こんなの見たことない! 災害現場の小さな“ヒーロー”、アッと驚く万能消防車/ モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF / トミカ × リアルカー オールカタログ No.119

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.119 モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF (ブーム可動/希望小売価格550円・税込)

『トミカ』のNo.119は『モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF』です。消防車だから商品番号が119番なのでしょうか。ちょっと覚えやすいですね。さて、消防車とは言うまでもなく、火災や災害が発生した際に、火災の鎮圧や延焼防止のための装備を備えて現場で対応作業や活動にあたる緊急特殊車両です。

モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF13 実車フロントおよびリヤビュー。(PHOTO:モリタ)
モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF13 実車 ブーム展開状態。(PHOTO:モリタ)

ひと口に消防車と言っても様々な種類がありますが、その主力車両は大きく言えば、揚水・放水機能を持つポンプを備え、吸い上げた水をホースで放水して消火・鎮火作業にあたる「ポンプ車」と、高所の人命救助や消火活動に用いられる「はしご車」、そして人命救助活動に使用される資機材を装備あるいは運搬する「工作車」の3種類に分けられます。

普通はこれらの専門車両がチームとして火災・災害現場へ出場しますが、もしこの3車種の機能を一つにまとめた車両があれば、消火・救難活動はより迅速で小回りのきいたものとなるはずです。近年では雑居ビルや中層建物での火災が多発していますが、特に大型のはしご車は狭い場所への進入が困難なことから、消火活動はもとより、高所救助活動も行なえるコンパクトな消防自動車を求める声が大きくなっていました。

また、市町村合併による消防の統合と広域化により、1台の消防車に求められる役割は以前より増しており、多くの種類の消防車を用意する財源的な余裕のない、主に地方の小規模な消防本部でも、そんな万能消防車があればうってつけのものとなります。

MVFは災害現場に必要な機能を1台に凝縮した万能消防車だ。(PHOTO:モリタ)

こうして誕生したのが、ポンプ車からはしご車、コンビナート向けの消防車や空港用の消防車、救助工作車など、幅広い消防車の開発・製造・販売を行なっていることで知られるモリタが作った『MVF(エム・ブイ・エフ/MORITA VARIOUS FIGHTER)』で、1台で消火、救助、資機材収納という様々な役割が果たせる、まさに万能消防車となっています。なお、『MVF』は正しくは「ブーム付き多目的消防ポンプ自動車」と言います。

ブーム使用時にアウトリガを張り出さず、下方へ展開する構造のため、従来のはしご車では進入不可だった狭い場所でも救助活動が可能となっている。(PHOTO:モリタ)

この『MVF』には大きな『21mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF21』と普及サイズ(中型)の『13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF13』の2種類がありますが、『トミカ』の『No.119 モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF』はその商品名の通り、後者の普及サイズの車両をモデル化しています。日本の都市の火災の状況と各地の消防署の要望とを整理し、最もコンパクトで最大の機能を発揮できるよう考案され、このサイズでバスケット付きブーム(梯子)および水槽を同時に搭載したものは国内初となります。

この『13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF13』は、はしご車として上はビル5階相当の13.7mから下はマイナス2.1mに届くバスケット付きのブームを使用でき、先端のバスケットは左右45°ずつ回転し、建物の壁に沿ってより近くまで接近できます。このバスケットには、障害物への追突防止、二重操作による誤操作防止、常に平衡を保つ安全制御が取り入れられています。また、搭載されているブームは軽量アルミ製のため、車体の軽量化を図ったことにより、4輪駆動車にも対応。寒冷地でも安全に活動することができます。

水ポンプと900ℓのポリプロピレン(PP)製水槽を装備、ホースから放水を行なう。また、左手にいるオペレーターのように地上有線リモコンによる簡単操作も可能だ。ストレスフリーな双方向通話装置も備え、地上とバスケット間の通話を行なえる。(PHOTO:モリタ)

消防ポンプ車としては、アルミ製一段ボリュート式水ポンプ『MZⅠ』と900ℓのポリプロピレン(PP)製水槽、およびその水を有効利用できる、モリタ独自の「泡」で消火するCAFS(圧縮空気泡消火装置)を装備し、従来の水での消火と比べ、消火能力を飛躍的に向上させながら、使用する水量が減らされています。

モリタ独自の「泡」で消火するCAFS(圧縮空気泡消火装置)のテスト風景。天然成分由来の原料である界面活性剤が使用されたクラスA泡消火薬剤『マルチA』による泡消火は15トンの放水に相当するという。(PHOTO:モリタ)

