4年ぶりの有観客の新城ラリーにモリゾウさん、勝田貴元選手、WRCマシンが集結!

モリゾウこと豊田章男トヨタ自動車社長とTGRワールドラリーチームのラトバラ代表
4年ぶりに有観客で開催された全日本ラリー選手権第2戦の新城ラリー。ラリーのベースとなった新城総合公園には、多くの観客が集まった。その会場のメインステージで、モリゾウこと豊田章男トヨタ自動車社長と、
ヤリ=マティ・ラトバラトヨタ・ガズーレーシング(TGR)ワールドラリーチーム代表、勝田貴元選手、春名雄一郎プロジェクトディレクターのトークショーが開催された。司会は、森田京之介アナウンサー(トヨタ自動車広報部)が務めた。そこで語られたことはなんだったのか?

じつは、勝田貴元選手とモリゾウ選手はラリー同期?

トークショー後のデモランでは、ラトバラ代表のST165セリカGT-FOURが激走。ドライバーはラトバラ代表、コドライバーはモリゾウ選手。

4年ぶりに有観客となった新城ラリーが開催された新城総合公園には、多くの観客が集まった。トークショーの会場もものすごい観衆が詰めかけた。

まず冒頭、モリゾウさん
「モリゾウとして初めてラリーに参加したのが、この新城ラリー。そのきっかけを作ったのがノリさん(勝田範彦選手、貴元選手の父)。そのノリさんが今回WRCのRally2マシン、世界で初めて公式に出場するラリーにドライバーとして出ている。これは、もう言葉で表せない……感動しますね、新城の道は世界でも類がないくらい難しいコースだと思います。ですから、そういうなかで新しいクルマ、新しいチームでやっているノリさん、安全を願いながら……さっき息子の貴元さんから激励をもらっていました。多くの人が注目するなかでどういう走りをしてくれるか、ライバルもいろいろおられますから、みなさん、お楽しみいただきたいな、と思っています」

と挨拶。
次に、MCが「みなさんが知りたがっていることを質問します」ということで、この質問からトークショーが始まった。

——まず、これに触れないわけにはいかないですよね。先日、豊田社長退任というニュースがありました。おそらくあのニュースがあってからこうしてファンの皆さんの前に出ていらっしゃるのは初めてなんじゃないかと想像しています。ラリーの現場、モータースポーツの現場、社長を退任してこれからもモリゾウさん来てくださるんでしょうか?

モリゾウさん:モリゾウの役割は、私自身が運転が好きだっていうこともあるのですが、私が動くことによって、またモリゾウが動くことによって、たとえばカーボンニュートラルの考え方がちょっと変わるとか、ラリーの応援していただく方の喜びが変わるとか、笑顔が増えるとか、そんなことに私自身も喜びを感じます。ですから、そういうことでお役に立てるのであれば、好きなクルマに触れられる時間が増えるとも期待をしておりますので、モリゾウがより多くいろんなモータースポーツの場に参加できるよう、これからも行動していこうと思っているので、応援していただきたいです」

——この発表をラトバラ代表はどこでどのように聞いてこう感じましたか?
ラトバラ代表:私は、春名さんからこのニュースを聞いてとても驚きました。そのあと、これはどういうことを意味するのだろうかと考えました。良いことなのか悪いことなのか。と思ったところ、もしかしたらこれはもっとモータースポーツに時間を割けるということじゃないかと思いました。ですから、これは良いことだと私は思っています」

勝田貴元選手:僕も皆さんと同じようにビックリしました。でもラトバラ代表が言ったようにモリゾウさん、本当に根っからのクルマ大好き。ドライバーでもあります。社長として大変なお仕事をされてきて、ようやく少しモリゾウが本当に好きなことに時間が割けるようになるんじゃないかと思って、僕はそれがモータースポーツだったらいいなと思っています。ネガティブな感覚は全然なくてむしろ、これからモリゾウさんとできるのか、なんて勝手に想像していました」

——モリゾウさん、モータースポーツに割ける時間が増えた実感はありますか?
モリゾウさん:新体制を発表したちょうど次の日に父(豊田章一郎さん)が亡くなりました。そういうこともあったので、正直、逆に社長をやった期間ずっと見守ってもらっていたんだな、と思いました。正直、まだ先を考える余裕がなかった。ですから、久しぶりに今日、出てまいりました。やっぱりこの音とか、こういう皆さんの笑顔だとかが、いま一番私のエネルギーになっています。元気をいただけると思いますし、きっとモータースポーツはモリゾウにとっても私個人にとってもそういう力があるんじゃないかと思っております」

ステージ前には多くの観衆が集まった。

じつは、モリゾウ選手のラリーデビューは、2012年の新城ラリー。そして勝田貴元選手のラリーデビューも2012年の新城ラリーだったそう(当時18歳で免許をとったばかりだったという)、ふたりは「同期デビュー」なのでは?という話で盛り上がった。

当時、サーキットレースをメインに取り組んでいた勝田選手は、「右と左としか書いてないペースノートで初めてのラリーに臨みました」と言えば、モリゾウさんは「私は、コドラ(コドライバー)が必要だということで、勝田選手のおじいさん(勝田照夫さん)にコドラをどなたかご紹介いただけませんか、というところから始まりました。クルマを作るのはGRにやってもらって、あとはお父様たちと一緒にこの新城の山で練習をしました。当時86が出たところだったので、86の初号車で参加しました」
そのとき、貴元選手も一緒に走り、初めてモリゾウさんと話をしたという。

今年のラリージャパンはどうなる?

