到達したアナザーポルシェの実像「PORSCHE 718 CAYMAN」【最新スポーツカー 車種別解説】

718というコードネームが与えられ、ベースは4気筒ターボとなり、911との差別化が明確になった「ポルシェ 718ケイマン」。その後、6気筒の上位グレードが追加されるなどラインナップが強化されている。718シリーズは2025年までにEV化すると公表されているため、水平対向エンジンのミッドシップスポーツが味わえるのも、あと数年。今から手に入れる検討をしても決して早くはないだろう。
REPORT:岡島裕二(本文)/工藤貴之(写真解説) PHOTO:平野 陽

718の名が与えられ、新たな世界を開拓した

今から約15年前、初代ケイマンを初めて試乗した際の感想は「ケイマンがあれば、911はいらない!」と思えるものだった。それだけミッドシップレイアウトのケイマンはバランスが良かったのだ。乗る前はボクスターのクーペモデル程度に考えていたのだが、実際に乗ってみるとボクスターよりも格段にボディ剛性が高く、コーナリング時の姿勢も安定している。ハードトップになっているので車内の快適性も高まっているし、ハッチバックだから荷物も積み込みやすい。その想いは今でも変わることなく、新しいモデルが出るたびに強くなっていった。

エクステリア

その名前のルーツのように、シルエットはどことなくワニのようだ。もともと「ボクスターの固定ルーフ版」として送り出されたケイマンだが、同時に「911よりも軽快に走るスポーツカー」というポジションも担う。
ポルシェの伝統である水平対向エンジンをキャビンの後ろに搭載する。ドライサンプの採用などで、驚くほど低い位置にマウントしているのも特徴的だ。ケイマンの標準モデルは2.0lの4気筒ターボを積むのに対し、「GTS 4.0」は6気筒自然吸気を積むのがトピック。
撮影車両が履くのは「GTS 4.0」に標準採用の「718 Sportホイール」で20インチ。タイヤサイズは前後で異なるが、リヤは265mm幅で大排気量エンジンが生むパワーを受け止める。

ただ、少し印象が変わったのが、かつて4気筒エンジンを搭載してレースで活躍したマシンと同じ、718というコードネームが与えられたときだ。それまでは水平対向6気筒を搭載していたのが、全車4気筒ターボになり、911との差別化が明確になった。

インテリア

T字型レイアウトのダッシュボードに、 昨今のポルシェらしいスロープ状で台座の位置が高いシフトレバーを組み合わせる。ロータリー式のスターターも今では独特だ。Aピラーが後方寄りで斜め前方が見やすいのもポルシェの美点。
パッと見たところそれほどホールド性が高いように感じられないが、座ってみると実はしっかり身体を支えてくれる形状がポルシェらしいところ。「GTS 4.0」は肩をはじめサイドサポートを強化した「スポーツシートプラス」を標準装備し、オプションでフルバケットシートもチョイス可能だ。
911の5連メーターに対し、ボクスター&ケイマンは3連とするのがポルシェの伝統。

4気筒ターボになりはしたが、スペックや加速性能は向上していたためケイマンらしいスポーティなフットワークを楽しむことができたが、やはり911に比べるとエンジンサウンドや吹け上がりに少し雑味が感じられた。だが、そういった声が世界各地で上がり始めると、ポルシェはすぐに考えを改め、ケイマンに4.0l自然吸気の6気筒を搭載したGTSやGT4といった上位グレードを設定。さらに昨年は500psを発揮する、GT4RSまで発売し、ラインナップを拡充した。

最後の内燃エンジン仕様 手放し難いこの快感

かくしてケイマンは現在、4気筒ターボと6気筒自然吸気の二刀流になったわけだが、結局のところこのエンジンの違いは甲乙を付け難い。6気筒自然吸気はわざわざ復活させたぐらいなので、その素性の良さは素晴らしい。排気量が4.0lと大きいため、発進時や低速時でも扱いやすく、市街地走行も楽にこなせるが、ひとたびアクセルを踏み込めば8000rpm付近まで爽快な排気音を響かせながら、淀みなく吹け上がってくれる。エンジンも4気筒よりは重いと思われるが、元々6気筒を積んでいたのだからハンドリングのバランスは良い。これなら素の911よりも絶対的に安定感が高く、安心して速く走ることができる。

うれしい装備

インパネの助手席前には収納式のドリンクホルダーが組み込まれ、必要に応じて引き出して使える。
Country       Germany
Debut        2016年9月(GT4 RS追加:21年11月)
車両本体価格     768万円~1878万円

対する4気筒ターボも決して悪くはない。近年の直噴ターボエンジンらしく、低速域から太いトルクを発揮してくれ、中間加速のレスポンスの良さも申し分ない。ターボでありながらも高回転域の伸びも良く、頭打ち感が少ないのも美点だ。排気音が水平対向を意識させる、荒々しい音色というのが好みの分かれる点ではあるが、私は嫌いではない。

6気筒の方が価格の高いぶんの価値があることは認めるが、2.0l4気筒ターボでも十分に走りが楽しめる。ポルシェが718シリーズは2025年までにEV化すると公表しているため、水平対向エンジンのミッドシップスポーツが味わえるのも、あと数年。ケイマンが気になっている人は早めにオーダーしておきたい。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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