完熟の元祖ホットハッチ!「フォルクスワーゲン ゴルフGTI」【最新スポーツカー 車種別解説 Volkswagen Golf GTI】

ハッチバック大定番「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に、高出力エンジン、それにふさわしい足回りなどをインストール、パワフルなモデルに仕上げた「ゴルフGTI」。走りのパフォーマンスだけを追求せず、あらゆるシーンで心地の良いエンジン性能、ハッチバックらしい荷室の広さなど、ハイパフォーマンスと日常使いのバランスの両立が秀逸な一台だ。
REPORT:森口将之(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:平野 陽 

伝統を受け継ぎながらも時代に合わせて進化

フォルクスワーゲン・ゴルフのスポーツモデルとして知られるGTIは、初代から存在している。八代目となる現行型は、スタンダードのゴルフから約半年遅れ、2021年12月に日本に上陸した。ハッチバックのボディをスポーティにカスタムし、大排気量・高出力のエンジンを積み、サスペンションを固めるという手法は、初代から一貫して変わらない。

エクステリア

ハニカム形状のフロントグリルやリヤ スポイラーなど GTI 専用エクステリア を採用。二本出しテールはクローム仕上げとなっている。LEDテールランプ もGTI専用デザインで、ウインカーのシーケンシャル発光はオプション設定。
EA888型 2.0l直噴ターボは通称“evo4”へと進化。従来の直噴&ポート噴射併用から直噴オンリーに変更され、最大噴射圧は350barまで向上。最高出力245ps、最大トルク370Nmを発揮する。右ドライブシャフトの付け根に油圧多板クラッチを備える電子制御油圧式ディフ ァレンシャルロックも採用。
本来は18インチが標準装備だが、オプションのDCCパッケージ(電子制御ダンパー)を装着すると写真の19インチアルミホイールが備わる。タイヤはブリヂストンのポテンザS005との組み合わせ。
幅が約1000mm、 奥行きが約750mmの荷室。フロアの高さを変えられるデッキボ ードも備わる。 後席シートは6対4分割可倒式で、 スキー板などを通すために中央部分を貫通させることもできる。

スタイリングは、フロントグリルの赤いストライプやエアロパーツなど、GTIの伝統的な意匠に加えて、チェッカーフラッグを思わせるフォグランプが目立つ。インテリアは、これも伝統であるタータンチェックを用いたスポーツシート、赤いアクセントの入ったステアリング、タコメーターを中央に据えたメーターなどが特徴になる。

インテリア

それぞれ10インチのデジタルメーターとセンタータッチディスプレイを採用し、物理的なスイッチ類を極力排したインターフェースを実現。操舵角に応じてギヤ比が変わるプログレッシブステアリングも備わる。
複数の表示切り替え機能をもつデジタルメーターは、GTI専用グラフィックも用意。ラップタイマーや過給圧も表示可能だ。
電子制御式シフトセレクターは、 かなり小さなスイッチを採用。
アルミ調のペダルはGTI専用品となる。

エンジンは2.0l直列4気筒ターボであるところは先代と同じだが、DSGと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッションは6速から7速になった。フロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンクのサスペンションは、ベースモデル比で全高が10mm低められている。

電子制御デバイスでは、ブレーキ制御式のトルクベクタリング機構XDSに加えて、油圧多板クラッチを用いたフロントディファレンシャルロックも採用。オプションで用意される電子制御可変ダンパーのDCCは、セッティングがよりきめ細かくなっている。

あらゆるシーンでそつのない高性能を見せる

GTIが生まれてすでに八代目ということもあって、細部の演出には手慣れた感があるが、世代ごとにテイストの違いは感じる。現行型はシートのタータンチェックが落ち着いた仕立てになるなど、大人っぽさがさらに際立っているように感じる。加速についても似たようなことが言える。

ゴルフの最高性能モデルは、現在日本では販売していない「R」なので、GTIはパフォーマンスだけを追求した車種ではない。2.0lターボエンジンも最高出力245ps、最大トルク370Nmで、数値だけを見れば1.8lのルノー・メガーヌRSに劣る。

うれしい装備

オプションのテクノロジーパッケージにヘッドアップディスプレイを設定。 
走行モードはエコ、コンフォート、スポーツ、カスタムを設定。カスタムではDCCの減衰特性を細かく調整することも可能。 
自動操舵による駐車アシストシステムもオプション設定。 
全車速追従機能付きACCは標準装備。同一車線内の走行を維持するTravel Assistも備わる。

なので加速そのものよりも、あらゆるシーンで気持ち良く回り、力感あふれるというフレキシビリティの方が印象的だ。アウトバーンでメルセデス・ベンツやBMWと一戦交えた初代GTIの武勇伝を伝説として、性能競争からは一歩引いて、オールマイティなハッチバックの理想形を追求しているようだ。ただし音は静かというわけではなく、意外に昔っぽい響きを伝えてくる。

加速が過激でない分、こうした部分でスポーツモデルらしさを演出しているように感じた。サスペンションはドイツ製高性能車らしい硬めのセッティングだ。街なかでの移動も不満なくこなすものの、本領を発揮するのはやはり高速道路や山道になる。ハンドリングは模範的で、安心してペースを上げていくことができる。

Country          Germany
Debut           2021年12月
車両本体価格        486万2000円 

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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