扱いやすいサイズと適度な室内空間。ノーマル車高だから汎用性も高い
日本において、「クルマは大きいのが正義」ではない。そもそも限られた空間に機能を詰め込むのが得意な日本人は、大きなモノに憧れながらも、一方でミニマルなモノを好む傾向にある。日本でバンコンが人気なのも、そうした気質だからなのかもしれない。
昨今は軽ワゴンがよくデキだが、以前より「このバランスって絶妙だよな」と思ってきたサイズのクルマがある。それはトヨタ・タウンエース/ライトエース(もしくはマツダ・ボンゴ)だ。日本やアジア各国をターゲットにしたモデルだが、大きさよし、広さよしの優等生。トヨタ・ハイエースほど大きくなく、軽バンほど小さくない。しかも愛嬌があって、見た目もキュートだ。
同車をベースにしたバンコンは昔から出されており、昨今の日産NV200バネット人気に押されつつも、依然高い人気を誇っている。フロットモビール「シュピーレン」や、タコス「HANAシリーズ」は市場で高い評価を得ているモデルとなる。
キャンピングカーなので、どういった室内レイアウトを取るかがそのまま特徴になるわけだが、人によってはどんな居住空間のモデルを選んだらいいか分からないという人もいるはず。そんな時はオーソドックスなものを選ぶに限る。
それがAtoZの「アンナL」だ。バタフライタイプのシートを後部に2座インストールし、さらに薄型のギャレー&家具を設置。典型的な“車中泊仕様車”である。奇をてらっていないところが、実は使いやすい。
車内色は選ぶことが可能で、ナチュラルウッド色とホワイトウッド色のいずれか。プロのコーディネイターが手がけているということで、女性ユーザーを意識した色使いがなされている。
AtoZは小型中型のキャブコンを得意とするビルダーだが、実はアンナシリーズなどバンコンモデルでの造詣も深い。例えば、同じボンゴをベースにしたアンナタイプMなども、空間効率と快適性が非常に高いキャンパーに仕上がっている。
バンコンはシンプルなキャンパーだが、それだけにビルダーに高いセンスが要求される。限られた空間の中に、いくつかの機能をインストールして、さらにそれを美しく見せなければならないからだ。
アンナモデルLの装備のコアとなっているのは、「A-SMART」と名付けられたバタフライ式のシート2脚だ。セカンド、サードシートに装備されており、前向き(ドライブ時)、対面(ダイネット)、フルフラットの3タイプに可変する。
家具は後部左右に付いており、左側にギャレーと18L冷蔵庫を内蔵。下部には給排水各12Lずつのタンクが入っている。右側は集中電源やサブバッテリー(105Ah)など、主に電装系がインストールされており、通常は小テーブルや物置として活用する。この他にダイネット用テーブルが標準化されており、装備内容としてはシンプルだ。
ちなみにモデルLというネーミングは、天高がさらに高いアンナタイプMに対して天井が低い(Low)ことに由来する。たしかに車内での移動や圧迫感はまるで違うが、ガレージなどへの対応を考えた場合に、ノーマル車高のモデルLの汎用性は非常に高くなる。
価格は371万8000円から。実際に使う場合は、やはりFFヒーターや電装の強化が欲しくなってくるので、400万円強スタートといったところだろう。どれを買えばいいのか分からない…というユーザーは、まずこのベーシックなバンコンをチェックしてみるといいだろう。