンとワゴン&バンは8代目ボディの大幅マイナーチェンジにとどめ、5ナンバーサイズを主力のまま継続販売した。
この少し前にY31からY32にチェンジしたセドリック/グロリアも同じ手法を採っており、トップ2メーカー(当時の)が申し合わせたように同じことを考えたところがおもしろい。
もっともセド/グロの大幅マイナーチェンジはセダンだけ。ワゴンはさらに前のモデル、1983年のY30型ワゴンを売っていた。

話をクラウンステーションワゴンに戻す。

フロントの変化はセダンと共通で、ライト&コーナーのランプ、グリル形状を変え、フォーマル感を高めたと同時に、9代めの顔にいくらか近づけてもいる。キャビンもリヤボディも大きく変えたセダンとは対照的に、ワゴンのリヤの変化は小規模だ。

バックドア形状はそのままに、ランプおよびガーニッシュの色調が変わったのと、「TOYOTA」の文字入りメッキガーニッシュが横一文字で、鉄板に直付けだったライセンスプレートが、一文字ガーニッシュと一体になった樹脂パネル上につくようになった。

本家クラウンが9代めにシフトしてもセダンとステーションワゴンは8代目の大幅マイナーチェンジで対応。
ステーションワゴンリヤ。
後ろはランプまわりの変更が中心だった。。
ルーフまわりは当然変更はない。実はセダンはルーフを伸ばしてリヤガラスを立て、キャビンを大きくしている。
こちらは1993年版のカタログのクラウンステーションワゴン ロイヤルサルーン。
同じく1993年版より。こちらはステーションワゴンの廉価版・スーパーデラックス。

・10代め時代:クラウンステーションワゴン/クラウンバン(1995(平成7)年8月)

本家クラウン、ついに2桁世代に突入。
ハードトップの2本立て作戦も変わらないが、従来クラウン路線の「ロイヤルシリーズ」もついぞモノコックボディに転身した。初代から続けてきたフレーム付きボディとの訣別である。

とはいいながらもセダンとワゴン&バンは8代めをまた継続。
ということは、世代違いとはいえ、フレーム構造はまだ続いていたわけだ(ここまで書いていま気づいた)。
もっとも、苦楽を共にした(?)のはこの年の末までで、12月にはセダンがモデルチェンジしてモノコックボディに。このときワゴンも改良を受けた。フレーム付きクラウンの最後は継続版8代めワゴンということになる。

8代めワゴンの後ろ姿は9代め時代以降も変わっていないと思っていたが、写真で比べりゃあ違いは見出せるもので、両脇のランプはそのままに、同色のガーニッシュがライセンスプレートを抱えるガーニッシュを押し縮めるほど拡大すると同時に、その上部を走る細いオレンジラインが左右を結んでいる。

この時期に意外にお金をかけたのがバックドア上部で、従来つるりんとしていたガラス上がリップ状となるプレス処理を受けている。「スポイラー一体タイプの形状」なのだと。
なのにバンはつるんとしたままだ。

本家クラウンが10代めに変わろうと、ステーションワゴンは8代目のまままだ走り続ける!(1995年8月)といってもそれは12月までで、セダンは12月にモデルチェンジ。 写真はクラウンステーションワゴン 2500ロイヤルエクストラ・ツーリングセレクション装着車・・・ますます名前が長くなった。
後ろ姿はまたまたランプまわりが中心の変更だが、バックドア上部がリップ形状になった。写真は2000ロイヤルエクストラ。
ステーションワゴン ロイヤルサルーン室内。
1998年版のクラウンバン スーパーデラックス。
こちらはクラウンバン デラックス。バックドア上部のリップはない。

・11代めクラウン時代:クラウンエステート(1999(平成11)年9月)

ここでもういちど1999年のクラウンエステートを。

さきの話と重複するが、これは1999年9月に発売された11代めクラウンのワゴン型として発売された。
つまりワゴンにとっては1987年の8代めシリーズ以来、12年ぶりのフルチェンジを受けたことになり、ネーミングも「クラウンエステート」に変更された。2BOX型としては、最初の「マスターライン」時代を含めると9代目となる。

この11代めの本家クラウンは、スタイリングは過去クラウンの延長線上にありながらハードトップを廃止し、ドアに窓枠をつけたセダン型に回帰した世代だ。

もともとは7代めの特別仕様車名に過ぎなかった「アスリート」を走りのクラウンのシリーズ名に昇格させ、「マジェスタ」「ロイヤル」「アスリート」の3本立てになった。
「athlete:アスリート」は「運動選手」の意味だが、走りのクラウンのシリーズ名にうってつけだと思う。
なお、「短距離走者」の意味を持つ「スプリンター:sprinter」が初代カローラのクーペ版として始まり(カローラ・スプリンター)、2代目カローラのときに独立したように、このクラウンアスリートも「トヨタアスリート」としてひとり立ちするのかと思ったが、そうはならなかった。

シリーズ3本立てはそのままエステートにもスライドされ、その内訳は5つ。
2.5Lと3L直噴のロイヤルサルーンと、2.5Lアスリート、4WD(!)の2.5LアスリートFour、2.5ターボのアスリートVに3L直噴のアスリートG・・・時代が変われば扱いも変わり、このクラウンのワゴン型・エステートではついぞ走りのアスリートシリーズこそが主軸に・・・バンに毛が生えた程度のワゴンでしかなかった頃とはえらい違いのクラウンエステートである。

そしてネーミングも新たに「クラウンエステート」に(1999年12月)。
当時自主規制いっぱいの280psを誇った、シリーズ最強のアスリートV。

さあ、時代によりけりでネーミングを変えながらさまざまな姿で走り続けてきたクラウンのワゴンボディを一挙にお見せした。

このたびの新生クラウンエステートはSUVスタイルで現れた。今後もまた変わっていくのか、いかないのか、長い目で見守っていこう。

なお、本記事は新しいクラウンエステートを機に振り替えることから、歴代クラウンのワゴン型(とバン型)に主眼を置き、2ドアハードトップその他ボディ型は除いて解説したことをお断りしておく。

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