今年のラリージャパンを主催する豊田市の太田市長が登場。

トークショーの中盤では、今年のラリージャパンを主催する豊田市の太田稔彦市長がステージに上がり、ラリージャパン開催への熱意を語った。また、今年のラリージャーパンは、豊田スタジアム内にスペシャルステージを作って、スタジアム内で迫力ある走りが楽しめるようにする、と宣言した。

勝田貴元選手が、「将来の夢として、現役を続けながらですが、後進の育成のために、子どもたちにラリードライバーになりたいと夢見てもらえるようにしたい、サーキットレースではある程度確立しているステップアップへのルートみたいなものをラリーでも作りたい」と語ると、モリゾウさんは
「やっぱりモータースポーツは五感で感じると思うんです。WRCのRally2マシンもいままでの全日本のトップクラスのマシンとは音がちょっと違うと思うんですよ。ですから、ああいうクルマがあることによってWRCの雰囲気をこの日本でも感じてもらえる。そして日本チームがあり日本人ドライバーもあり、こうやって日本チームを率いてくれている人たちがいることによって世界を感じる。そうすると我々の世代がプロ野球選手を見て、プロサッカー選手を見て憧れたように、たぶん五感でカッコいいなから始まって、モータースポーツをやるきっかけが、まさにここ新城で始まっているような気がいたします。それも多くの方の応援と多くの方に面白なって思っていただくことが一番必要だと思います。WRCチーム、こうやっておりますので、ぜひとも応援いただきたい」と応えた。

また、以前から話題に上っていた、ラトバラ代表の全日本ラリー出場についても、トークショーで確約された。

「ラトバラはちゃんと今年の北海道で、Rally2で出場します」と春名プロジェクトディレクターが明言して、会場は大きな拍手に包まれた。じつは、全日本ラリー第7戦ラリー北海道は、WRCのアクロポリス・ラリーと日程が重なっているという。モリゾウさんは、「じゃあ、そのときは、僕がギリシャへ行くよ(笑)」とジョークを飛ばしていたが、ラトバラ代表は本当に全日本ラリーにGRヤリスRally2で出場するのは確実となった。

勝田貴元選手は超短時間の滞在時間の弾丸帰国で、トークショーとWRCマシンのデモランを行なってくれた。

今期のTGRワールドラリーチームの目標について、ラトバラ代表は

勝田貴元選手は、
「今シーズンは前半を昨年と同じ体制でチームの4台目として走らせていただいて、そのあとはワークスの3台目でチームのポイントを獲る3台目のドライバーとして戦います。ラリージャパンは昨年表彰台に乗っていますし、今年のラリージャパンのときには今以上に力がついていると思うので、ラリージャパンでは表彰台に一番高いところに立っているところを見せられるように僕は全開の走りを見せます。自分にプレッシャーをかけるわけではないのですが、楽しみにしていてください。皆さんに会うときにはそのくらいの実力で戻ってきます」

と言うと、ラトバラ代表は
「まずは、2021-2022と連続で獲得したチャンピオンシップ、3つのタイトルを獲ることです。マニュファクチャラー、ドライバー、コドライバーのタイトルを獲る。そのうえでふたつのもう少し小さい目標があります。それは昨年勝てなかった、ラリー・フィンランドとラリー・ジャパンで勝つことです。このふたつのホーム・イベントで勝つのが目標です」

モリゾウさんは、
「久しぶりにこの新城の地、コロナも一段落し、こんなに多くのクルマ好きの方々にお集まりいただいたこと、本当にモリゾウとしてうれしく思っております。とにかく、モータースポーツっていうのは、クルマを作る人、使う人、そしてそれを見て楽しむ人、みんなが協力して、みんなが楽しみながら盛り上げていくものだと思っています。ですから、そのうちどなたが欠けてもきっと本当の喜びにはできないと思いますので、我々、世界で戦います。日本でも戦います。もっと良いクルマ、作ります。そしてもっと良いドライバーも育てます。いろんなことができるのも皆さまのお支えがあるからだと思います。本当にみんなで今年2023年を盛り上げていきたいと思います。最後にラリーファンのひとりとしては、ラトバラ代表のWRC参戦が209回なんです。ぜひとも、もう1回どこかでWRCを走るところを見たいなぁとラリーファンのひとりとしては思っています」
と最後に、ラトバラ代表のWRCドライバー復帰を迫ると、ラトバラ代表は、「モリゾウさんがそう言ってくださるなら、私はもちろん参加したいです。私はモリゾウさんと同じくくらいクルマにもラリーにも熱い想い、パッションを持っていますから。春名さんはちょっと難しい顔をしていますけど(笑)」と最後まで笑顔の絶えないトークショーとなった。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…