サードシート、レスオプションの仕様も欲しい! プジョー・リフター ロング試乗記 【JAIA 輸入車試乗会】

兄弟車のベルランゴとともに、ライバルのカングーにはないロングホイールベース仕様が登場したプジョー・リフター。車中泊流行りの昨今、3列シート&たっぷり詰める「ロング」の印象はどうだったのか。二代目カングー・オーナーの安藤 眞が試した。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

ラゲッジの床面長は最大2180mm!

ロングは標準+355mmのロングボディだが、それでも全長は4760mmと、日産セレナ(4765mm)よりは5mm短い。

自身が所有するルノー・カングーが9年目を迎えることもあって、プジョー・リフターと兄弟車のシトロエン・ベルランゴは気になる存在。しかも両者にロングホイールベースの3列シート仕様が追加されたとあっては、興味を引かれずにはいられない。

ロングホイールベース仕様のスリーサイズは、全長4760mm×全幅1850mm×全高1900mm。標準モデルに比べて全長が355mm長く、全高が20mm高い。ホイールベースは2975mmと190mm長くなり、最小回転半径は5.6mから5.8mへと拡大している。

運転席のヒップポイント地上高は、実測710mmとチョイ高めで、サイドシルの幅も205mmとワイド。身長181cmの僕なら乗車に支障はないが、降車時にドライビングポジションのまま最初の一歩を出すと、地面が遠いなと感じる。

運転席はやや高めのポジションで、ステアリングもやや寝ている印象だ。

後席ドアはスライド式で、電動開閉機構が付かないのは標準車同様。イージークローザーも付いておらず、国産ミニバンほどのホスピタリティはない。特に後席はサイドシル高が520mmあるため、乗車時にはしっかりと足を上げなければならない。ウチの義母のような身長140cm台の高齢者には、ちょっと辛そうだ。

2列目空間は広く、僕が座っても頭上に200mm、膝前に90mmの余裕がある。シートは3座独立しており、個別に折り畳みが可能。背もたれを前に倒すと、座面も連動して沈み込むダイブダウン方式だが、リクライニングはしない。3列目へのアクセスは、2列目のどれかを折りたたんで行う。真ん中を常時倒しておけば、センターウォークスルーができて便利だ。

2列目は3座独立式。空間的には、足元も頭上も十分に広い印象だ。

3列目はシートのサイズも2列目と同じくらいあり、頭上空間は120mm、膝前空間は100mmと十分に広い。ただしヒール段差が小さく、つま先も前席下には入らないため、僕の体格では膝が持ち上がって坐骨に荷重が集中する。長距離を走るなら、休憩ごとに“席替え”したほうが良さそうだ。

3列目シートは、空間は十分広い。座面位置が低いため、成人男性だと膝裏が浮いてしまう。

3列目の折りたたみ方法は、背もたれを前に倒してから、座面ごと前に転がすタイプ。せっかく2列目がダイブダウンするのに、3列目が衝立になってしまうではないか、と思ったら、3列目席は取り外せるようになっている。外した座席は片手で持てる程度の重さだ。

ラゲッジの床面長は、3列目が付いた状態で410mm、外してしまえば1320mmまで拡大する。2列目席も格納すれば、2180mmとなる。高さは低いところでも1025mmあるので、自転車なら大抵のサイズは積めそうだ。

ロングは3列すべてを使用しても410mmの荷室長が取れる。
3列目を格納した状態。これでもラゲッジは十分に広大だが‥‥。
3列目を取り外してしまえば、前後長は1320mmに。2列目まで畳めば2180mmまで広がる。

狭いワインディング路でも軽やかな身のこなし

では、試乗に出かけよう。パワートレーンは1.5L直列4気筒のターボディーゼルに、アイシン製の8速ATが組み合わされたものだ。エンジンを始動すると、音質はディーゼルそのもの。ただし排気量が1.5Lと小さいこともあって、振動はほとんど感じられない。発進は滑らかだし、その後の加速も力強い。標準車に対する車重の増加は50kgなので、動力性能の違いが感じられるとしたら、6人以上、乗った時ぐらいだろう。

エンジンは1.5Lのターボディーゼル。車重は軽くないが、一人乗りなら十分に力強く加速する。

2〜3速へのシフトアップは2,000rpmくらいまで引っ張ってから行われる。もう少し低回転で上がってくれても、と思ったときには、シフトパドルを操作すれば受け付けてくれる。

ディーゼル車なので、給油口横にはアドブルー(尿素水)の補給口も。

巡航に入ればエンジン回転数は低めに抑えられるようになり、80km/hでは7速1600rpmぐらいで静かに回っている。そこからアクセルを踏み込めば、即座にダウンシフトして力強い加速に移行できる。

ステアリングホイールは、近年のプジョー車に共通する極端に小径なタイプ。リフターのようなクルマに馴染むのか? と思って走り始めたのだが、慣れるにつれて、違和感はほとんどなくなった。とはいえ僕は、ステアリングホイールは真円のほうが好みだ。

最近のプジョーの先鋭的なインパネデザインを受け継ぐ。ステアリング径はかなり小さい。

操舵応答はマイルドで、ホイールベースが伸びた分だけ、標準車より応答性もゆったりした感じがする。それでも、狭いワインディング路も思いのほか軽やかにこなす。リズムがゆったりしているだけで、操舵の正確性や剛性感は高いから、ワルツのリズムで切るようにすれば、ドライビングは十分に楽しめる。ブレーキのコントロール性は踏み側も抜き側も非常に良く、同乗者の頭を揺さぶらない運転は容易だ。

乗り心地はタイヤの硬さと初動の渋さが多少、感じられるものの、基本的にはしなやか。荒れた路面でリヤが左右に揺さぶられ気味になるのは、トーションビームの剛性を積車に合わせているからだろう。自分のカングーとよく似た動きだ。そういう動きをした際に、ボディの緩さを多少、感じるが、これだけドンガラが大きければ相応だろう。

GTグレードは、標準/ロング共通で、215/60R17というタイヤサイズ。

価格は標準車のGTより約31万円高の455万円。3列目が不要なユーザー向けに、サードシートはレスオプションにして15万円ぐらい価格を下げ、有料でレンタルするようなサービスがあれば、幅広いユーザーに喜ばれ得るのではないか。

リヤハッチはガラス部分のみでも開閉できて便利だ。
PEUGEOT RIFTER LONG GT


全長×全幅×全高 4760mm×1850mm×1900mm
ホイールベース 2975mm
車両重量 1700kg
駆動方式 前輪駆動
サスペンション F:マクファーソンストラット R:トーションビーム
タイヤサイズ FR:215/60ZR17 

エンジン 直列4気筒DOHCターボディーゼル
総排気量 1498cc
ボア×ストローク 75.0mm×84.8mm
トランスミッション 8速AT
最高出力 96kW(130ps)/3750rpm
最大トルク 300Nm/1750rpm

価格 4,550,000円

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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…