モーター走行領域の拡大によって燃費アップ!
2024年12月に大幅改良を行なったマツダCX-60。足周りを中心にメスが入り、乗り心地が改善されたのは世良耕太さんのレポートに詳しい。デビュー以来、毀誉褒貶が相半ばしていたCX-60だが、課題を克服することでより魅力的な1台になったと言えそうだ。
さて、大幅改良と同時にCX-60のラインナップに特別仕様車が加わった。それが「XD-HYBRID Trekker(以下Trekker)」で、ベースとなった「XD-HYBRID Exclusive Sports」に対しては、パノラマルーフの標準装備化や2列目席や、前席への荷物の侵入を防止するパーティションネットの設定が実施された。




そうした装備内容を頭に入れつつ、「Trekker」の限定カラーであるジルコンサンドメタリックを纏った撮影車を前にした時は、「ふむふむ、なるほど。アウトドアのテイストを取り入れることで、ユーザーの間口を広げようとしているんですね。狙いとしてはアリですねぇ」などと知った風な口を利いていた。確かに、そうした一面もあるのだろう。ところが、この「Trekker」には、さりげなく、とんでもない秘密が隠されていた!
WLTCモード燃費を比較してみよう。「XD-HYBRID EXCLUSIVE Sports」が20.9km/Lなのに対して、「Trekker」は21.4km/L。0.5km/L向上し、CX-60のラインナップで唯一、2030年度燃費基準に適合している。そう、この「Trekker」は単に装備を追加しただけではなく、パワートレインにも改良が加えられたモデルだったのだ。

これまでは、例えば走行中にコースティング時からエンジンを再始動する際、P2モーター(エンジンとトランスミッションの間に搭載されたモーター)を用いていた。このP2モーターはEV走行にも用いられるのだが、エンジンを再始動する分のトルクを余力としてキープしていなければならず、モーターのみで走ることができる領域が限定されてしまっていた。
そこで「Trekker」に搭載されるパワートレインでは、セルモーターを使ってエンジンを再始動するように変更。P2モーターは100%ではないものの、持てる力のほとんどをEV走行用に使うことができるようになり、燃費向上につながったというわけだ。特に40〜50km/h以下ではEV走行の領域が大きく広がったとのこと。

セルモーターによる再始動時の滑らかさも、基本的にはP2モーターとは変わらないという。ただ、音に関しては「耳を澄ませて注意していると、聞こえる」レベルとのことなので、それが気になる人がいるかもしれない。そこで車両設定のメニュー操作によって、エンジンの再始動の方式を選択できるようにもなっている。
最新のフォルクスワーゲン・ゴルフのマイルドハイブリッド車のように、セルモーターを廃止して冷間始動時の滑らかさ向上を図ったモデルもあるが、CX-60では逆のアプローチを採っているのが興味深い。
こうした改良が加えられている「Trekker」のパワートレインだが、発表時に配布されたメディア向けのプレスリリースにも一切そのことに触れられていないのが不思議なところ。今回の取材では展示車の撮影のみにとどまった「Trekker」だが、ぜひ、その乗り味も確認してみたいところだ。

マツダCX-60 XD-HYBRID Trekker(4WD)
全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm
ホイールベース:2870mm
乗車定員:5名
車重:1970kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
型式:T3-VPTH型
排気量:3283cc
最高出力:187ps(254kW)/3750rpm
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
燃料供給:電子式(コモンレール)
最小回転半径:5.4m
燃料:軽油
燃料タンク:58L
トランスミッション:トルクコンバーターレス8AT
燃費:WLTCモード 21.4km/ℓ
市街地モード18.7km/ℓ
郊外モード:21.5km/ℓ
高速道路:22.7km/ℓ
車両本体価格:552万7500円