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「ICE NAVI 8(アイスナビ エイト)」は氷上ブレーキ性能を8%、耐摩耗性能を3%向上
「雪道も安心して走りたいけど長持ちもしてほしい」そんな相反する要望を両立
この時季になると、そろそろスタッドレスタイヤの購入を考え始めるユーザーも少ないと思う。夏場であれば選択肢は豊富だし、購入価格という点でも冬場よりも買い手市場だ。しかしいざ選ぶとなると、意外と困るのではないだろうか。どういう判断基準で、スタッドレスタイヤを選べばいいのかが。
昨今、スタッドレスタイヤの性能は頭打ちなのではないかと思うくらい進化を果たし、トップブランドのものを購入しておけば、まず間違いはない。また、クルマにトラクションコントロールなどのデバイスが付いたこともあり、雪道でよほど無茶な運転をしない限り、もしくは路面コンディションが極端に悪くない限り、「ヒヤリ・ハット」の思いをせず済む。
それゆえに、スタッドレスタイヤを選ぶ時は、“北海道のタクシーでシェアNo1”などとCMで謳われているブランド力か、もしくは安さで選ぶことが多いのではないだろうか。そんな現状に一石を投じるNEWスタッドレスタイヤが登場した。それが、日本グッドイヤーの「ICE NAVI 8(アイスナビエイト)」だ。
このタイヤの目指した性能を挙げれば、
1:氷上ブレーキ性能
2:氷上コーナリング性能
3: 耐摩耗性能
4:雪上性能
5:低燃費性能
6:ウェット性能
7:静粛性能
8:ドライ操縦安定性能
と、いうことになる。
多くのユーザーがスタッドレスタイヤで気にするのは、やはり「長持ちするかどうか」であろう。例えば雪国であっても、降り始めから雪解けの季節まで、ずっと路面に積雪があるということは皆無だ。12月や3月ともなれば、舗装が出ている日が多い。ヘビーユーザーであるはずの雪国のドライバーであっても、実は無冠雪の路面を走ることが多いのだ。
都会から雪国に向かうドライバーであれば、それはさらに顕著になる。ウインターレジャーを楽しむにしても、100km以上の乾燥路を走らなければならないというのはザラ。筆者自身も、2021シーズンの積雪路走行回数はわずか2回。それでもイザという時のために、4〜5か月近くもスタッドレスを履いているのである。おそらくそういうユーザーは少なくないのではないだろうか。
そういったユーザーの実態に目を付けて開発されたのが、ICE NAVI 8なのである。スペック上で言えば、従来モデルのICE NAVI 7に比べて耐摩耗性能を3%向上。具体的には、トレッド面で均一に摩耗していく「均一摩耗プロファイル」を採用することで、摩耗性能を向上させた。
多くのスタッドレスタイヤは低温下でも一定の柔らかさを保つ発泡ゴムを使っていることが多いが、これはアイスバーン表面の水膜を取り除く効果がある一方で、どうしても早く摩耗してしまう傾向にあった。ICE NAVI 8の雪や氷上性能はトレードオフになっていないのだろうか。
もちろん、そこは十分に考慮されている。まず、ランド比を従来モデルよりも2%アップすることで、接地面積を広くして密着性を向上。同時に、ICE NAVI 7よりも前後トータルエッジを7%、ブロックのピッチ数(横溝の本数を56本から68本に増加)を21%も向上させ、氷上ブレーキ性能で8%の向上を果たしている。加えて、「エキストラ・コンパクト・コンパウンド・プラス」という極小分散シリカと軟化剤を採用することで、路面への高密着を実現している。
ちなみに、一般的にランド比を高くすると、氷上性能はアップする一方で雪上性能はトレードオフになる傾向がある。しかしICE NAVI 8は、トレッドのパターンを十分に考慮することで、雪上性能に重要な雪柱せん断力を従来と同等のレベルにキープしている。
トレッドデザインについても、新しいアプローチを試みた。日本グッドイヤーは、従来製品においてシンメトリーパターンを採用してきたが、ICE NAVI 8はアンシンメトリックにしている。これは積雪路、無積雪路を問わずにグリップ方向の性能を向上させるためだという。同時に、ロードノイズを低減させる効果も狙っている。
一般路を走り出してすぐに気がついたICE NAVI 8の剛性感の高さ
さて、今回のテストピースはトヨタ・プリウスに装着。車重が約1.4 tと軽いクルマだ。無積雪路における性能を謳っているので、SUVやミニバンなどの重量があって、重心が高めのクルマでテストしたかったというのが本音。そちらはまたの機会に譲るとして、とにかく都内から雪国に向けて出発することにしよう。
走り出しですぐに気づくのは、剛性感の高さだ。多くのユーザーが感じていることだが、スタッドレスタイヤは柔らかいコンパウンドやサイプなどのファクターから、フィーリングが柔らかい。快適な乗り心地ではあるのだが、交差点を曲がるだけでも腰砕けのような印象を受ける。その点、ICE NAVI 8はしっかりとしたフィーリングで、夏タイヤとあまり変わらないフィーリングだ。これもICE NAVI 8専用プロファイル設計の恩恵だという。
