「アクセルを踏めば踏むほどに、狙ったラインにぴたりと重なっていく!【ホンダ ZR-V雪上試乗記】

ホンダのZR-Vは、走りジマンのSUVだ。中でも4WDは肝入りの自信作である。その出来栄えを確認するために、山形の雪上試乗に赴いた。e:HEV ×4WD、ガソリン×4WD、e:HEV ×FFにそれぞれ試乗して、ZR-Vのスノードライブの実力を探った!
REPORT:佐野弘宗(SANO Hiromune) PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)
雪深いステージでも、運転を楽しめることを実感。

ホンダはなぜ4WDのイメージが希薄なのか

ホンダも他メーカー同様に国内販売車種の大半に4WDを用意する。しかし、一般的に「ホンダの4WDがいい」というイメージはあまりないのが正直なところだ。

ホンダは1993年に「デュアルポンプ」という独自の4WDシステムを導入した。多くの他社4WDと同様に、状況に応じて自動的にトルク配分する仕組みだったが、当時主流であったビスカスカップリング式をはじめとする他社システムにレスポンスで譲るなど、走破性にまつわる市場の評判は良くなかった。

ブリッジ状のセンターコンソールがインテリアデザインのハイライト。

しかし、ホンダも2011年の4代目CR-Vで電子制御多板クラッチを使った新世代の「リアルタイムAWD」を投入。機構的には他社にまったく引けを取らないものになった。一方で2004年には左右トルクベクタリング方式の「SH-AWD」も登場したが、それは高級オンロード車専用のシステムであり、長年の間に築かれたホンダ4WDの芳しくない定評はいまだに残っているのが現実だ。

そんななか、ホンダは2021年発売の2代目ヴェゼルでリアルタイムAWDの性能をさらに進化させて、続くZR-Vのそれも同様のコンセプトでさらに改良した。ヴェゼルやZR-Vではハイブリッドの「e:HEV」にも4WDを用意する。

今回の試乗車はすべて上級「Z」グレードで、タイヤサイズは225/50R18。装着タイヤは、ブリヂストンのブリザックVRX2。

他社のハイブリッド4WDは後輪をモーター駆動とする電動式が多いが、ホンダはハイブリッドにもガソリンターボと共通のリアルタイムAWDを組み合わせるのが特徴である。その自慢の最新リアルタイムAWDの実力をアピールするために、ホンダはZR-Vを真冬の山形に持ち込んでメディア向け雪上試乗会を催した。

遅れなく後輪にトルク配分するため常にスタンバイ状態に

e-HEVは、3.0Lエンジン並みのモータートルク(315Nm)を標榜する2モーターハイブリッド。2.0L直噴エンジンと組み合わされる。
ガソリンモデルは、1.5L VTECターボを搭載。全開加速ステップアップシフト制御、ブレーキ操作ステップダウンシフト制御が組み込まれたCVTも相まって、軽快な走りを披露する。

現在、4WDに定評があるメーカーといえば、たとえばスバルがある。スバルの「アクティブトルクスプリットAWD」も、センターの電子制御油圧多板クラッチでトルク配分するという仕組みそのものはホンダとまったく同じだ。ただ、スバルは60:40というトルク配分を基本とするフルタイム4WD制御なのがこだわりで、状況によってさらに後輪配分を増す。

対してZR-Vは舗装路での直進クルージングなどではFFに近いトルク配分で走るそうだが、電子制御多板クラッチは常にわずかに油圧がかかったスタンバイ状態にあり、アクセルオンやステアリング操作とともに即座に後輪にトルク配分する。開発担当者も「スバルを筆頭とした他社システムより、後輪へのトルク配分は積極的です」と胸を張る。

