トヨタ・アクアGR SPORT | +20万円弱ならお値打ち! ボディと脚の強化はメーカーならではだ

アクアGR SPORT 車両本体価格:259万5000円
2022年11月に、アクアのラインアップに加わったアクア GR SPORT。GR SPORTは、モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」を通じて鍛え上げたスポーツカーシリーズ「GR」の世界観を、より多くのユーザーに提供することを目指したモデルだ。走りのスペシャリスト、瀨在仁志は、アクアのGR SPORTをどう感じたか?
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)

トップグレードから+20万円弱はお値打ち価格

ボディカラーはプラチナホワイトパールマイカ(3.3万円高)

アクアにGR・SPORTグレードが追加された。GRといえばFIA世界耐久選手権(WEC)やFIA世界ラリー選手権(WRC)をはじめ、国内外のモータースポーツで活躍するガズーレーシング(Gazoo Racing)を意味する。事実上のトヨタのワークス活動部門だ。

そのGRは、モータースポーツでのノウハウを生かし、もっと良いクルマ作りを目指して、すでにスープラや86、カローラ、ヤリスなどの専用モデルを投入している。一切の妥協を許さないそのクルマ作りは、ひと昔前の80点主義と言われた当時の面影はなく、走りの満点主義を貫いている。

ただし、普通の人にはなかなか理解は得られない。もっと身近で安価なモデルがほしい。いや、提供することがメーカーの使命と、さらに風呂敷を広げてできたのが、「GR SPORT」グレードになる。身近な存在となるべくしてラインアップされたモデルは、今回のアクアとヤリスクロスの追加で計6車種に用意されている。

全長×全幅×全高:4095mm×1695mm×1485mm ホイールベース:2600mm 最低地上高:140mm
トレッド:F1470mm/R1465mm 最小回転半径:5.3m
車両重量:1200kg 前軸軸重750kg 後軸軸重450kg
エンジン 形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ 型式:M15A-FXE 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:91ps(67kW)/5500pm 最大トルク:120Nm/3800-4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー 燃料タンク:36ℓ フロントモーター:1NM型交流同期モーター 最高出力:80ps(59kW) 最大トルク:141Nm

GRが専用モデルだったのに対し、GR SPORTは手頃に楽しめることがポイントだから、カタログモデルの1グレードとしてラインアップされ、走りに磨きをかけた。

アクアGR SPORTの良い点は、HEV専用モデルとしての使命を忘れていなかったこと。街乗りレベルでの走りでは、標準モデルはちょくちょくエンジンが始動して、3気筒エンジン特有の振動と音が気になった。

対するGR SPORTはエンジンがかかってもなぜか音が気にならず、振動も小さく感じられた。おそらくボディのしっかり感や接地性の高さによって加速中のロスが減り、結果ドライバーのアクセル開度が控えめになってエンジン始動のきっかけを少なくしているようだ。

説明によると現行モデル自体がバイポーラニッケル水素電池の採用で、格段にエンジン始動ラインが高くなっていることもあるが、負荷の少ない街乗りレベルだと、静かで振動の少ないEV的な走りを味わえる領域が広がったことは確か。

また、姿勢が常に安定しているのも運転を楽にしてくれている。前後左右の揺れが少なく、滑らかなパワーフィールと相まって狙ったところへ自然に向きを変えていってくれる。GRはこれを“意のままの走り”と表現しているが、ドライバーが意識をするまでもなく、一体感ある走りができるようになったことは大きい。

標準モデルだとステアリングの切り始めにグラッとくるが、GR SPORTでは旋回初期の動きが抑制され落ち着くのも早い。特に走行モードをSPORTにすると操舵初期の応答にメリハリが感じられ、速い操作にも期待通り応えてくれる。

これらの一体感ある走りに対して、失ったこともある。ボディの強化をはじめ、サスペンションの見直しや、各部の強化など、GRヤリスの知見が最大限生かされているが、路面からのインパクトは受けやすい。大きな入力ではサスペンション全体で受けてくれるから良いものの、負荷の小さな領域では細かな振動を伝えやすい。

ボディ剛性アップのために、フロア下にブレーズを2本追加している。
このブレーズが効いている。
リヤサスペンションはトーションビーム式 GR SPORT専用のダンパーとばねをチューニング。
フロントはマクファーソンストラット式 ダンパー特性やばねの専用チューニングが施されている。
タイヤはブリヂストンPOTENZA。サイズは205/45R17 専用アルミホイール 指定空気圧はF220kPa/R200kPa

もっともアクアと言えば同門のヤリスとともに国産好燃費1、2位を争う、走りとは無縁の存在にものかかわらず、この脚ならワインディングはもちろんサーキットでも耐えてくれそうなほど骨太だ。

乗る前まではアクアにGRが必要か?と聞かれればおそらく否定しただろう。だが、今回乗ってみればネガティブな点はあったものの、良いところを伸ばしていることで、充分にお釣りはきた。メーカーでしかなし得ない基本骨格のアップデートや、ホールド性の良いシートやエアロボディを纏うなど、その手間と費用は充分に価値はある。

その価格差はトップグレードから+20万弱円。お値打ちである。

専用本革巻き3本ステアリングホイールにはGRロゴが付く。
シート表皮はヌバック+合成皮革
専用スポーティシート

一家に一台所有で若いドライバーから家族全員の満足感を満たすなら、充分に価値あり。さらに期待を込めて言うならば、アクアのようなキャラクターにはフランス車のようなサスペンションストロークをたっぷりと取った乗り味を選んでも良かったのではないか。動きを抑え込むばかりが、気持ちの良い走りではなく、もっと他にも答えはあったはず。新しいブランドだけ多くの可能性にチャレンジしてほしいとも思った。

試乗車はトヨタチームメイト+パーキングサポートブレーキ9万7900円 Bi-Beam LEDヘッドライト+LEDターンランプ+LEDクリアランスランプ+LEDフロントフォグ11万円などop63万4700円がついていた。
トヨタ・アクア GR SPORT
全長×全幅×全高:4095mm×1695mm×1485mm
ホイールベース:2600mm
車重:1150kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列3気筒DOHC+シリーズパラレルハイブリッド
型式:M15A-FXE
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
圧縮比:ー
最高出力:91ps(67kW)/5500pm
最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:36ℓ
フロントモーター:1NM型交流同期モーター
最高出力:80ps(59kW)
最大トルク:141Nm
燃費:WLTCモード 29.3km/ℓ
 市街地モード31.0km/ℓ
 郊外モード:30.9km/ℓ
 高速道路:27.7km/ℓ
車両本体価格:259万5000円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…