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走りの質にこだわったRS
RSにはハイブリッドシステムのe:HEV搭載車と、ガソリンエンジン搭載車の設定がある。RSだけでなくBASIC、HOME、LUXE、CROSSTARに共通するが、ガソリンエンジン車は従来の1.3L直列4気筒自然吸気から、1.5L直列4気筒自然吸気に変更されている。これにより、最高出力は15kW(20ps)、最大トルクは24Nm向上し、87kW(118ps)/6600rpmの最高出力と142Nm/4300rpmの最大トルクを発生するようになった。
RSは専用のフロントグリル、フロントバンパー、サイドシルガーニッシュ、リヤバンパー、リヤスポイラー、アルミホイールを採用し、スポーティさを強調。実物に対峙すると、噛みつかんばかりに口を開いたように見える専用バンパーの効果が大きく、LUXEなど他のグレードとの印象の違いは大きい。明らかに精悍で、いかにも「走りそう」に見える。
185/55R16のタイヤサイズはLUXEと同じ(e:HEV RSは専用タイヤを装着するが、ガソリンエンジンのRSはLUXEと同じ銘柄)だが、前述のようにアルミホイールのデザインは専用で、スポーティだ。サスペンションもRS専用とのことだが、ダンパーとコイルスプリングの諸元が他のタイプと異なるということだろう。カタログには、「操舵量に応じた応答性の向上と安定したロール姿勢」、「荒れた路面の複合的な車体の揺れの収まりの良さ」を実現するためにチューニングしたとの説明がある。
e:HEVは全タイプを通じてモーターの最高出力が10kW(14ps)アップした90kW(123ps)となっており、e:HEV RSに関しては、NORMAL/SPORT/ECONの3つに切り換えられるドライブモードスイッチが専用に装備される。また、ステアリングホイールの裏に減速セレクター(パドル)が設けられ、アクセルオフ時の減速力を4段階で調節することが可能だ。
試乗したのはガソリンエンジン車だったので、ドライブモードスイッチも減速セレクターも付いていなかった。それで面白味がなかったかというとそんなことはなく、当たりくじを引き当てたような感動があった。e:HEV RSには乗っていないので断定はできないが、ガソリンエンジン車のRS、ベストFITじゃなかろうかという気がしている。
ドアを開けて運転席に乗り込む際、RS専用の3本スポーク本革巻きステアリングが目に入る。RS以外は2本スポークなので3本というだけでスペシャル感を感じるが、リムに施されたイエローのステッチがいい。このステッチが目に入るおかげで、シートに腰を下ろす瞬間に気分が上がっている。
バイザーレスメーターの右側にあるエンジンスタート/ストップボタンを押してエンジンを始動。片側3車線の幹線道路を周囲の流れに合わせて走っているうち、疑念が湧いてきた。「これ、ガソリンエンジン車だったよね?」と。無意識にステアリングホイール上にあるセレクターホイールを操作してメーターにエネルギーフローを表示させようとした(のはご愛敬)。
表示されるわけがない。メーターをよく見たらエンジン回転計がある。間違いなくガソリンエンジン車だ。e:HEVと誤解したのは、走行音があまりにも静かだったからだ(と自己分析)。まるでEVのようにスムーズに発進し、リニアに、そして静かに加速していく。エンジン回転が一気に上がって後から車速が追い掛けていく、かつてのCVT(無段変速機)にありがちな、心地いい気分を邪魔するようなノイズとフィーリングが顔を出すことはない。
制限速度が40km/hに定められた片側1車線の道路を周囲の流れに合わせて走行するシーンでは、加速の際にエンジン回転が1500rpm程度まで上がると、あとは1200rpm程度にエンジン回転を保ったまま巡航する。どうりで静かなわけだ。ストレスなく、気分良く、静かに走るのは、エンジンの排気量が1.3Lから1.5Lになり、低回転域で充分なトルクを発生するのが大きいだろう。
高速走行も静かで快適
100km/h走行時のエンジン回転数は1700rpm近辺。エンジン回転が低いおかげで、高速巡航時の室内は静かだ。高速道路と一般道のミックスで151.6kmを走行し、燃費は13.0km/Lだった。
路面をなめるようにヒタヒタ走るのも感心したポイントだ。スポーティな味つけの専用サスペンションを採用したからといって、ヒョコヒョコ跳ねるような乗り味にはなっていない。まるでクッション性の高いランニングシューズを履いている感覚だ。衝撃は効果的に吸収するいっぽうで、高いグリップ力を発揮するといった具合。
ステアリングは軽すぎず、重すぎず、ちょうどいい手応えと感触をドライバーに提供する。パワートレーンはアクセルペダルを踏み込む右足の動きに対して反応良く、しかも急に出過ぎず、かといって不足せず、忠実に力を発生させて思いどおりの加速を実現してくれる。それにサスペンションは、路面に吸い付いているかのような、快適な走りを提供してくれる(デキのいいシャシーの効果も大きい)。これらが三位一体となり、気持ちいい走りを実現している。
筆者は信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しておけるオートマチックブレーキホールドの機能を使う派なのだが、フィットは発進時のブレーキ解除の振る舞いがとても良く(引っかかりが一切ない)、走りを邪魔しない。エンジンを停止して再度始動させた場合は機能が自動的にオフになってしまうので、エンジン始動ごとに「BRAKE HOLD」のボタンを押す必要がある。
フィットRS(ガソリンエンジン車)は、クルマの運転ってこんなに気持ち良かったんだと実感させてくれる1台。200万円を切る車両本体価格も魅力である。
ホンダ・フィット RS(ガソリン) 全長×全幅×全高:4080mm×1695mm×1540mm ホイールベース:2530mm 車重:1110kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:L15Z 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm 圧縮比:10.6 最高出力:118ps(87kW)/6600rpm 最大トルク:142Nm/4300rpm 過給機:× 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:40ℓ トランスミッション:CVT WLTCモード燃費:17.9km/ℓ 市街地モード12.8km/ℓ 郊外モード19.0km/ℓ 高速道路モード20.6km/ℓ 車両価格:195万9610円 メーカーオプションHonda Connectディスプレイ+ETC2.0車載器19万8000円