目次
細谷四方洋グランプリ15号車の真相
すでに公開されていたため新鮮味に欠けるかもしれないが、ロッキーオートが製作した細谷四方洋さんドライブによるトヨタ2000GTグランプリ15号車仕様が東京オートサロン2023に展示された。1966年の第3回日本グランプリに出走して2台のプリンスR380に続く3位を獲得した、細谷四方洋選手が乗ったマシンを現代の技術で複製したもの。当時のワークスマシンよりタイヤが太いものの、特徴を捉えた非常に出来の良いレプリカマシンといえる。
撮影するためにブースの奥にいたロッキーオートの代表取締役である渡辺喜也さんに声をかけると、「このクルマ、実は3000GTの後継モデルを作るための試金石ものなんだよ」と、いきなりとんでもないセリフが飛び出してきた。トヨタ2000GTをオマージュして製作されたロッキー3000GTが発売されて、すでに7年近い歳月が経った。当初から好調な売れ行きを示し、現在すでに予定していた台数は予約で埋まってしまっているという状況。それでも問い合わせが絶えないことから、渡辺社長は新たなプランを立てた。それがこのグランプリ15号車のベースになっているというのだ。
謎の2リッター直列6気筒エンジン
ベース車を変更して新たに設計することになり、ボディ寸法などが合わなくなるため新たな金型が必要になる。以前の3000GTは本物を正確に採寸して型を起こしていることから、今回は応用により設計できたようだ。現時点でベースまで教えていただけなかったが、エンジンの写真をこっそり撮影させていただいた。
カバーで覆われ本体が見えないから「なんだ、こりゃ」となるわけだが、2リッター直列6気筒エンジンなのだという。以前は3リッターの2JZを使っていたため3ナンバー車になっていたが、オリジナルのトヨタ2000GTに近づけるなら、やはり2リッターで5ナンバーにしたい。そんな意味も込めて選ばれたエンジンなのだ。いずれ実態が明らかになることだろうから、今から楽しみにしていたい。
従来の3000GTとグランプリ15号車が並ぶと、完全新設計されたことが俄かに信じがたいほどディテールは似ている。製作期間が長くなればなるほど習熟度が上がり、新たな設計だからと言って破綻するようなことはないのだろう。会場には製図のファイルまで展示され、自由に見ることができた。お話によると従来モデルとは全くの別物だそうで、酷似している2台のどこが違うのか改めて比較してみたくなった。
グランプリ15号車のディテール
1966年の第3回日本グランプリに出走したトヨタ2000GTは市販される前のプロトタイプであり、市販型とはボディ形状などがずいぶん異なる。フロントグリルは細長い楕円形で市販型より上下の幅が狭くなる。またフロントフェンダーにはスリットが入りボンネットには多数のダクトが設けられている。
リヤフェンダーはワイドタイヤを収めるため、市販型と比べてフェンダーアーチが大きくされていたほか、左右にエアダクトが追加されていたことも特徴。このグランプリ15号車は見事に実車を模してあり、さながら1/1のプラモデル感覚とでも言おうか。当時の写真はモノクロが多いため直接比較はできないが、見ているだけでも楽しめた。
室内もレーシングカーの作法通りにシンプルなスタイルとなっている。渡辺社長によればいずれ次期型モデルには本物のウォールナットパネルを使ったダッシュボードを採用する予定だそうで、出来上がるのが今から楽しみになった。このグランプリ15号車の室内を見るとベースがAT車であることがわかる。
またフルバケットシートのすぐ後ろにバルクヘッドがあることもヒントになるだろうか。そもそもはハコスカやケンメリ、S30フェアレディZにRBエンジンをスワップしたコンプリート車両の販売で有名になったロッキーオート。R32ベースのケンメリに続きオリジナルでロッキー3000GTを生み出し世間をアッと言わせた。次なる一手がどのようなものになるのか、今後も同店から目が離せないようだ。