新型ジムニー、開発ストーリー

スズキ・ジムニー「塗装面は鉄板で!」平均使用年数17年のジムニーならではのこだわり

ロングライフモデルのモデルチェンジは難しいものだが、「原点回帰」を徹底した2018のフルモデルチェンジは、各方面で好意的に受け入れられている。ジムニーならではこだわりとは?

開発ターゲットは「プロのユーザー」

2018年のジムニーのフルモデルチェンジでは、開発陣はターゲットユーザーを「プロのユーザー」に絞り込んだという。雪道、山間部に住んでいる人、ジムニーの性能をフルに使うプロをターゲットにしたのだ。実際、「林業従事者」はジムニーのプロのユーザー層である。森林で使うプロには、ハンター(狩猟者)もいて、彼にとってはジムニーは欠かせない道具である。

ジムニーの性能に憧れるフォロワーユーザーも「本物志向が強い人たち」が多いと開発陣は踏んで開発をしたという。この層は、例えばダイバーズウォッチを選ぶ際も、「そこまで潜ることはないだろう」という性能まで求めて時計選びをする人たちだ。

プロの人たちの信頼に応えるために、フルモデルチェンジではさまざまな開発を行なったいう。

たとえば、ジムニーのユーザーは、長くクルマを使うという。ジムニーの平均使用年数(廃車までの時間)は、17年にもなる。ちなみに、軽自動車の平均使用年数は、軽自動車検査協会のデータによれば、2005年の11.49年から、おそらく景気の低迷などの理由で2020年には15.20年まで延びているとはいえ、やはりジムニーが「長く使われるプロの相棒」であることは、このデータからも読み取れる。

ボディ側面はガラス面を立てて、雪が溜まりにくい造形になっている。
ルーフには、ドアを開けたときに車室内に雨水が浸入しないようにドリップレールを採用している。

そこでこだわったのが、塗装面だ。
新型ジムニーでは、ボディの塗装面をすべて鉄板で作っている。樹脂で使った方が簡単でコストも下げられる部位はあるが、
「長く乗っているなかで、いろんなところを走っていただいて、ボディが凹んだりスクラッチが付いたりしてくるでしょう。塗装も扱いによっては、味わいのある、いい感じにやれてくるということもあります。その時に、樹脂と鉄板では同じになってくれません。すべて鉄板で作れば、同じようになってくれる。そこはこだわりました」

と開発者は言う。

設計としては困難だよ、という成形の部分も、「いや、ここは鉄で作ろう」と、あえて鉄板にこだわった。

「ウレタンバンパーと鉄板だと、どうしても色が変わってしまいますよね。5年10年乗ったら、”あれ?”となるか”さすが”となるかは違います。ぶつけたら同じように凹んでいる方が絵になると思います。持っていただいた方に満足していただけるようにしました」

このあたりが、ジムニーならではのこだわりと言えるだろう。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…