スノーモードは反応がリニアで、積極的にアクセルを踏んでいくことを楽しめる印象。

実際、今回の雪上試乗でも、その安定感と操縦性には感心させられた。雪道ではフルタイム4WDと区別がつかないほど安定しているだけでなく、アクセルを積極的に踏むほどに、ステアリングで狙った方向に実際の走行ラインがぴたりと重なっていくのだ。

もっとも、今回は降ったばかりの新雪路が大半で、冬の道としては好条件だったことは考慮すべきだろう。こういう路面だと、最新のスタッドレスタイヤを履いていれば4WDシステムの差はあまり出ない。しかし、今回は体験できなかったが、凍結した歩道などの段差を乗り越えるといった4WD性能の差が最も出やすいリアルなシーンでも、ZR-Vの安定感に自信あり……と開発陣は断言した。

積極的かつリニアな反応のスノーモード

今回はe:HEVの4WD、ガソリンターボの4WD、そしてe:HEVのFFという3種類の組み合わせを試すことができたが、最も感銘を受けたのは、実はZR-Vで新開発されたという「スノーモード」のデキである。

センターコンソールのスイッチでスノーモードを選ぶと、ご想像のとおり、アクセルレスポンスが穏やかなセッティングとなる。しかし、ZR-Vの場合はその反応がかなりリニアで積極的なので「鈍い」という印象はまったくない。

そのサジ加減に加えて、駆動輪の空転を抑制するトラクションコントロールとのバランスも絶妙なのか、神経質なそぶりがまったく感じられないのが良い。今回はFF車でも雪道を何ら気を使うことなく普通に走ってしまったのも、このスノーモードの恩恵が大きいように思えた。

写真のFFモデルでも想像以上に高い走破性を披露。

もうひとつ感心したのはハイブリッドのドライバビリティだ。今回のようなシーンだと、ホンダのe:HEVは純粋な電動モーター駆動だけで走るが、アクセル操作する右足の裏に、まるで路面感覚が伝わってきているかのようなリニアさはお世辞抜きに素晴らしい。ガソリンターボもスノーモードのおかげで走破性は高いが、今回のような雪道ならe:HEVのほうが明確に扱いやすかった。

圧倒的に舗装路イメージが強い(?)ホンダが、雪道での走りにも絶対の自信を持つZR-V。これは、雪国の街角やスキー場のパーキングでの4WD勢力図に、ちょっとした変化をもたらすかもしれない。

ZR-Vは、雪道性能の高さで選んでも満足できる一台だ。
ホンダ ZR-V e:HEV Z(4WD)

全長×全幅×全高 4570mm×1840mm×1620mm
ホイールベース 2655mm
最小回転半径 5.5m
車両重量 1630kg
駆動方式 四輪駆動
サスペンション F:マクファーソン式 R:マルチリンク式
タイヤ 前後:225/55R18 

エンジン種類 水冷直列4気筒横置
エンジン型式 LFC
総排気量 1993cc
内径×行程 81.0mm×96.7mm
最高出力 104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク 182Nm(18.6kgm)/4500rpm
トランスミッション 電気式無段変速機

モーター種類 交流同期電動機
モーター型式 H4
最高出力 135kW(184ps)/5000-6000rpm
最大トルク 315Nm(32.1kgm)/0-2000rpm

燃費消費率(WLTC) 21.5km/l

価格 4,119,500円
ホンダ ZR-V Z(4WD)

全長×全幅×全高 4570mm×1840mm×1620mm
ホイールベース 2655mm
最小回転半径 5.5m
車両重量 1540kg
駆動方式 四輪駆動
サスペンション F:マクファーソン式 R:マルチリンク式
タイヤ 前後:225/55R18 

エンジン種類 水冷直列4気筒横置
エンジン型式 L15C
総排気量 1496cc
内径×行程 73.0mm×89.4mm
最高出力 131kW(178ps)/6000rpm
最大トルク 240Nm(24.5kgm)/1700-4500rpm
トランスミッション CVT

燃費消費率(WLTC) 13.9km/l

価格 3,768,600円

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