先進&安全装備も一気に充実した小さな万能ミニバン「トヨタ・シエンタ」【最新ミニバン 車種別解説】

22年8月に登場するや否や、10月には新車販売台数2位に躍り出た「トヨタ・シエンタ」。サイズ感、取り回しのしやすさ、柔軟なシートアレンジなど多くの美点に加え、パワーユニット、駆動系、乗車定員の組み合わせで多くのユーザーにフィットした選択肢が用意されている。
REPORT:=岡本幸一郎(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:佐々木萌香

街なかで扱いやすい小型ボディ アレンジ性に優れた車内も◎

ミニバンの中でも最小サイズだからこそ実現できた取り回しの良さやアレンジ性に優れ自在に使える車内の利便性などがウケて、中断をはさむ過去二世代も人気を博してきた。ユーザーからもこのサイズが良いという人は少なくなく、その声に応えて新型も全長と全幅に変更はなく、全高だけ20㎜高くなった。

エクステリア

新型のスタイリングコンセプトは「シカクマル」。キャビンを四角くして居住性を拡大しつつ、車体の四隅は丸くして取り回しの良さを求めている。
一般的にフルモデルチェンジを受けると車体は従来よりサイズアップするのが常識だが、新型シエンタの全長と全幅は従来モデルとまったく変わらない。運転しやすさを重視したからだ。一方で室内空間拡大のために全高は20㎜高くし、またサイドウインドウなど側面も先代よりも垂直に近づけて室内のゆとりを増している。スライドドア天地高は先代+60㎜。

 スタイリングは丸目の初代にトレッキングシューズを模した二代目と、方向性こそまったく異なるがどちらも非常にユニークだったところ、三代目は四角くて丸い、比較的オーソドックスなデザインとなった。各部の黒い部分は見た目のアクセントとなっているだけでなく、ぶつけやすい部分をこうすることで傷を目立たなくするとともに、何かあっても交換しやすいようにするためのアイデアでもあるそうだ。

乗降性

 インテリアの質感もこのクラスとしては申し分なく、収納スペースがくまなく配されている。ソファのような生地のシートも雰囲気が良い。初代はセンターに、二代目はハンドルの上にあったメーターは、三代目では一般的なレイアウトになった。

ダッシュが低くなりフード先端が持ち上げられて見切りが良くなり、車両感覚もつかみやすくなっている。全高が高くなって室内高も増すとともに、車体形状がスクエアになったことでヘッドクリアランスや頭の横方向の余裕が増していることを、特に2列目に乗り込むと実感する。

インストルメントパネル

先代はメーターを高い位置に配置するなど個性的だったが、新型はベーシックなレイアウトに。電子式シフトレバーのハイブリッドに対し、ガソリン車は一般的なタイプだ。

前半はTNGA化し、後半は従来のものを改良したプラットフォームにより、もともとシートアレンジ性に優れ、非常に合理的に設計された2〜3列目のフロアは継承している。3列目シートは薄く簡素に見えるが実際に座ってみると想像よりもずっと座り心地が良く、着座姿勢やクリアランスにも無理がない。いざとなれば7人も乗れながら、3列目が不要時には2列目の床下に潜り込ませて、かなり大きな荷物も問題なく積める広い荷室空間をつくり出すことのできるフレキシブルさと巧みなパッケージングにあらためて感心する思いである。

居住性

走りに重心の高そうな感覚があまりなく、操舵フィールもスッキリとしていて挙動を乱しにくいおかげで、同乗者も不快に感じにくい。車内の雰囲気もそうであるように、コンパクトなミニバンというよりもコンパクトカーの延長上の感覚で乗れる。 

ハイブリッドはバッテリーがアクアで採用されたバイポーラ型ではないが、近年登場した一連の車種と同じく瞬発力がある。エンジンが3気筒でもおおむね静かなのは、各部の遮音やルーフまわりに減衰特性を備えた構造用接着剤を配して効果的に雑音を吸収させるなど力を入れて対策した賜物。走行中も前後席間でストレスなく明瞭に会話できる。

うれしい装備

「Z」系はスライドドアにサンシェードを内蔵。強い日差しを和らげるほか、外から車内が見えにくくする効果もある。シェードで覆われない部分はガラスにセラミックの点状にプリントして日差しを緩和。
月間登録台数        2661台(22年5月~22年10月平均値)
現行型発表         22年8月
WLTCモード燃費       28.8 ㎞/ℓ※「HYBRID X」の5人乗り/FF車

ラゲッジルーム

一方のガソリン車は、ハイブリッドがエンジンの存在を意識させないようにされているのとは反対に、むしろそれを味わえるようにしたかのような印象を受ける。走り味も軽快で、車両重量差以上の違いを感じる。インフォテイメント系や先進運転支援系などの装備も、トヨタの最新モデルらしく、このクラスでこれ以上はないほど充実している。限られたサイズにいろいろな要素を詰め込んだ、小さな万能選手だ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.146「2023 ミニバンのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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