耐摩耗性は体感できるものではないが、スタッドレスタイヤとしては硬めのフィーリングから考えれば、やはり耐摩耗性の面でもアドバンテージがあるのだろうと予想できる。具体的には3%もアップしているというから、スタッドレスタイヤの装着期間の長い降雪地ユーザーにはうれしいポイントだ。加えて乾燥路のころがり抵抗を2%低減させているというから、燃費の向上も望めるわけである。
ロードノイズも少なめで、低中速域から高速域まで音が気になることはなかった。数値で言えば、パターンノイズで31%、ロードノイズでは16%の低減を実演しているという。ただし、サイプが多めということが影響しているのか、ハーシュネスはよく拾う印象を受けた。ドライバーにロードインフォメーションが伝わるということは必ずしも悪いことではないが、好みとしてはもう少し抑えめでもいいかなと思う。
無積雪路の性能は、明確に「いい」と言えるレベルだ。まず高速道路での運動性だが、急激なレーンチェンジでもトラクション、グリップが良好に発揮される。また、突発的な渋滞における100km/hあたりからのブレーキングでも特に不安を感じることはなく、ブロックがブレークせずにしっかりと制動力を発揮してくれた。
都会のウインターレジャー派は、高速道路での移動がマストになる。高速走行で不安がないことは、こうしたユーザーがスタッドレスタイヤに求める大切なポイントだ。その点、ICE NAVI 8は及第点以上のタイヤと言えるだろう。
ワインディングロードでも自然なフィーリングで、スタッドレスタイヤであることを意識せずにドライブできる。もちろん過剰なハイスピードで攻めることはやめた方がいいが、気持ちのいい速度域で走ることができた。各ブロックの硬さも適度だったが、ショルダーやサイドウォールの剛性もしっかりしており、ステアリング操作に対してリニアな反応を見せてくれる。
また無積雪期になると、ワインディングロードを走る際に、どうしてもブロック飛びなどが気になってしまうものだが、そういった耐摩耗性も十分に考慮されているという。
ICE NAVI 8はコーナー途中の凍結路面でも良好なグリップを披露
さて、今回のテストドライブは2021年2月下旬に実施したのだが、今年は信州地方でも低地の積雪が少なく、アイスバーンを体験することは叶わなかった。唯一、高原に上がる道の一部に、わずかなアイスバーンが残る程度だった。凍結はコーナーの途中に見られたが、そこでもICE NAVI 8は良好なグリップを見せた。乾燥路では硬さを感じる同タイヤだが、様々な新しい技術によって、氷上路性能は十分に確保しているようだ。
もちろん、圧雪路でも何の問題もない。むしろ、降雪直後の雪のコンディションがいい道では、非常に素直なコントロール性を見せた。FFのプリウスで、わざときつめのライン取りをしてコーナーを曲がっても、後輪が流されることはほぼない。また勾配の大きな下りのコーナーは、荷重が前輪に乗ってしまうため、得てして不安定な走りになるものだが、こういったシーンでも安心して走ることができる。
不安を感じていたのが、新雪(深雪)路面。ICE NAVI 8はランドエリアを広くデザインしているということだったので、溝に雪を取り込んで接地力を高め、さらにそれを断ち切るという「雪柱せん断力」が低下しているのではないかと考えたからだ。
なにせ試乗の段階では詳しい技術資料が開示されていなかった。しかし、前述のようにそれは技術的に十分考慮済み。圧雪前の登り坂を走ってみたが、ゆるゆるとしたスピードで難なく登り切ることができた。無論、プリウスのトラクションコントロールの力も借りてだが、それでも十分なトラクション性能だと言えるだろう。
なお、今回は深い轍ができた道を走ることはできなかったが、丸めのショルダー部やサイドドレッドの端に配置された雪のデザインなど、耐ワンダリング性能も十分に考慮されているようだ。
2020-2021年シーズンは、日本海側は大雪、太平洋側は少雪という傾向になった。かくいう筆者もそうだが、スタッドレスタイヤを履いても、実際に雪道を走ったのは数えるほどであった。それでも、仕事の都合などで、スタッドレスタイヤに替えないわけにもいかない。もはや「保険」のようなもので、年間数回の雪道走行のために摩耗と性能低下を気にしながら走っているのである。
そういったユーザーでも、このICE NAVI 8なら安心して履き続けることができると思う。11月頭には夏タイヤから替えて、ゴールデンウィーク直前まで履き続けても、減りに気を揉むすることはない。
最後にサイズ展開だが、日本の市場に十分対応している豊富なサイズラインナップも特徴のひとつだ。軽自動車からSUV、ミニバンまで幅広いカテゴリーのクルマで選ぶことができるだろう。
優れた氷上性能に加えて、ロングライフ性能と乾燥路性能にも重点置いたICE NAVI 8。2022シーズンに入る前に、ぜひチェックしたい1本と言える。