オシャレデザインで“即完売”の人気。フレンチMPV「シトロエン・ベルランゴ」【最新ミニバン車種別解説】

2019年の登場時では二度のオンライン予約で即完売となり、翌年にはさらに追加販売された「シトロエン・ベルランゴ」。独創的なデザインだけでなく、積載容量の大きさやバッグドアに単独で開閉できるガラスハッチを備えて、利便性も文句なしだ。
EPORT:岡本幸一郎(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:佐々木萌香

個性派デザインに高い収納力 実用上の工夫も盛りだくさん

競合他社の人気を尻目に、実は本国では先にこうしたクルマを手掛けていたシトロエンも、ついに三代目となるベルランゴの日本導入に踏み切ったのが2019年月のこと。 二度のオンライン予約は即完売となり、翌年8月のカタログモデルも特別仕様車が売れまくって追加販売されるなど、これまでずっと予想を上回る売れ行きを見せてきた。創立100周年を超えたシトロエンの歴史は、「人々の〝移動の自由〞 と〝自由な移動〞を支え、それをコンフォート(快適)なものとすること」をずっと追求してきたという。 ベルランゴにも快適性をさらに高めようという新しい概念である「シトロエン・アドバンスド・コンフォート」のコンセプトが足まわりやシートなど随所に盛り込まれている。

エクステリア

「XTR PACK」は2021年2月にカタログモデルになった。 エアバンプなどのオレンジ加飾をはじめ、 前後アンダーガードのデコレーション、 専用バッジが備わる。
ルノー・カングーよりも125mm長く、20mmワイドで40mm高く、最小回転半径は0.2m大きい。スライドドアは、ドアハンドルを一度手前に引いてから操作するのではなく、そのまま横にスライドさせる感じで、やや重くてコツもいる。リヤゲート地上高も高めで、ストラップが備わるものの、閉める際は力が必要だ。スライドドアやゲートに電動機構は備わらない。

特徴的なエアバンプをはじめ、遊び心を感じさせる新世代シトロエンのデザイン哲学を取り入れたユニークな容姿は見てのとおり。インテリアも個性的なつくりで、デザインの面白さに加えて、実に全28ヵ所に合計186lにもおよぶストレージスペースが設けられている。

乗降性

中でもパノラミックルーフと収納スペースを融合させた「MODUT OP」の斬新な発想は一見に値する。 さらに、ラゲッジスペース上の大容量のシーリングボックスも後席とリヤゲートの両側からアクセス可能なつくりで便利に使える。跳ね上げ式 バックドアに単独で開閉できる便利なガラスハッチを備えているのも重宝しそうだ。

インストルメントパネル

カタログモデル化された「XTR PACK」は、 オレンジの加飾が施されたグリーンのダッシュボードを備える。二眼メーター中央の画面に、燃費計やACCの作動状況などを表示する。

電動スライドドアが選べないのはお国柄ということで。2列目シートはリクライニングできないのが難点だが、それぞれ個別にアレンジが可能で横幅が均等な3名分の独立したシートが配されている。前倒ししたときの奥行きは2m近くあり、さらに助手席まで倒すと2.7mの長尺物も積める。ただし、完全にフルフラットにはならないので車中泊するにはちょっと工夫が必要だ。

居住性

座面のクッション性が高く、底突き感がほとんどないため、長距離でも疲れにくいのが魅力。「XTR PACK」 は、シートにもオレンジの加飾が配されていて、明るい雰囲気が漂う。
頭上は広大。足元は驚くほど広くはないが、前席座面下に足先が余裕で入る。前後席に大人が座っても窮屈感はない。シート幅は3座席平等で、 幅方向は少しタイトに感じる。

日本向けは1.5l直4ディーゼ ルのみで、8速ATが組み合わされる。ディーゼルとしては音や振動は それほど大きくない半面、トルク感が控えめな感もなくはない。プラットフォームは最新版ではないものの、乗り心地はシトロエンらしい。ソフトタッチなテイストながら、 重心高のそれなりに高いクルマゆえロール等の挙動を抑えるべく引き締められた感覚もあり、そのさじ加減が良い落としどころをついている。

うれしい装備

月間登録台数    NO DATA
現行型発表     19年10月
WLTCモード燃費   18.0km/l 

ラゲッジルーム

21年11月に発売されたサーフブランド「リップカール」とのコラボによる特別仕様車は、砂浜と太陽の光をイメージしたという新色のマットイ エローのボディサイドに波をイメージしたブランドロゴが描かれているほか、インテリアも随所にイエローのアクセントが配されているのが特徴。走りに関する部分でも、シトロエンがラリーで得たノウハウを活かしたという、悪路走破性を高めるトラクションコントロールの進化版「グリップコントロール」を日本仕様のベルランゴとしては初めて採用したことも特筆できる。ベルランゴのこの独創的な世界観に魅せられる人が少なくないのは、 これまでの売れ行きでも明らか。実用性と個性の両方を求める人にもも ってこいだ。

※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.139「最新ミニバンのすべて」の再録です。掲載データは作成時点での参考情報です。
 

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