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40mmリフトアップとマッド系タイヤで自分らしさを表現|AtoZ アンナE リフトアップカスタム
現在のキャンピングカー市場のキーワードになっているは、「脱没個性」だ。キャンピングカーはこれまでシニア世代中心の市場だったが、コロナ禍によってニューファミリーなどの新たなユーザー層が増加している。若いユーザーはやはり商業車然としたエクステリアを嫌う傾向があり、いかにスタイリッシュなオートキャンプライフを送るかにこだわっている。
実際に、彼らが泊まっているキャンプ場に脚を運んでみると、キャンプサイトがまるで雑誌のロケ地のように華やかで楽しげなのである。そうした“意識”を持つユーザーが、シロモノ家電的なキャンピングカーで満足するはずがないのだ。
しかしキャンピングカーというのは、個性を出すのが意外と難しい。例えば、バンコンの場合はベース車両のエクステリアがそのまま活かされることが多く、差別化はデカールのみという場合が多い。キャブコンも、キャンパーシェルの形状に各ビルダーの工夫はあるが、居住性を考えれば大胆なデザインを施すことは難しい。
全国に販売拠点を展開する「ナッツ」は、早くからキャブコンのフロント周りをエアロパーツでカスタムしたモデルを販売し、他のビルダーとの差別化を図ってきた。軽キャンパーは数年前からカスタムビルダーとコラボしたモデルをリリースすることで、ユーザーの注目を集めている。バンコンも昨年あたりからカスタムがムーブメントとなっており、JAOSブランドの既製パーツを装着したモデルを発表したり、自動車メーカー系ディーラーなどがアースカラーに全塗装したモデルを発売するようになった。
今回紹介するAtoZの「アンナE リフトアップカスタム」もまた、より楽しくキャンピングカーライフをおくりたいユーザーに向けた業界の“回答”のひとつだ。このモデルに注目したいのは、マツダ・ボンゴ(トヨタ・タウンエース/ライトエースのOEM車)をベースに40mmリフトアップサスペンションが装着されていることだ。
エアロパーツ、アースカラーの外装色、ルーフラック、マッド系タイヤの採用というのはこれまでもあったカスタム手法だが、軽キャンパー以外でここまでリフトアップしているモデルは珍しいと言える。どちらかというと、「東京オートサロン」に展示される類いのモデルだ。
車内は「アンナE」そのもので、車中泊仕様のベッドキットが付いたシンプルなもの。ベッド以外にテーブルとミニテーブルがインストールされているが、シンクなどの装備はない。だが、キャンパーの装備に囚われることなく、自由なアウトドアライフを楽しみたいというユーザーには、むしろシンプルな装備の方が歓迎される気がする。
そもそもこのタイプのモデルを、なぜAtoZが出したのかという理由におもしろさがある。同社はかつて「バンキング」という名で、バニングカーのカスタムの行っていた会社である。バニングカーの衰退でキャンピングカービルダーに業態を変えたが、今でもエアロ製造やチューニングなどのノウハウは持っている。その技術を復活させて、新たな提案をしていくプランがあるという。このアンナE リフトアップカスタムは、バンキングのブランドとしての新たな方向性を探る試金石だったようだ。
ユーザーにとっても、こうした動きはおもしろいと思う。この時代、60代でも若い感性を持っている人は多いし、何歳になっても男性はクルマ好きのきらいがある。昨今では女性も積極的にカスタムされたクルマを選ぶ時代だから、これからドレスアップしたキャンパーがスタンダードになっていくのは間違いない。
ちなみに同モデルのカスタムメニューをもう一度チェックすると、「グリルガード」「アルミホイール」「ルーフラック」「TOYOオープンカントリーR/T」「バーライト」「40mmリフトアップサスペンション」「15mmオーバーフェンダー」「ボディ&エンブレム塗装」という内容になっている。
従来は室内レイアウトや装備でキャンパーを選んでいたが、これからは個性的なエクステリアを求める人がきっと増えていくはずだ。キャンパーの購入費とカスタム費用が一括してまとめられるというユーザーメリットもあるこの手のモデルは、間違いなく成長市場になっていくはずだ。
AtoZ アンナE リフトアップカスタム
■車両本体価格:283万8000円/展示車価格:404万3700円
■ベース車両:マツダ・ボンゴバン
■乗車定員/就寝定員:5人/2人
■主要装備:ベッドキット
■展示車のオプション装備:塗装 66万円/キャリア 17万6000円/グリルガード(フォグ) 12万6500円/リフトアップ(40mm) 10万1000円/ホイール・タイヤ 14万2000円/冷蔵庫/ポータブルバッテリー