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リヤのレートが高い方が自然な動きに
まずフロントのスプリングは10kg/mmに設定。リヤは8kg/mmにした。先代の86/BRZでは車名の86にちなんだわけではないが、フロント8kg/mm、リヤ6kg/mmのバネレートが定番と言われていた。そこで今回は10/8kg/mmでテストを開始したわけだが、街乗りでちょっとリヤがふわっとする。相対的にリヤのバネレートが足りていないような感じ。乗り心地もやや落ちつきがなく、常にふわふわしているような感じを受けた。
これは推測なのだが、今回GR86になってかなりボディが進化している。先代のキャラクターはそのままに相当「ボディ剛性」といわれるものが上がっている模様。そういったものはあんまり信じない派だが、そう考えると乗っていてボディがガッチリしているような感じを受ける。
ボディが強くなるほど、路面からの衝撃をボディが逃さず、そのままサスペンションに入力される(ボディ剛性が高いほどバネレートを高くしても乗り心地が悪くなりにくい、と言われるのは、そのため)。
そしてそれに加えて先代よりもリヤのアーム長が変わっているので、レバー比も変更になり、余計にバネレートが低く感じられたのかもしれない。
そこでリヤのレートを10kg/mmにしてみたところ、いっきに動きにメリハリが出て、シャキッとしてきた。乗り心地は悪くなるどころか、むしろ落ち着きが出てしなやかに感じられる。
ならば、もっとレートを上げると良くなるのか? 欲が出てしまった。そこで、エンドレスにスプリングを手配してもらい、リヤを14kg/mmまで一気に上げてみた。
結果はというと……もう挙動はバッチリ! ステアリングを切るとリヤが踏んばるから、意のままに向きが変わる。乗り心地も悪くなるほどではない。
しかし、タイヤの路面に対してやや当たり方がキツイ。バネレートが上がってストローク量が短くなるぶん、タイヤは路面に強く押しつけられることになる。それが路面の悪いコースや、路面の悪い一般道ではちょっとだけキツそうだ。
では、落としドコロは?
ならばと12kg/mmまで落としてみた。
すると、その当たりのキツさはなくなり、しかしバネレートの高さによる挙動のシンプルな動きはある。うん、街乗りからサーキットまで幅広く考えると、このあたりが落としドコロとして良さそうと思えた。
実際にサーキット走行でも確認すると、扱いやすさが高まった。これはあとから知ったことだが、やはり今回のGR86の場合、前後のレバー比などから計算するとフロントが8kg/mmだとすると、リヤは10~12kg/mmくらいが同じくらいのストローク量になるようだ。
7月に開幕したワンメイクレースである、TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup プロフェッショナルシリーズでは、サスペンションがいくつかのメーカーから選択できることになったが、バネレートはフロント8kg/mm リヤ10kg/mmで統一されることになった。
これは “ リヤが高めのバネレート ” がトヨタの導き出したひとつの解、ということで間違いないだろう(もちろんほかにも正解はあるのだろうが)。
なるほど、太古の昔より言い伝えられてきたことも、時代によって変わっていくのね。GR86、いろいろと勉強になるわ~。