八八艦隊構想とは?
1970年代から80年代にかけて、いわゆる東西冷戦構造の時代。海上自衛隊は護衛艦隊(護衛隊群)を編成するにあたり、想定されるあらゆる洋上戦闘(対潜戦、水上戦、防空戦など)に効率的、継続的に対処することを考えていた。そのため各護衛隊へ編成目的に沿った艦種を配置することとした。ここでいう艦種とは「DDH=ヘリコプター搭載護衛艦」「DDG=誘導ミサイル搭載護衛艦」「DD=汎用護衛艦」を指す。
そこで俗に「八八艦隊」とも呼ばれている構想を打ち立てた。「八八」とはDDH(旗艦・対潜中枢艦)を1隻、DDG(防空中枢艦)を2隻、DD(汎用護衛艦)を5隻の計8隻と、DDGを除く各艦が搭載する哨戒機(対潜ヘリコプター)8機からなる「8艦8機体制」で部隊づくりをすることを示している。
ここで艦隊の主力となるDDの数を揃える必要から設計建造されたのが「はつゆき」型になる。同じDDの「あさぎり」型の先代、「むらさめ」型の先先代にあたる。「8艦8機体制」での第1世代汎用護衛艦という存在だった。
1番艦「はつゆき」の起工は1979年(昭和54年)、進水は翌80年(昭和55年)、竣工は82年(昭和57年)。そして最終12番艦「しまゆき」の竣工が1987年(昭和62年)と、東西冷戦構造が終わりを迎えようとする時期、そして日本経済が好機を捉えて上り詰めようとするころ、こうした時代に整備されてきた。計画では全20隻を整備するものだったが、12隻にとどまり、拡大発展型の後継艦「あさぎり」型へバトンを渡している。
以来、おおむね80年代前半に就役した艦は2010年代まで現役を続け、同年代後半に就役したものは2020年や21年まで現役にあり、12隻のうち4隻は練習艦へ転籍するなどし、全体に長期間活動したタイプといえる。現在は全艦が退役している。
DD「はつゆき」型は先述したように対潜・対水上・対空とバランスの取れた性能を求めた汎用護衛艦だ。対潜ヘリコプターの発着艦・格納設備も造られた。相手潜水艦など探知した目標を統合処理する情報処理システムを搭載、主機はガスタービンに統一する。こうした仕様で具体化を進め、海自護衛艦を刷新した艦といわれた。
主機は海自初となるガスタービン推進COGOG方式を採用。またCIC(戦闘指揮所)を護衛艦では初めて船体内に収めた。抗堪性(サバイバビリティ)を強化する目的のこの設定は、以降の護衛艦もこれに倣うものとなった。
8番艦の「やまゆき」からは上部構造物をアルミから鋼鉄製に変更しバラストを積載したとされ、これにより基準排水量で約100トン増加したという。この鋼製化の措置はフォークランド紛争で被弾し火災を起こした英海軍駆逐艦「シェフィールド」の戦訓をもとにしているとされ、諸国海軍がこれを機にこぞって燃えやすいアルミ製の構造物を鋼製化した世界的な風潮に乗ったものと思われる。
武装をみると、個艦防空用に短SAM(シースパロー)、高性能20mm機関砲(CIWS)、主砲にオットー・メララ76mm単装速射砲、対艦用のミサイルにはハープーンSSMを搭載。これらは当時の西側海軍艦艇での標準的な能力を示す武装品だった。
スペック) 主要要目 基準排水量 2,950t(8番艦以降 3,050t) 主要寸法 130×13.6×8.5×4.1m(長さ、幅、深さ、喫水) 主機械 ガスタービン4基2軸(COGOG方式) 馬力 45,000PS 速力 30 kt(約55.6km/h〕 主要兵装 62口径76mm単装速射砲×1、高性能20mm機関砲(CIWS) ×2、短SAMシースパロー8連装発射機×1、4連装SSM発射機×2、アスロック(ASROC)発射機×1、3連装短魚雷発射管×2、哨戒ヘリコプター×1機 乗員 約200名
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