CAFSの泡消火機能は15トンの放水に相当し、1分あたり3,200ℓの最大空気流量+600ℓの水量(最大泡吐水量は毎分3800ℓ)の大量放射を行ないます。なお、CAFSに使用されるクラスA泡消火薬剤『マルチA(マルチエース)』は天然成分由来の原料である界面活性剤(医薬部外品原料規格2006適合)が使用され、環境にも配慮されています。また、フレキシブルなブームを活かし、救助だけでなく高所からの放水も可能です。特に『MVF13』では、中層建物、河川などの災害発生箇所にバスケットを接近させて、迅速で安全な救助および消火活動を行なうことを目的としています。これに加え、車体左右に資機材を運搬可能な収納スペースも確保されています。

上が車両左側、下が車両右側の収納スペース。ホースや薬剤など消火に必要な資機材を十分に収納可能で、フルフラットステップにより資機材へのアクセスも向上している。(PHOTO:モリタ)

より大型の『21mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF21』も機能は同じですが、さらに進歩しており、モリタと連結子会社であるフィンランドのBRONT SKYLIFT OY ABとがお互いの技術を活かして開発した21mのブームと最大4,000N対応のバスケットを搭載。より高所の活動を可能にするだけでなく、車いすを必要とされている方の救助活動についても、車いすに乗ったまま救助することができる機能を有しています。

また、『13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF13』はデザインも評価されており、2014年度のグッドデザイン賞を受賞しています。デザイナーは消防隊員の活動を一つずつ確認し、救助、消火活動に必要な機能を徹底して追求。消防隊員は有事の際に住民を助けてくれる“ヒーロー”だと位置づけ、“ヒーロー”が乗る車=消防自動車は、災害現場で「この消防自動車が来たら助けてくれる、守ってくれる」と感じてもらえる存在でありたいとの想いを込めてデザインが行なわれたそうです。ドライカーボンを用いたハイルーフは軽量化と共に居住性を高めており、必要機能を極限までコンパクトに設計し、中型の車両サイズを実現しています。また、消防車ならではの機能を活かしたスタイリッシュなワンモーションデザインは、働く車としての機能性や信頼感を重視し、“ヒーロー”を予感させるデザインで、次世代の消防自動車を目指したものとしています。

広島県東広島市の東広島消防署西分署に配備されているMVF13の訓練の様子。全国的に配備台数が増えているようだ。(PHOTO:東広島市)

最近は『MVF』の配備台数も全国的に徐々に増えてきているようで、その使い勝手は高く評価されているようです。『トミカ』の『No.119 モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF』は、この美しく機能的な万能消防車の特徴がうまく再現されています。また外観だけでなく、実車でも自慢の装備であるブームが可動する仕掛けも用意され、見ても動かしても楽しい1台になっています。

■モリタ 13mブーム付多目的消防ポンプ自動車 MVF13 主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)

シャシー: 日野 FE2AGBA(2WD)ダブルキャブまたは日野 GX2AGBA(4WD)ダブルキャブ

全長×全幅×全高(mm/各部寸法は概算):7500×2330×3100

車両総重量:約13000kg(乗員6名・水ポンプ付)2WD/約11990kg (乗員6名・水ポンプ付)

規格地上高:13.7m

最大作業半径:8.4m

バスケット積載荷重:2700Nまたは3名(バスケット放水時:1,800Nまたは2名/ストレッチャー使用時:900Nまたは1名/OPT)

バスケット出入口:前面中央1箇所 (タラップ式扉)

ジャッキ・アウトリガ装置:H型(アウトリガ無)

塔装置:1節3連 箱型断面溶接構造

第1起伏装置:油圧シリンダ1本/起伏角度:0°~80°

第2起伏装置:油圧シリンダ1本/起伏角度:0°~155°(対第1塔角度)

伸縮装置:油圧シリンダ1本(ストローク:2.25m×2)

旋回装置:油圧モーター(減速機によるターンテーブル駆動方式)

傾斜矯正装置:ジャッキシリンダ矯正方式(前上がり:3°/後上り・横:7°)

バスケット旋回装置:油圧シリンダ1本(左右各45°)

バスケット放水銃:手動式 0.7Mpa(1100ℓ)/min(使用範囲:上45°/下80°/左右各30°)

油圧発生装置:可変容量ピストンポンプ

塔送水配管:旋回部・水路内蔵型旋回接手/伸縮塔部・伸縮式アルミ製配管/その他:アルミ製固定配管

安全装置:スプリングロック装置、ジャッキ操作と塔操作のインターロック/伸縮等防止装置、旋回障害自動停止装置/先端障害自動停止装置、傾斜自動停止装置/安定度の確認装置(自動停止装置)/緊急停止装置(バスケット・基部・ジャッキ操作部)/キャブ保護自動停止、ボディ保護自動停止/バスケット過大傾斜自動停止装置、感電防止装置

水ポンプ装置:MZⅠ(吸水口:75mmボールコック(左右各1)/中継口:65mmボールコック(左右各1)/吐水口:65mmボールコック(左右各2)

CAFS装置:MMC3800

水タンク:容量900ℓ(PP製)

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