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価格や運転のしやすさで注目されているライトキャブコン市場
日本には様々タイプ、カテゴリーのキャンピングカーがある。日常生活との親和性が高いバンコンや軽キャンパー、機動力を活かせるトラキャン、そしてキャンパーの花形とも言えるキャブコン。
動く家とも形容されるキャブコンは、その快適空間が美点な一方で、大きさや独特のドライブフィールといった面も併せ持っている。多くのキャブコンは、トヨタ・カムロードというキャンピングカー専用シャシーがベースとなっており、これは基本的に2tトラック・ダイナと同じヒューマンインターフェイスだからだ。
キャブオーバーという形式は、慣れればそれほどの違和感はないが、やはり乗用車のようにとはいかない。ハンドル操作ひとつにとっても、自分が前輪の上にいりということを意識しながら運転しないとならない。
話は変わるが、今キャブコンの世界ではライトキャブコンというカテゴリーが注目されている。このカテゴリーはかつて、マツダ・ボンゴを架装したモデルが主流だったが、同車が廃番になってからは、トヨタ・タウンエース(同OEMのマツダ・ボンゴ)、日産・NV200バネットをベースになっていることが多い。
コンパクトサイズの商用バンやトラックであれば、ノーズ部分があるため、ミニバンと操車感覚は変わらない。さらに、小回りという点でも申し分がない。排気量はタウンエースが1.5L、NV200が1.6Lと、動力性能ではNV200に軍配が上がるが、自動車税(東京都の場合)はタウンエースが年間5400円も安くなる。
と、ライトキャブコンのメリットはいろいろあるが、ベース車が小さくなれば、居住空間も小さくなるのではという心配もあるだろう。だが、そうでもない。カムロードベースのキャブコンに比べると、確か室内寸法は小さくなるものの、実際に過ごす居住スペースは極端に小さくなるわけではない。
カムロードベース車との違いは、まず室内長が短くなることで、後部2段ベッドや収納スペースがなくなること。第二は室内幅が若干狭くなることだ。2段ベッドについては、ファミリーでなければ問題ないし、ダイネットを崩すのが面倒でなければ、ダイネットベッドで寝ればいい。収納スペースは、居住空間やバンクスペースを上手く使えばなんとか対応できるだろう。
ライトキャブコンのスペースを効率よく活用した「フィール」
さて、AZ-MAXはコンパクトでスペース効率が高いキャンパーを造るのが上手なビルダーだ。同社の「K-ai」は軽キャブコンの代表的なモデルで、人気車のひとつである。狭いスペースの中に巧みにキャンパー装備をレイアウトしているのだが、その点では新しくなった「フィール」も負けてはいない。
巧みさの1番目が、リアエントリーを採用していること。助手席後部にエントランスを設けたモデルより車内前部空間を効率よく使える。これも、後部に2段ベッドがないからこそなせるワザと言える。そして、最後部にギャレーを備えたことによって、ダイネットに横向きのソファーが装備していることも、巧みさのひとつだ。
ギャレー横には、床に防水材を使ったマルチルームを設置。トイレや収納部屋として活用できるスペースがあるのは、年齢が高めのユーザーや小さな子どもがいる家族には嬉しい。
ダイネットは2列目、3列目にバタフライ式シートを使った対座タイプ。旧モデルでは横向きシートがインストールされていたが、走行中の快適性は前向きが勝っているのは言うまでもないだろう。前述の通り、その横には横向きのソファーが連結される形でレイアウトされており、食事が終わったらゴロンと横になれるのがいい。
バンクルームは実用的な広さだが、大人用の就寝スペースというよりは、子どもやペット用といったところだ。このモデルのコンセプトは2人+αであり、その空間レイアウトはそれを具現化している。
ギャレー下には49Lの冷蔵庫が標準でインストールされており、車中泊の飲食を支えてくれる。かつてはソファー横にあったのだが、設置場所を見直すことで空間効率が向上した。オプションのパーキングクーラーも新型の天井収納式になったことで、室内のデッドスペースがなくしている。
最後になったが、新しいフィールは家具の木目、色調も含めて現代的になった。また、家具の形状を見直したことで、とても使いやすくなったと言える。限られた空間を実にうまく使ったライトキャブコンだ。
大きなキャブコンの駐車場所や運転時の取り回しに不安を感じている人は、ぜひ一度チェックしてみて欲しい。意外とストンとハマるモデルかもしれない。