目次
未来のエンジニアを育成する体験型イベント
2008年より始まったこのキッズエンジニアは公益社団法人 自動車技術会(自技会)が、「将来の技術者を育成するため、次世代を担う子どもたちにものづくりの楽しさを知り、技術者になる夢をもってもらいたい」という目的で開催される小学生を対象とした、入場料も参加費も無料の体験型のプログラムを中心としたイベント。
なんとこのイベント、参加企業は製品や商品の宣伝は行なわないという前提のもと、協賛費を支払ったうえで参画するという、純粋に将来の自動車業界の発展のための催しだ。
ゆえに、我々自動車雑誌の編集部が日頃お世話になっている各メーカーの広報部や宣伝部が関与していないので、大変失礼ながら宣伝下手(笑)。こんなイベント初めて知った! という方も多いだろう(大きな声では言えないが、じつは筆者も同じクチ……)。
そんなキッズエンジニアの開催は今年で14回目。コロナ禍による中止とオンライン開催を経ながら、今回は感染対策を徹底した事前申し込み制によって、神奈川県の観光スポットでもあるみなとみらいの展示ホール・パシフィコ横浜で3年ぶりのリアル開催となった。開催地は横浜と名古屋各地で隔年というイベントなため、横浜での開催はじつに4年ぶり。開場には夏休みになってすぐであろう子どもたちの姿が多く見られた。
子どもにも理解できる自動車開発の最先端技術
前述のとおり、会社の看板を背負ってはいるものの企業広報のためでなく、子どもに科学とものづくりを好きになってもらうことが目的のイベントなため、出展各社のスタッフは社内の技術部会的組織だったり各セクションから集まった有志によるボランティア団体だったりと、各社さまざま。
共通するのは、「小学生を対象」に、「クルマに関するさまざまな科学技術をわかりやすく体験してもらう」ために、「プログラムはもちろん教材や機材も現役のエンジニアやOBが手づくり」していること。
そしてそこは自動車開発の最前線のお歴々。個々のブースで行なっているワークショップの内容は驚くほど高度で本格的な内容でビックリする。その授業時間はなんと40分~1時間半!
パソコンやタブレット端末を使ってモーター駆動のミニカーのプログラミングをしたり、コイルを巻いてモーターそのものをつくってクルマを走らせたり。さらには水素を使って超小型の燃料電池を搭載したミニカーを走らせる! と、まさに自動車技術の最先端を楽しく学べる濃い内容となっているのだ。
子どもにとっては夏休みの自由研究としてレポートしたら、一目置かれる存在になれそうなコンテンツが目白押しなのである。
大人も羨む本格プログラム!
「クルマの科学にふれながら楽しく学べる」をコンセプトとして、各社が用意したプログラムのいくつかを簡単に紹介しよう。
SUBARU
【二駆と四駆のちがいってなに? モケイを作って走らせよう!】
まずはSUBARU。お得意の4WDの実力をミニカーを使った駆動体験。
モーターで前輪を駆動するミニカーの駆動力を、輪ゴムを介してリヤにも分配。それぞれの状態で重りを引っぱらせて、4WDはより多くの重りが引っぱれることを実験するほか、前輪駆動では登れない階段状の坂が4WDだと登れることを確認。
最後は色々な路面のテストコースを走らせて駆動方式による走破性の違いを確認。
結構あからさまに違いが出るので、こんな体験をしたら絶対にスバルのヨンクの虜になってしまうだろう。
トヨタ自動車
【自動運転ミニカーを作ろう! 自分でプログラムをしてゴールできるかな】
その内容は、超音波センサーを搭載したミニカーの走行プログラムをパソコンで組み、障害物を避けながら専用コースのゴールを目指すというもの。同様のプログラムが日産やダイハツ、日立Astemoでも行なわれていた。
ヤマハ発動機
【ウインドカーを作って、コースで走らせてみよう!】
ヤマハは屋内と屋外でイベントを展開。
屋内では小型の風洞をつくり、プロペラに風を受けて走るクルマのセッティングを調整しながらタイムアップを目指す。
屋外ではキッズ用オートバイのエンジンの仕組みをカットモデルで学んだあとに、実際のバイクのエンジンをかけ、先生が持つフリップの信号や交通標識に合わせてスロットルやブレーキ操作を体験する。
いかにもエンジニアが設計して試作部門が製作したような風情のバイクの土台にも注目してほしい(笑)。
大豊工業
【楽しく学ぼう “まさつ” のふしぎ】
エンジン内部のベアリングやデフキャリアなどのアルミダイキャスト製品のサプライヤー大豊工業のテーマは「まさつ」。
そりを引いたり綱引きをしたりと、いくつかのメニューが用意されていたが、目から鱗レベルで、さすが!
そのなかでも、よく考えられているなぁと感心させられたのが、綱引き実験。
二組に分かれた子どもたちがスリッパを履いて綱引きで勝負。その後、負けたチームには摩擦力の高い靴底のスリッパが支給されて二戦目を戦うと見事リベンジに成功するといったコンテンツ。
実際に体感することで、小さな子どもでも摩擦というものを簡単に理解することができる! これは素晴らしい!
このほかにも多くの魅力的なプログラムにたくさんの子どもたちが参加していた。
この記事のほかにもいくつかのプログラムを別途紹介する予定なので、そちらもぜひご覧いただきたい。
小さなリケジョも多数参加、日本のクルマ業異界も安泰!?
取材中に気がつかされたのが、女の子の参加者の多さだ。前回通常開催された2019年でも女の子の参加者が37%もあったそう。
日頃取材でお話を伺うエンジニアのなかにも女性は増えてきているし、各社のブースで参加者の対応を行なう社員スタッフにも女性が多く参画していた。いわゆる“リケジョ”の躍進は自動車業界でも感じられ、これは心強い!
来年は是非参加を!今年もまだ間に合うオンライン展示もあり!
冒頭でお伝えしたとおり、コロナ禍の影響で事前登録者のみでの開催となったキッズエンジニア2022だが、この記事見て興味をもっていただけた方はぜひとも来年は参加していただきたい。
なお公式ホームページでは、「オンライン(録画配信)プログラム」として、工作を交えたプログラムなどいくつかのコンテンツを8月31日まで配信している。
現場に行かれなかったボーイズ&ガールズも、これを自由研究の題材としてみるのもいいかもしれないぞ!
本イベントでは、自動車関連企業や団体がさまざまな教育プログラムを企画・提供し、子どもたちに自動車を中心としたさまざまな科学技術に触れ、モノづくり体験をする機会を提供しています。本会は、このイベントを体験した子どもたちが科学や技術に興味を持ち、将来の日本を支える技術者になってくれることを願い、本イベントを企画・運営しています。(公益財団法人 自動車技術会)